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2022年映画感想

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2022年3月の記事一覧

アニメ映画『アンネ・フランクと旅する日記』感想 現代のシビアなおとぎ話

 終わり方があっさりしているのも、おとぎ話っぽい作品。アニメ映画『アンネ・フランクと旅する日記』感想です。  知らない人はいないであろう、第二次世界大戦下でのユダヤ人少女が遺した『アンネの日記』。アンネ・フランクが空想の友・キティーに宛てて、その日記を描いていたことから着想を得て、アリ・フォルマンの監督・脚本で制作されたアニメ作品です。  ウクライナ・ロシアの情勢急変で、今また新たな戦争が始まってしまったこともあり、何となくこの作品が気になって観てまいりました。  知らな

映画『愛なのに』感想 ピンク映画手法の純愛コメディ

 心に童貞を飼っている人を描く作品。映画『愛なのに』感想です。  『アルプススタンドのはしの方』で知られる城定秀夫監督による最新作で、脚本を務めたのが、『愛がなんだ』『街の上で』の今泉力哉監督。お互いの脚本作品を監督し合うというプロジェクトの作品だそうで、この後に今泉力哉監督作品、城定秀夫脚本の『猫は逃げた』が公開されています。  一応、ラブコメディというジャンルの物語になるとは思いますが、そこは今泉力哉脚本というだけあって、相変わらず恋愛を良いものとしては捉えていないよ

映画『ブルー・バイユー』感想 この後のハッピーエンドは現実で

 子役で泣かせるという手を使っているのが卑怯と感じないくらいに号泣。映画『ブルー・バイユー』感想です。  アメリカの80年代から90年代の養子縁組不備で、国外追放される人々の問題を訴えた作品で、韓国系アメリカ人俳優のジャスティン・チョンが監督・脚本・主演を務めています。2021年のカンヌ国際映画祭での上映では、8分におよぶスタンディングオベーションで喝采されたそうです。  脚本構造としてはものすごくシンプルで、主人公一家をひたすらに善なる美しい人々として描いて、それを引き

映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』感想 ウェス・アンダーソン嗜好大爆発

 今作は情報量が膨大で処理し切れていないため、作品感想よりも監督作家論になりました。映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イブニング・サン別冊』感想です。  「独自性」という点だけなら、世界一といっても過言ではない作家性を持つ映画監督ウェス・アンダーソンの最新作。ストップ・モーションアニメだった前作『犬ヶ島』から4年、実写映画では、『グランド・ブタペスト・ホテル』以来の6年振りの新作になります。  この監督の特徴として、執拗に整理され線対称を意識した画面作