マガジンのカバー画像

Favorite〜2022◌⑅⃝*॰ॱ

100
私のお気に入り。面白いな、胸に響くな、好きだなと思った記事。 基準は、まったくない。 このマガジンに入っていないけど大好きな記事もたくさんある。ここに居るのは、その時の気分と直感…
運営しているクリエイター

#ショートショート

【ピリカ文庫 (2022)】 ジョンとヨーコのI love you 

 彼は皆からジョンと呼ばれている。本当の名前を尋ねてみたことはない。私もヨーコと名乗ってはいるけれど、本名は誰にも言ったことがない。世の中にはそういうことがあるものだ。  デパートの立体駐車場で、ジョンと落ち合う。一階はいつも満車だし、店内直結通路のある五階も車が多い。三階あたりがちょうどいい。シルバーのボディが入道雲を映しながら走る。国産のセダンはおしゃれではないけれど、安心できる。 「美術館。フェルメールが何枚か来ているようよ」 「絵は好き?」 「あんまり」 「俺も」  

多様性の壁

この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

【小説】ハイボールで世界平和チャキチャキ教

郵便受けの中に、自宅の鍵がむき出しで入っていた。 手紙が添えてあるわけでもなく、プチプチで包装されているわけでもなく、ただ一本の鍵が底に置かれていた。 「不用心だなぁ」と私は一人呟いた。もし他の誰かが郵便受けを開けていたら、盗まれてしまったかもしれないのに。 ケイちゃんには、そういう想像力を働かせることはできない。 まだ小さな火が点いているタバコの吸い殻をゴミ袋に捨てたり、トイレットペーパーを乱暴に千切ったり、私が生理なのに気にせずセックスしようとする、ケイちゃんそん

一歩の重みを感じていますか?

何気なく過ごしている一日でも、 誰もがみな、 それぞれの「その時」にむけて、 自分なりのペースでその一歩一歩を 踏み出しているのだと思います。 今日もこうして一歩ずつ。 その重みを、 きちんと意識できていますか? ✳︎ ✳︎ ✳︎  数年前、僕がまだ 日本にいた頃の話です。 出張でとある地方都市に 滞在していたことがありました。 宿泊していた場所は、 都市部から離れた、 連なる山々の麓にある旅館。 その旅館裏には小さな山がそびえたち、 古い石段が山頂まで続いた先