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隕石を見た

今日は不思議だったよなんか、大好きなバンドのボーカルとすれ違い、その後隕石をみた。普通じゃないって自覚しているけれど、どちらも当たり前のように、すごく悠然と起こったからドラマティックに書けずにいる。

会社、とっても頭を使ったあと、飛び出してみれば久しぶりの綺麗なグラデーションがかった夕空で、何駅か散歩しようと思って歩き出した矢先、目の前を何度も動画で見てきた、その格好良さにメロメロになっていた人が通って、「え、絶対そうじゃん、あ、でも事務所ここら辺らしいしな」とかなんとか考えているうちに通り過ぎて行ってしまった。でも冷静になんて声をかけるというのか、「大好きなんです、今日もちょうど昼とか聴いてて」みたいな、いやなんかそんなんは良いでしょ、自分の身になってみてよ、わたしがバンドでボーカル歌ってたとして、大好きなファンが「大好きなんです」って声をかけてきてくれたらそりゃ嬉しいけど会話続かないよねえ、いやわたしそもそもバンドでボーカル歌ってないのよ、みたいに考えてたらもう声をかけるには遠くなりすぎていて、気ままに本屋に入って「え、やった、新刊出てる」なんてときめいたりして、つくづくわたしは可愛くない。

Apple musicの4時間くらいあるプレイリストを勤務中からシャッフルで流してディグっていたから、なんとなくイヤホンに気を向けていたら三駅も歩くことになってそれは初めてのことで、ぼうっと知らない道でブルー・アワーを堪能していたら遠くの空でゆっくりと大きすぎる流れ星が流れていて、流れ星のみえている間に3回唱えたら願い事かなうというけれど、あれはあまりにイージーすぎるから隕石だろうなあ、とか思っていたら見えなくなった。Twitterで調べたら確かに隕石だったみたいで、何件か「隕石見た!!」的なツイート。でもわたし達の世代結構みんなそうなのかもしれないけれど、美しいとかレアだとか思う前に、どっかに落ちて大変なことになってしまうんじゃないかって、『君の名は』を思い出しちゃうね。駅のホームに座ってもう一度Twitterみても隕石が街に落ちたみたいな情報はなくて、ほっとした。

駅のホーム、何本か電車を過ごして読みかけの本を読んでいた。ガラス張りのピアノ修理屋さんがホームに隣接していて(珍しい)、聞こえるか聞こえないかくらいの音量でピアノの音が聴こえる。これ、誰の曲だったっけ、って思いながら本を読み進めて、電車に乗って、いつの間にか寝て、起きたら終点の一つ前、車両には誰もいなくなっていた。手練れの悪魔が暗闇に引き摺り込むみたいな争い難い眠気の中で公の場とは思えないほどの伸びをして終点を待つ。

バスを待っている間、改めて好きなボーカルと会社の前ですれ違うなんて、シティだねえ、と思いかえす。ちょうど聴いていた音楽もそんな感じで、悪魔のおかげもあってか頭もすっきり、微かに体を揺らしてバスを待つ。なんだかフィクションとの境目が曖昧になったような変な日で、それでも、いやだからこそ、なのかね、すこぶる良い天気だった。

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