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医薬品リテラシーの重要性

患者さんとお話しする中で、あまりにも新薬が高いため治療できる嬉しさとともに高額な医療に対する不安を抱えていらっしゃる方が多々おられる。

先日、保険適応が決まったB細胞性急性リンパ芽球性⽩⾎病に対する新薬キムリアの薬価は3349万円とその値段が話題になっている。高額医療が指摘されたオプジーボは、市場時より薬価が下げられたものの、最も汎用される240mgで41万円程。治療方にもよるが2週間毎に繰り返し投与するためその値段は計り知れない。

日本には、高額療養費制度というものがあるため実際の負担は一定額に抑えられる。しかしながら、負担額の残りをサポートしているのは国であり、国の財政を考えるとこのまま高額医療が増え続けるのは好ましくない。そもそも販売価格が高すぎる!!という指摘もあるかもしれないが、候補化合物が薬になるのは10,837分の1、200~300億円と9~17年の歳月をかけやっと世の中に出てくるものでり、莫大な投資が必要となる分野なのだ。(製薬協のデータより)

このジレンマを抱える解の解決策は全くもってわからない。
客観的にみれば、サポート額を下げることが財政には良いけれど、倫理的に金銭が原因で治療できない人を多数生み出しても良いのかとい所は難しい。

ただ一つだけ共有したいのは、医薬品の適正使用はジレンマが大きくなるのを少しでも抑えてくれるだろうということ。

時々、新薬を使えば全てが良くなる。魔法の薬のように思っておられる方がいる。
医療は日々進歩しており、現代の治療法は一定の成果があるため、改良を繰り返しながら今まで引き継がれている。当たり前だけれども、新薬が治療にとってベストな場合も、そうでない場合も多々ある。
また、高いと言われる新薬だって、少ない治療で良くなるのであれば、生涯医療費は軽減される可能性もある。
結局は、適正なときに適正な医薬品を使うことが、現実的な医療費の抑制法なのだろう。そのためには、医薬品リテラリーを高めることが重要であり、世の中のメディア情報に踊らせるのではなく、専門家に質問するなど正しい情報にアクセスしやすい制度を作ることが重要だと思う。



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