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歳を追うごとに友達が減っていくように

久しぶりに朝が早かった昨日。顔をうずめたくなるような日差しを吸い込んだ毛布の香りを其処彼処に残していて、6時台の朝が持つ朝らしさを心地よくかんじた。

電車の中で「村上ラヂオ 2」を読む。すらすらとどこまでも読んでいける。つくづく思っているのだけれど、歳を追うごとに友達が減っていくように、好きなものがだんだんと固まってくる。好きな作家やアーティスト、景色や行きつけの喫茶店(それはまだないけれど)、住みたい街のイメージがだんだんとできていくように、わたしは少しずつ「ほんとうに好きなもの」以外を生活から省くのが巧くなってきている。瞬間的に読みたいと思った長編小説がリュックから取り出すと途端に光輝をなくすことが最近増えてきて、逆に好きな作家だと飽きもせずに何冊も続けて読むようになった。昔よりも、ずいぶんと。

村上ラヂオの中に出てきたサイモン・アンド・ガーファンクルを聴きながら渋谷の街を歩いていく。「よぉ、くらやみ、懐かしい友よ」と何かを悟ったような明るさ。朝方の渋谷はごみ収集車とカラスと眼光をうしなった若者のむれが、きたる毎日の刹那的な消費に備えている。わたしに潜む生理的な部分はいつもよろしく頑固な拒否反応を示す。この街に吹く風はすこぶる心地よくないけれど、耳元に流れる音楽はわたしを早足にさせて、毎日をしぶしぶと看過するきっかけを与えてくれる。

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