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経験値ゼロからEC開発ディレクターになった話

D2Cマーケターの福知です。

2019年12月末に、自社ECカートシステムを世界No.1シェアのカナダ発「Shopify」へリプレイスしました。1月10日、日本の原宿へ満を持して出店・進出するサスティナブルスニーカーブランドのAllbirdsもShopifyユーザーだ。

今回は、経験値ゼロで2019年1月からEC担当に着任し、わずか1年未満でECプラットフォームのリプレイス構築まで実行した話を、少しだけ。

①経歴と自己紹介

前職では自動車メーカーで事業企画・営業企画やりつつ、全くの素人でありながらWebマーケ・広告メディアプランニングを担当。
そこの経験でWeb領域の魅力にハマり、デジタルマーケターへのキャリアアップを目指し現職へ。持ち合わせてたスキルは、
▶️グロースハック・アトリビューションの考え方
▶️Google Analytics解析
▶️Excel関数と資料グラフ化
ぐらいで、当時はWebマーケ見習いの見習い。

このnoteは、Webマーケを少しかじった程度の人間が、どうやって1年未満で億単位のE-commerceストアの開発ディレクターの責務を全うしたのか、そんな話をします。

②Shopify ECを作った理由

まずそもそも、なぜShopifyへリプレイスしたのか?主な理由は3点。

1)スピード感のあるフロントUI構築

Shopify は「テーマ」と呼ばれる、Webサイトのデザインフォーマットが既に用意されていて、プログラミング言語知識がなくてもE-commerceストアを作ることができます。

今までの要件定義〜デザインワイヤーフレーム作成〜マークアップ、と長かった構築プロセスを省略することができる上に、軽微なコード修正はエンジニアへ業務依頼することなく済むようになり、開発・運用ともにスピード感のあるUI最適化が実現可能です。

2)物流・決済とのインテグレーション

私もEC担当に着任してから初めてわかったのですが、ECカートシステムって通常は物流・決済は別システム立てで探して導入するんですよね。
それってつまり、Webサイトだけじゃなくて物流と決済も別々で開発ディレクションして、統合する必要があるということ。
気が遠くなりますよね。笑

自社ECって、メルカリみたいに商品ページ作ったら自動的に決済と物流がくっつているわけじゃない。
よく考えたら当たり前なんだけど。

Shopifyは、この連携が既にパッケージ化されているため、導入はほとんど管理画面内の「本番化ボタン」で済ませられる。
ここの簡略化は小さく見えるが、開発担当としては大感謝!

3)拡張性の高いShopifyのアプリエコシステム

Shopifyは「アプリ」と呼ばれる豊富な拡張機能があります。Google Chromeの拡張機能的な感じ。
ECストアに機能を拡大したり、商品オプションをカスタマイズしたり、メール配信システムをインテグレートさせたり、ということがほとんどエンジニア無しで実現できるのがShopify。

もちろん自社用のスクラッチ開発とはならないが、マーケターやオペレーターがエンジニアの力を借りることなく、顧客体験を改善するカスタマイズを実装できるのはメリットだ。

アプリはShopify提供のもあるが、ほとんどがサードパーティのアプリ開発会社によって構築・提供されていている。世界中の中小マーチャントがShopifyが選ぶのも、このアプリエコシステムが主な理由だろう。

③開発ディレクターって、ぶっちゃけ何すればいいの?

会議室でShopify導入が決まり、PM/開発ディレクターへ任命され、自席に戻って最初に思ったのが、

開発ディレクションって何から始めればいいの?

もうちょっと言うと、「どこまで開発すればいいの?」、これが最初にぶつかる壁だ。
(「人」「金」というリソースを無限に保有しているという前提の元で)IT技術の発展により、ほとんどと言っていいほどEC領域で技術的に実現不可能な開発はない。(個人的な見解で、ニュアンスです)
ただ、どんな案件でもそうだが、仕事には「納期」が必ず存在する。この納期を延ばせば延ばすほど、開発できる幅はどんどん拡がって出来ることは増える。

●EC・実店舗の在庫を一元化して機会ロスを減らしたい
●amazonみたいに即日配送をしたい
●Webサイトのデザインに動きをつけたり、ARも使ってみたい

拡げて拡げて最後に出てくる言葉が、

「で、いつまでに出来るの?」

そう。
やりたいことが増えれば増えるほど、いつまで経っても公開できないんですよ。「納期」が決まらないんですよ。

だから、どの機能開発を「諦める」決断をするのか、つまり「開発スコープ」を定めるのがEC開発の最初の仕事である。
この「諦める」というジャッジが最も難しい。特に上位レイヤーは、成長のために出来ることは全てやりたいので、「諦める」以外の選択肢を選ぶ傾向が多く、開発要望がどんどん高くなる。
開発要望が高くなると…そう、納期を延ばすしかない。でも公開を早くしないと他者に先を行かれる。
イタチごっこですね。

こういうジレンマに対して、経営と現場の間に立ち合意形成ファシリテーションを遂行するのが、ECディレクターの最初の仕事である。

EC開発には、何かの「諦め」が重要。
犠牲にしたことは、後でリカバリーすること。

この定義ができた後に、
▶️いつ(When)
▶️なにを(What)
を言語化し、スケジュールを組み立て、人員体制を構築して初めてプロジェクトが走り出していく。

④デザイナー・エンジニアと仕事したことないんですが…?

次に現場の話。

実は、私がWebデザイナー・Webエンジニアと協業するプロジェクトはこのShopify案件が初めてだった。
▶️デザイナー・エンジニアへ、上手く意図が伝わらない
▶️クリエイティブを作るデザインチームとの意見がまとまらない
こういう経験したことあるマーケターいますよね?
事実、入社したての頃は私もそうだった。

異なる部署や、過去のキャリアバックグラウンドが全然違う人たちと一緒に仕事をする上で、徹底的に意識していたことは「人の思考方法を理解する」こと。

やったことは2つ。

1)性格診断
2)ビジョンを語る

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1)性格診断

弊社のクリエイティブ・コンテンツ制作は、基本的にインハウスのクリエイティブチームが業務を担っている。
2年前の入社時に衝撃的だったのが、このチームと仕事している時に、(マーケ職種として)論理的に話を組み立てるために「結果→理由→課題を一般化→対策協議」というフォーマットを頻繁に活用したのだが、ミーティングが全然着地しないのだ。対策協議のトピックへ進んでも、理路整然と導いた課題感がひっくり返ることは珍しくなかった。
私も、論点が急に違う方向へ飛びがちなミーティングに戸惑いを隠せなかった。

何がいけなかったのか?

この時、私は職種や人ごとの「思考のクセ」をわかっていなかった。

ビジネスプランニング畑の私は、定量的な数値データに基づいて効率的にクリティカルな課題まで導くことが多かった。様々な結果から仮説を一般化する、いわゆる帰納法的思考の傾向が強い。結論まで一気通貫した流れを重要視する。
一方クリエイティブ畑の職種は、突然の閃きや新しい観点を取り入れてアウトプットするケースが多い。急に新しいアイデアが生まれることもある。こうなったら綺麗に進行されたミーティングは関係ない。多少不確定要素があっても、導かれた結論の斬新さ・面白さを重要視する。

これは、どっちが「正しい」という話ではない。
どちらも大事な発想であり、論理と感性が組み合わさることで仕事の精度が高くなる。

売上を伸ばしたい。
ブランドを強くしたい。
お客様を増やしたい。
最終的なゴールは一緒なのだ。ただそこまでたどり着く導き方、つまり「思考」が違うことを理解しておく必要がある。

EC開発は、着手する領域が広いため社内外で関わる人間が多い。
だから、プロジェクト内のメンバーの「思考のクセ」を知ること、そして自分自身の「思考のクセ」を深く理解するのを徹底しよう。

堅苦しくなく、楽しく「思考のクセ」を分析できるのが、性格診断

一番最初のチーム会で取り組んだのは、この性格診断だ。

※おまけ(福知の診断結果)
https://16test.uranaino.net/udata/dsVRGSFspSiaOhGQVEQL

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2)ビジョンを語る

1)性格診断はあくまで傾向であって、プロジェクトを一緒に遂行する「特定の同僚・パートナー」を具体的に指すわけではない。あくまで一般論であって、まだ解像度が低い。

その人特有の思考・価値観を知る機会がもっと必要になる。
で、そこでwevox values card(税込: ¥3,630)の出番。

wevox values cardは、自分とマッチする5枚の価値観テーマを選ぶカードゲームです。

引用:
> 個人の価値観を引き出すことができるカードです。
> チームメンバーと価値観を共有し合うことにより、メンバー同士の相互理解を深めることができます。

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このように、山札が無くなるまで自分で保有しておきたい価値観テーム5枚を手元に残しておきます。(画像は福知の5枚)
山札がなくなったら、残したカード5枚の理由についてそれぞれプレゼンします。

やっぱりそのカード?!
うわー、言いそうなセリフ!
え?!そんなこと考えてたの?

和気あいあいとした雰囲気で、そんな会話が生まれる。プレゼンをしていく中で、結果的に互いの人生や仕事に対するビジョンの話になります。
価値観とかビジョンとか青臭い話、ほぼ毎日一緒にいる職場の人とする機会なんてないですよね?
wevox values cardは、そんな話が自然とできる。

やってみると、すごい楽しいですよ。いい意味で、めちゃくちゃ笑いが起きます。
チームの距離感が一気に縮まったのは、ここから。

もうこれで大体、●●××さんの「思考のクセ」は掴めるはず。違う職種を取りまとめてEC開発するには、ここは必ず怠らないこと。
開発途中で何かトラブルがあっても、必ず周りが助けてくれますよ。

なんだかんだ言って、仕事は「人間と人間のコミュニケーション」だ。相手をよく知り、自分の特徴を理解すると質の高い仕事ができる。
プロジェクトの打ち上げで、「大変だったけど、楽しかった!」と最後に締めくくれるチームを作ろう。

⑤開発に集中してたから、運用のことまで考えてなかった…、は通用しない

ECをOPENしたたけでは売上は伸びない。
運用まで考慮できていない開発は最低だ。

多くの人が期待しているとは思うが、残念ながらリプレイスを無事に公開できても急激に売上は伸びないし、ブランド価値の劇的な改善はすぐに結果に現れない。
たしかに、ECは売上を伸ばす販売チャネルであり、我々がブランドの全てを表現するプラットフォームである。しかし結局のところ、リプレイスしたその日から競合を出し抜いて市場環境がひっくり返ることは考えにくい。
地道に・戦略的にプラットフォームを運用し使い倒した先に、売上とブランドという結果がついてくる。

ECストアの開発・OPENは、ゴールではない。これを忘れてはならない。

だから開発ばかりに目がいって、
▶️商品/コンテンツページ制作方法が自分しかわからない
▶️出荷業務の流れがわかっていない。マニュアル化できていない。
▶️カスタマーサポート/実店舗の部署が、サイトの仕様を把握していない
▶️公開後の、プロモーションプランを考えていない
のは、最も避けなければならない。

仕組み化しないと、ECを開発しても売上は伸びない。

開発ディレクターとして、目前の開発に追われるのではなく、EC業務に携わる組織全体にとって最適な解を意識すること。業務ワークフローのデザインを常に考え、自分自身が介在しなくても継続的に売れる仕組みができていること。ここは肝に銘じておくべき。

公開しても売上が伸びないECは、最も辛い。
デザイン思考で、仕組み化しよう。

⑥最後に

全社の力を総結集して構築した新しいE-commerceストア、ぜひ遊びに来てみてください。

日本橋・渋谷にも実店舗がOPENしたので、こちらも。新しいシリーズも展開してお待ちしています!


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