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夢の階段 第三話

第三話

アマテラスは泣き疲れたのか雌ライオンの背中に乗り、隣には男の子こと天悠貴が手を繋ぎながらゆっくりと歩いています
「母さんにも困ったものですね」と、ツクヨミが言えば。コヨミも「ええ、いつもながら振り回されるのは子供たちですからね」と、扇子を手に当て苦笑しています
ここは、第99階層。アカシックレコードこと、閻魔帳が眠る場所です。天を貫くほど大きなドアの前まで来ました。ツクヨミが懐から勾玉をカチッとドアに嵌めると、ギギギっと開かなそうなドアが勝手に開いていきます。ツクヨミは勾玉をドアに嵌めたままです。
「天くんと熊さん、でしたか。皆さん入ってください。私はドアを開けていなければならないので」と、言うと。熊さん、天悠貴こと男の子、雌ライオンに乗ったアマテラス、コヨミ、そして、うさぎが一匹。その子は天くんから晴(はる)と言う名前をもらい、一匹だけここにも付いてきた真っ黒なうさぎです。
皆が入ると、ツクヨミは厳かに勾玉を外し最後に入るとドアは閉まってしまいました。ガタン。一筋縄では開かなそうです。
ツクヨミ様はズカズカと、自分の文机のところまで行くと大きな巻物を取り出します。
「天土より遠く、冥土の土産より深く、閻魔の支配遠くまで連なり、我ここに顕現す。閻魔帳」と、言いながらとても美しい舞を舞います。閻魔帳は開かれ、そこには宇宙がありました。銀河の記憶もしっかりと、この閻魔帳には載っているのです。
「さて、あーちゃん、母さんの居場所かな?」
べそっべそっ「うんっ!!それと、お母さんの機嫌の治し方も」「そうですね…」と、ツクヨミはゲンナリしつつ「あれ、、これは!」「どうしたの?」と、アマテラスが童姿でツクヨミを見上げると、
「あれ、母さん怒ってないみたい」「えー!」「いま、一人で庭の手入れをして。手料理こさえてますよ」「うっそ!」「はい、これから父さんのところへ行くところみたいですね」「えー、なーんだ。」「目玉焼きは塩と醤油持ってくみたいです」はーっ、心配して、損した!と、皆がくすくす笑っていると。アマテラスも機嫌を直し、
「さっすがーつーちゃん!」と、ツクヨミに抱きかかります。それを、ツクヨミは鬱陶しそうに。頭をぽんぽんすると。
「わたし、悠貴をお母さん、お父さんに紹介したいの」と、熊さんに名残惜しそうに目をやりつつ、悠貴を眺めると。「えー!もう!早くない?」と、男の子はすこし、いえ、かなり、照れています。熊さんは「儂は留守番じゃのー」と、言いながらコヨミのいれたお茶と茶菓子を食べています
「ほら、載って!」と、雌ライオンがふた周り程大きくなります。男の子はえー!!!っと、言いながら雌ライオンの後ろに乗ると、アマテラスと男の子を載せた雌ライオンは颯爽と天を駆け、ドアの前で急停止します。ズルズルズル
「私が開けないと、あと、帰り道もコヨミの案内がないと無理ですよ」「そーだった!コヨミさん、載って!」また、ふた周り雌ライオンが大きくなります。ツクヨミが勾玉をドアに当てると、また、ギギギと開きました。
「あ、では。ツクヨミ様行って参ります」と、コヨミが頭を下げると、うむ、 黒うさぎも行ってしまったし、隣には熊大和。
「あなたには聞きたいことが山ほどあります」と、ツクヨミ様が冷笑を浮かべると。
「うぬら、儂も聞きたいことが沢山じゃ」と、熊大和もニヤリとします。
「お茶は足りてますか?」と、ツクヨミが聞くと熊大和はニコニコと「美味しいです」と、言いながらお茶を空にします。
ツクヨミは薬缶から急須にお湯を注ぐと、そっと熊大和のお茶を足します「ツクヨミさま、手ずからいれて下さるとは」と熊さんは目を細めます。すると、大柄な熊さんは毛むくじゃらの熊になっていました。服は伸び縮みするようです「いや、すまぬ!気を抜き過ぎてしまったわい」と、言いながら顔を赤くしています。まんま、熊さんはリアルな熊でした
ツクヨミはニコニコと「お肉の方がいいですか?」と、冷蔵庫から、何か取ってこようとしています。柿の葉の鯖寿司でした。鮭寿司もあります「コヨミお手製なんです」と、嬉しそうに。リアルな熊はとても嬉しそうに「やや、これは奈良の名物ですな」「そうなんです。コヨミの故郷でして」はー。ダラダラ。唾が溢れます「どうぞどうぞ」熊は1つずつ、手で掴み美味しそうに食べます。ツクヨミも1つ、2つと、のんびり食べます
「熊さんで大丈夫ですか?」「熊さんですよ」と、大きな牙で柿の葉寿司の鮭を食べながら、嬉しそうに「やはり、鮭ですか」「それはね、ほんとに」和やかな時間が流れて行きます
ツクヨミが冷蔵庫から、たくさん持ってきた柿の葉寿司もそろそろ尽きそうです。
「熊さんはアマテラスについてどう思いますか」「敵とは思いませんな」「ふむ」
「大人の姿でも。童の姿でも。まだ、幼い」「ですよねえーーーー!!」と、ツクヨミは感嘆しきり。
「儂らには、儂らの矜恃があるのじゃ」「はい…」「あの子はアマテラスにくれてやるつもりですじゃ」「ふむ、それは何故?」「アマテラスが嫁さんの前で儂に求婚した時、お腹に居たのがあの子ですじゃ」「そ、それはなんと迷惑な」「もう、15年になりますかな。アマテラスに求婚されてから」「すみません、妹がご迷惑をかけてしまい。大変申し訳ありません」と、ツクヨミは這い蹲るぐらいの勢いで、平身低頭します「アマテラスさまも、困りますな」と、熊はふふふ、 と、手を口元に持っていき笑った。ツクヨミはとても渋面だ。
「アマテラスと呼べと言われているのでアマテラスと呼んでおりますじゃ。何処で儂を見つけたのか、ほんに、わからんでなー」きっと、仲良し夫婦で有名なのだろう。それに、割って入ってコテンパンになるのが、いつものコースだ。スサノオにも嫌われている。スサノオに対してはアマテラスも、、色々と言いたいことはあるだろうが。
「あの子はだから、生まれながらに神様にしようと」「はい」まー、儂まで列席させられたのは笑い話ですじゃ、かっかつかつかつ!と、熊は楽しそうに笑う
「熊襲では、それは?」「笑い話です」ホッと、ツクヨミは胸を撫で下ろす。
「そろそろ、ナギ様とナミ様の家で名乗りをあげていますかな?」「そうですね、見てみますか。まだ、術式発動してるので」とツクヨミは閻魔帳に力を込めます。また、宇宙が広がり。ひゅーっと、たかき声でツクヨミはアマテラス、天悠貴、母さん、父さん、と、呟くと宇宙空間から、古びた茅葺き屋根の家が見えてきます。窓から中に入り、土間で皆が勢揃いしています。ここは、ナギの別荘です。時々、反省する為に使っている別荘です。
囲炉裏には、鍋が美味しそうに煮えていて。だご汁でしょうか。皆のお皿には、目玉焼きとご飯が見えます。ナギの皿には塩、ナミの皿には醤油。アマテラスの皿にはケチャップ。天くんの皿には塩が掛かっているようです。
「ま、なんだな」と、ナギが話し出します
「はいー」と、ナミが嬉しそうに、ナギに寄り添っています。おぼこい花嫁さん姿をしています。髪の毛はとてもとても長く、それを日本髪出結っています。ナミはおしんが好きです。
かたや、ナギは無精髭に腰までの長さに切りそろえた髪の毛を無造作に纏め、中年の姿です
「父さん、母さん、悠貴さんは婿として正解?」「それはな、、熊襲から貰うのだし。こちらは何とも言えない」「あら、私は賛成よ。こんなにかわいいーお婿さん嬉しいもの」「ただな、」「まーねー、」「「若いっ!!」」と、二人は口を揃えて言います
天悠貴は、それに照れ臭そうにしながら「若輩者ですがアマテラスを幸せにしたいと思います」まーまーまー!なんて、と嬉しそうにナミは横目でアマテラスを見るとアマテラスも照れ臭そうに微笑んでいます(この縁組に無理は無いなー)と、両親も納得顔です。
だって、アマテラスの好みはいつも仲良し夫婦のガタイのいい旦那様でしたし。そんなの最初から上手くいきっこないですからね。
ツクヨミも、それを見てふふふっと笑うと「妹には勿体ない息子さんですね」と嬉しそうに。熊さんも目をたれ目にして、ニコニコと「これにて縁組成立じゃのー」と、ニコニコと。二人は人間の手と熊の手で、グータッチすると、ツクヨミはお酒を持ってきて、そのままたらふく飲んで食っての宴会になったそーな。


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