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2022年映画感想

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2022年4月の記事一覧

映画『スパークス・ブラザーズ』感想 音楽への誠実・真面目さという狂気

 スパークスというアーティストが、より一層わからなくなり、魅力的に感じられます。ドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』感想です。  『ベイビー・ドライバー』『ラストナイト・イン・ソーホー』で知られるエドガー・ライトが監督のスパークスのドキュメンタリー! あのスパークスを! その情報を目にした瞬間に、観に行くことを決めておりました。  スパークスは、2008年のフジロックに出演した際に、初めてその音を体験していました。全く予備知識なく、何かベテランバンドらし

映画『TITANE/チタン』感想 理解不能な不条理の快感

 観た直後の混乱と混沌を愉しむ作品。映画『TITANE/チタン』感想です。  『RAW~少女のめざめ~』で知られるジュリア・デュクルノー監督による作品。批評家から絶賛され、カンヌ映画祭ではパルムドールを受賞、史上2人目となる女性映画監督のパルムドールと話題になっています。  前作の『RAW』は未見のままで、あまり予備知識なく観てみたんですけど、予備知識があってもなくても、ブッ飛ばされる映像体験で完璧にヤラれてしまいました。  とにかく、ジャンルにカテゴライズすることが出

映画『やがて海へと届く』感想 波が美しいのは、そこに誰かが居るから

 震災の大きな喪失と個人の喪失を重ねる作品。映画『やがて海へと届く』感想です。  彩瀬まるの同名小説を原作として、中川龍太郎監督により実写化された映画作品。静謐なアート作品のような雰囲気に、主演が『愛がなんだ』や、その他、話題作に多数出演している実力派の岸井ゆきのさんということでチェックしようと観てまいりました。  真奈とすみれという2人の主人公の、双生児のような関係性がメインの物語なんですけど、真奈役の岸井ゆきのさんはもちろんのこと、すみれ役の浜辺美波さんも、配役

映画『ナイトメア・アリー』感想 歪つで奇形ではない人間など居ない

 クリーチャーは出て来ずとも、ギレルモ・デル・トロ感は満載。映画『ナイトメア・アリー』感想です。  ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの小説を原作として、ギレルモ・デル・トロが監督した作品。デル・トロ監督はカルト的な作風ながら、前作『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー作品賞と監督賞を獲っており、世間的にもビッグネームとなっている監督ですね。  特殊メイクで人外の者や異形の者を表現することに執着していて、『シェイプ・オブ・ウォーター』は、そのカルト的な世界観とロマン

映画『ベルファスト』感想 あらゆる人生の選択をした人々への祝福

 アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』、タイカ・ワイティティ『ジョジョ・ラビット』なんかの系譜に連なる傑作。映画『ベルファスト』感想です。  俳優兼映画監督であるケネス・ブラナーによる脚本監督作品。自身の出身地であるベルファストを描いた、半自伝的な作品だそうです。  ケネス・ブラナーは『TENET』での悪役でしか観たことがなく、俳優のイメージしか持っていませんでしたが、今作ではアカデミー賞にもノミネートされるほどの高評価ということもあり観ておこうと思い立ちました(そ