日常と蜜蜂と遠雷と私
舞台袖で、白髪をひとつに結え、ループタイをしたお洒落なおじさんが、私の顔をみて頷く。
「楽しんで!」
それがなんだか、恩田陸著『蜜蜂と遠雷』に出てくるステージマネージャーを連想してしまうものだから、私はすっかりその気になって、天才ピアニスト、風間塵のつもりでステージに出て行く。
大阪に引っ越してすぐ、娘のピアノ教室を探すことになった。
家から近い教室の体験に行くことにした。送り迎えは楽な方がいい。
体験レッスン中、待合室で娘がピアノを終えるのをボーッと待っているとチラシが目