作家ベッシー・ヘッドが発表した3部作と言われている自伝的長編小説の3本目A Question of Power「力の問題」より。
この作品は、もっともベッシー・ヘッド本人に近い設定であり、幼少期の南アフリカでの違法な出生からボツワナに亡命し、やがて精神を病んでいく過程まで詳細に描いた作品である。
ベッシーは、今でいう統合失調症とされ、「幻影」を見続け苦しむことになる。この作品は、そんな彼女の経験の詳細な記録でもあり、文章や展開が非常に難解な部分が多く、解釈が無限にできそうなくらい。話題を呼んだ「問題作」であり、評価が大きく分かれる。
フィクションとはいえ、神や悪魔が現れ彼女の精神を蝕んでいった過程は、彼女にとってはリアリティだ。この作品は、作家ベッシー・ヘッドというひとの真骨頂でもあるのではないかと思われる。この一節だけでも、そのエネルギーを感じて欲しい。
実はこの作品は1990年代に日本語訳が出されているが、このように難解なものを日本語にしたその訳者の力量はすごいと思う。(知らない方ですが)
ただ、この作品は読み返せばその度に表情を変える作品だ。翻訳で示したものは一例に過ぎないのかもしれない。読者がいれば読者の数だけ解釈があるだろう。
それくらい、深い作品だ。
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