20190205_ルークメイヤー

ルーク・メイヤーの知性的デザイン

*このテキストはサブスクリプションサービス「AFFECTUS subscription」加入メンバー限定サービス、メルマガ「LOGICAZINE(ロジカジン)」で2019年2月6日に配信されたタイトルです。

本文は以下から始まります。

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妻のルーシー・メイヤーと共にジル・サンダーのクリエイティブ・ディクレターに就任し、ブランドを新しいステージへシフトさせたルーク・メイヤー。彼はジル・サンダーだけでなく、自らのブランド「OAMC(オーエーエムーシーエー)」をパリコレクションで発表しており、そこでも高評価を受け、ビジネス的にも成功を収めている(卸先はおよそ130アカウント)。

そもそもルーク・メイヤーとはどのような人物なのか。彼のキャリアを知るとファッション界では特異な経歴のデザイナーだということがわかる。

ルークはカナダの西海岸で育つ。そこで、スケートボートやパンクロック、ヒップホップのカルチャーを子供のころから体験していく。しかし、ファッションに強烈な興味があったわけではない。デザインやアートを学ぶことは抽象的すぎて、彼の中に実践的な学問を学びたいという気持ちが芽生えていた。

そんなルークだから、進学先として選んだ大学はファッションの専門教育を受ける大学ではなかった。彼がまず進学したのは、アメリカの名門私立大学ジョージタウン大学だった。この大学はアメリカ元大統領ビル・クリントンの出身大学でもあり、政治や国際関係などの学問では世界屈指の大学である。ルークはジョージタウン大学で金融と国際ビジネスを学ぶ。

その後、ルークは新たなる大学で学ぶため、イギリスへと渡る。その大学とはハーバード大学、ケンブリッジ大学、スタンフォード大学と並び、世界大学ランキングで常にトップレベルの大学として評価される世界有数の名門大学、オックスフォード大学だった。彼はここで経営学を学び、再びアメリカへと戻る。

ルークはまた大学へと進むのだが、今度はファッションの道へ進む。ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)に入学する。FITはニューヨークではパーソンズと並ぶファッションスクールの名門であり、1944年に設立されたアート、デザイン、テクノロジーの分野の学科を擁するニューヨーク州立大学の一校である。代表的な卒業生はカルバン・クラインとマイケル・コースになる。

ちなみにFITは州立であるためパーソンズに比べると学費が安く、費用の観点からいうとニューヨークでファッションを学ぶ場としてはおすすめである。

パーソンズ年間学費:$46,820
FIT年間学費:
$5,483(NY州内居住者) 
$14,863(NY州外居住者) 
*FITは州立のため、NY州内に居住しているか否かで学費が大きく変わる。

このようにルークはファッションデザイナーとしては異色の学歴を持っている。エリートと言って差し支えないキャリアだ。

卒業後の進路も当初はウォールストリートでの仕事を考えていた。しかし、実際に就職活動を始めて面接を受けると、面白みを感じられず就職活動をやめてしまった。その後ルークは、ダウンタウンで様々な人たちスケートボードを楽しんでいた。そこでルークの進路を決める出会いが起きる。

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