5月2日(土) キャンプ

目が覚めて、これはまだ早いのではないか、と思ったら予想以上に早くて5時だった。
休みがそんなに楽しみだったというのもあるが厚手のパジャマに布団二枚では少々暑かったようだ。
せっかくだし枕元の「季節の記憶」を読む。この小説は夜より朝読んだ方が良い。

しばらく読んでから二度寝して起き出したのは7時半過ぎで、いつもの土曜日だった。昨夜のカレーに甘酒を足すのもいつも通り。
カレーを食べるうちに段々これは本当に「暑い」と認めざるを得ない暑さだと気付き始めた。

何ヶ月ぶりか分からない半袖に着替える。ここ最近夏の気配にワクワクし続けて来たが本格的な暑さに触れるとうんざりする。
また熱中症を予防しながら冷房病を耐え抜く時代がやって来るのならずっとステイホーム週間で良かった。

とはいえそれは先の話で、今はただ夏休みのような軽やかなワクワク感に包まれて心地良い。
リビングに行って外を見るとキャンプチェアーとテーブルがセットしてあった。

好きに使って良いという母の言葉を聞くや否や麦茶を入れた水筒と「季節の記憶」と虫除けスプレーを持って外へ飛び出す。
空があり太陽があり風があった。あとは海があれば良かったけれど海は小説の中にあった。

しばらく満たされた気持ちで読んでいたが本当は結構風が寒かった。
もう部屋に戻ろうか、厚手のズボンに着替えようかと頭の一部分では常に考えながらもついつい続きを読んでしまい動けなかった。この読む時間を持続させたかった。

1時間半くらい読んだのだろうか、結構なページを読み進めたところで寒さが限界になり部屋へ戻った。布団に潜りしばらくは続きを読んでいたがやがて寝落ちていた。

起きると体調が悪くなっており、大切な連休のスタートを間違えてしまった・・・と落ち込むかと思われたが意外と「夏休みのようなワクワク感」が持続していたから平気で、懲りずに外で昼食にしようと思い立ち準備を始めた。

パンを焼きながらお湯を沸かす間、ゆで卵を潰してマヨネーズと胡椒を和え、ヨーグルトを器に出しいちごソースをかける。お湯が沸いてコーンスープの素に注ぐとパンも焼き上がった。なんだか凄く焦げたけれど気にせずマーガリンを塗りゆで卵マヨをかける。

それらを外のテーブルに運搬し、C.O.S.A×KID FRESINOのアルバム「Somewere」をかけると昼食が始まった。最高だった。

スマホを見ると友人から「あなたの日記の文章は天声人語のようだ」とLINEが来ていた。センテンスを短くしているからかも、と返したがセンテンスではなくパラグラフだった▶︎昔我が家で朝日新聞を取っていた時期があり、天声人語のみ熱心に読んだ記憶が確かにあった。久々に読んでみようかと検索したがやはり無料では読めなかった▶︎新聞という媒体は今どれ程の割合でオンライン版に支えられているのだろうか。天声人語を日々執筆する人は誰にどんな風に読まれる様子を信じて書いているのか▶︎筆者の日記などは天声人語の足元にも及ばない代物だが、毎日言葉を綴り、見える誰かや見えない誰かに向けて開く営みは同じだ。その営みに宿る祈りのようなものが、友人の「似ている」という実感に繋がったのかもしれない。

午後は「劇場版仮面ライダーアギト PROJECT G4 ディレクターズ・カット版」を鑑賞。最近WOWOWがライダー映画を放送してくれているため録画しておいたものだ。
アギト自体は20年ほど前の作品だが自分が観たのは10年前だったか。その際この劇場版は見逃していた。

平成ライダーの劇場版は本編を忘れた状態でも単体で楽しめる強度があるのか確かめる意味も込めて観たが、ライダー屈指の名作と名高い「G4」ということもあり一本の映画としての凄まじい強度しか感じなかった。

アギトは三人のライダーの群像劇で、記憶喪失のアギトは賀集利樹、警察官のG3は要潤、放浪人のギルスは純烈の元メンバー友井雄亮が演じている。
テレビシリーズの話を覚えていなくとも、それぞれが動いて喋っているのを見ればそうそうこの人はこういう物の言い方をするよな、ここの二人はこういう関係だよなとすぐ思い出せた。永久保存版として映画を作っておく意味は大きかったのだ。

それでこの劇場版は警察側が隠していたG4システム(装着者が死ぬ)を自衛官の女スパイが盗んで完成させてしまう結構最悪な話だった。最後はヒロインを拉致・拘束してG4操作の"素材"として利用するし、あんなにサイコパスな自衛官を描いて大丈夫だったのか。

まあそれも含めて、雰囲気も台詞も場面のシチュエーションも徹頭徹尾全てがカッコいい映画だった。説明過多にせず全部画で見せていくのがカッコいい。クレジットを見たら脚本:井上敏樹×監督:田崎竜太で全て納得した。

若き要潤の、たどたどしい中に好演が交じる「氷川誠」を観られたのも良かった。
多くの命題が織り込まれていたが生と死に関するそれぞれの葛藤が特に響いた。生きるために戦うか、死を背負って戦うか。

余韻に浸りながらまたキャンプチェアーに座り日記を書く。
ビーチ用のデッキチェアやパラソルが欲しくなる。

生きるってことは、美味しいってことじゃないですか?
という津上翔一=アギトの言葉を思い出しながら夕飯。「コナン」は高木刑事が3000万円を拾う回だった。
日の沈んだ外が水色になっていく。キャンプチェアーはもう薄闇に紛れていた。

夕飯を食べ終わってもまだ夏休みのような心地は続いていたが、これは夏休みというより旅行中の気持ちあるいは"無職期間に戻ったような気持ち"と言う方が合っている気がして来た。
これは何なのだろう。気温の変化と無関係ではないだろうけれど、何か薬でも飲んだかのような精神状態だ。

まだまだ夜が続くことに多幸感がありすぎる。今夜中に「季節の記憶」を読み終えてしまう予感がある。寂しいけれど読む時間そのものは楽しみだ。
寝て起きればニチアサだし生きるというのはそれだけで素晴らしい。氷川誠が戦うことで信じようとしたことを私もまた書くことで信じようとしているのかもしれない。

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