怪談【あなた憑いてますよ④】完
近い!!
目線を斜め上あたり持っていくと
視界の端っこに何かいる。
白のV襟か着物、クルクルパーマに
肥えたオバチャンがしゃがんでいる!
満面の笑みと関西弁で喋り続けているが
声が大きすぎて会話の内容が全く
入ってこない。
ア「誰…ですか…」
オバ「ほんでなぁ うちなぁ〜」
聞いていない。一人喋り続けるオバの
声は更に大きくなっていく。
オバ「あははは〜(笑笑)」
ウケている。
耳も頭も痛くなり…限界ラバーズ
もう、どっか行ってーーー!(念)
沈 黙
静かになった。
足先で猫を押してみると「ニャア」鳴いた。
オバもいない。
ベッドから起き上がり周りを見るが
誰もいない。
何だあれは!リアルにいたぞ!
怖くなって一階まで駆け降りた。
心当たりがあった。
先日ドラッグストアで応募した
プレゼントキャンペーン企画、
「無料日帰りバスツアー」に当選し
滋賀県へ行った。ツイてるわ〜
有料オプションを付けると周遊コースや
昼食までもが差別化されますよと言う所謂
当選商法旅行だが、私は頑なに完全無料
を貫いた。
昼 食
料亭の入口で有料オプション組は
「新館」の方へ案内され無料貧乏組は
「旧館」へと引率されて行った。
薄暗い通路を進むが嫌な予感しかしない。
しばらくすると明るい空間が広がり
ダイニングテーブルと椅子が隙間なく…
こ、ここは従業員食堂ではないか!
奥の席で食事をとっていた従業員たちが
伏目がちにお茶をすすり出す。
窓から見える背丈程伸びた雑草群を
眺めながら近江牛定食をいただく。
肉が薄い…
薄さで何とかごまかそうとしてるが
これは「近江牛風ハム」だ。
貧しい食事の後、再び来た路を戻る途中
明かりの付いた小部屋に目をやる。
中では黒白の鯨幕と花祭壇の飾り付けを
している最中だった。
旧館は今や葬祭場として使用されていた。
急に胸がムカムカして来た為バスへと急ぐ。
薄ハムで胃がもたれたかな。
あの時か•••
ため息が出た。
「ツイてた!と思った旅行は
憑いただけ•••
14日目で無事に復活」
《教訓》
タダより高いものはない
ケチらず近所の味道苑行っときゃ良かった
完
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