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会計業務のDX_ブロックチェーン事業者の場合

初めまして、Aerial Partnersで事業部長をやっています藤村です。私は現在、会計の専門家としての経験を活かしブロックチェーンゲーム運営事業者や暗号資産交換事業者のバックオフィス業務を効率的に運用していく仕組み作りのサポートを行っています。

その仕組みづくりで行ってきた活動について、会計の本来の役割から立ち返り、どのような形で効率的な仕組みづくりを実現しているか記載していきます。

1. 会計の目的と役割

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まず、そもそも会計って何だっけというところから考えると、
一般に使われている「会計」という用語も大別すれば財務会計と管理会計に分けることができます。これは会計数値を何に利用するかによって分けることができます。

【財務会計】
これは語弊を恐れず言うと、決算書や法人税等の申告書を作成するために行う会計で、一般的に皆様がイメージする「会計」と近いものがあると思います。企業であれば経理部が各部から請求書や受領書などの証憑(証拠書類)を集め、それを仕訳として会計特有の表現に直すことによって財務諸表や決算書を作成するといったことを目的とするものです。法人税等の税務についてもこの財務会計で作成した決算書等が元になって作成されます。

言わば、この財務会計は企業が行った事業活動の結果を表すということが大きな目的となっています。

【管理会計】
管理会計は経営管理に役立つ情報を企業内部の経営者に提供することを目的としています。例えば、ある製品を自社開発した際にいくらでPricingするのかといった場面に遭遇することはよくあることだと思います。Pricingを誤ると企業運営にとって大打撃となることもあります。その際に一つの判断指標として用いるのが管理会計であり、この製品を作る上でかかったコストはいくらであるのか(このコストには直接かかったコスト以外に人件費であったり、機会損失といったコストといった直接目に見えないようなコストも含めます)といった情報を集めることが非常に重要になってきます。
総じてこの管理会計は、企業が将来進んでいくにあたってコンパスのような形で指針となる情報を提供することが大きな目的となっています。

【会計とは】
そのため、「会計」とは企業が未来に向かって進んでいく際の指針(コンパス)となるものであり(管理会計的側面)、企業活動の結果を把握する際に利用する(財務会計的側面)ものであることと言うことができます。よく皆さんも会社等で耳にすると思うPDCAサイクルについてもこの会計を用いることでより効率的に回すことができます。だからこそ、「会計」は非常に重要な業務と言えます。

ただ、この非常に重要な会計業務を適切に行おうとすれば、相応の人的コストがかかってきます。そこで、Aerial Partnersでは、会計専門家としての専門性とテックの領域を組み合わせ、その複雑な会計業務を効率化するサポートを行っています。次からは実際に私の方でサポートしてきた内容を簡単に説明させていただき、最後に今後どのような形でサポート領域を広げていくのかについて記載します。

2. 現状のクラウド会計ソフトでの会計効率化

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現在は、クラウド会計ソフトが台頭し、銀行側がAPIをオープン化することによって銀行口座やクレジットカードをクラウド会計システムに連携すると、日付や金額、取引先などの利用明細を自動で取得し、入出金情報を自動で仕訳起票してくれます。

代表的なクラウド会計システムを挙げると、Money Forwardクラウドやfreeeといった会計システムが挙げられます。両システムでは、自動で取得した入出金情報をAIなどの活用によって使用すべき勘定科目を推定し、自動で処理を行ってくれ、手動による仕訳起票を行わないことで経理作業に関する効率化を実現してきました。

3. クラウド会計ソフトの限界

クラウド会計ソフトを利用することで確かに、入出金情報をベースに自動で仕訳を起票することは可能になり、効率性も格段とあがりました。ただ、本当に会計が自動化できているのかというと、答えはNoと言えます。

冒頭で記載しましたが、私は現在ブロックチェーンゲーム運営事業者や暗号資産交換事業者のバックオフィス業務を効率的に運用していくことの仕組み作りのサポートを行っていますが、今回はDApps事業者のサポート実務で感じた会計ソフトの限界について記載します。

現在、日本ではブロックチェーンゲームをリリースする事業者が増えてきていますが、現時点ではイーサリアムを基盤としたタイトルが主流となっています。

そのような事業者にとって決算書の作成(財務会計)は日本円建てで行わないといけないものの、経営管理(管理会計)は日本円だけでなく、ETH建てでも行いたいというニーズがあります。

このニーズは確かにゲームタイトルの収益性や生産性を見ていくにあたっては、日本円建てで管理するよりもETH建てで管理した方が適切です。
これは、ETHを日本円建てに換算する際に、日々のレートを用いて換算するため、日本円建ての金額にはレートの高低による影響が含まれてきて、経営の意思決定を行う際に直接ゲームタイトルの収益性を見ることが困難になるためです。

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ここで、既存のクラウド会計ソフトでは、上でも記載したように銀行側がオープン化したAPIを連携することによって企業の銀行口座に入ってきた入出金情報は自動で起票することができます。

ただし、ブロックチェーンゲーム事業者にとって、あくまでその情報は本業によって獲得したETHを売却したことによって得られた日本円の情報だけです。

この情報だけでは、サービス提供によって得られた対価(売上)がいくらであり、その対価を売却したことによって得られた日本円にはレートの変動分がいくらかといった情報までは把握することができません。そのため、このままでは経営者がこのゲームタイトルに関する収益性や生産性を把握することはできません。

4. Gtax Enterpriseで可視化した情報

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そこで私が所属するAerial Partnersでは、従来個人の暗号資産トレードの損益計算を自動で実施するために開発した「Gtax」の機能を用いて「Gtax Enterprise」版として既存の会計システムでは把握することができなかった情報を自動で取得することを可能にし、財務会計・管理会計に用いる情報への変換を行うことにしました。

上で記載しているブロックチェーンゲーム事業者の場合はイーサリアムを基盤としていますが、そこで取り扱われる暗号資産ETHについて会計に必要な情報はブロックチェーン上に記載されています。

①いつ②誰から③誰に④いくら渡して⑤手数料はいくら発生したのか、この情報は全てブロックチェーン上に記録されています。そのため、このブロックチェーンに記載されている情報を自動的に取得し、個社個社の会計ルールに従って処理できれば、このゲームの運営によって獲得したETHの数量は何枚で、何円であるのか、最終的に日本円に交換したときにレート差によって発生した損益はいくらであるのか、現時点で抱えているETHの在庫は何枚で、何円であるのか、といった事業を運営するにあたって必要な情報を、手動ではなく自動で把握することが可能となります。

このブロックチェーンに載ってきている情報を収集し、整理し、個社個社の会計ルールに合わせた形で必要な情報を会計の用語で表現して、既存の会計システムに繋げるといったことをGtax Enterpriseでは行っています。これにより、ブロックチェーンゲーム事業者は手作業を入れることなく、日々、ゲームの運営によっていくらの売上があり、コストはどれだけかかり、利益はいくら出ているのかということが瞬時に把握することが可能となります。

5. 今後Gtax Enterpriseの目指す方向性

ここまでに、クラウド会計ソフトで取得できない情報をGtax Enterpriseで取得することでブロックチェーンゲーム事業者は手作業を入れることなく、ゲームの収益性や生産性を把握することができる仕組みを構築したお話をしてきました。

それでは、最後に今後Gtax Enterpriseが目指す方向性について少し記載し、結びにしたいと思います。

これまでに記載してきた、Gtax Enterpriseで可視化した情報の入手によって「会計」が適切な形で自動化されたかと言ったら、それはまだNoと言えます。
なぜか、、、

それは会計は一番最初にも記載しましたが、企業活動の結果を表してこそ初めて会計と言えます。企業は、法定通貨の入出金を行うだけが企業活動ではありません、当然、ETHの入出金だけを行っているだけでもありません。

お客様とサービス提供に関して打合せをし、それに対して契約書を結んだり、合意をしたり、それに基づきサービスを提供するといった企業活動の結果、法定通貨の入出金やETHの入出金が発生します。

そのため、本来会計の効率化を目的に自動化するためには、ETHの入出金情報よりも上流の情報(契約情報等)を取得してきて、その情報に基づき会計を行う必要が出てきます。

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今のGtax Enterpriseでは、今までのクラウド会計ソフトでは取得できなかったブロックチェーン上の入出金情報を取得することが可能となりました。ただし、まだその上流の情報について取得した訳ではなく、あくまでETHの入出金情報から特定のルール付けを行い処理を行っている状況です。

先ほどブロックチェーン上には、①いつ②誰から③誰に④いくら渡して⑤手数料はいくら発生したのかといった情報が載っていると記載しましたが、それだけでなく、⑥どのような取引で発生したのかという情報も記載されます。
この上流情報を適切にキャッチアップし、適切な形で処理していくことができれば、もう一つ先の会計の自動化に近づいていきます。

まとめとして、
Gtax Enterpriseでは今後、ブロックチェーンに載ってくる上流情報(契約情報や取引条件情報等)まで取得してくることにより、正確な会計情報・経営管理情報をオンタイムで把握できる仕組み作りを行っていき、クライアントに本業に集中していただける形で業務効率化のサポートを進めていきます。

6. 経営管理、バックオフィス業務を効率化したいと思っている事業者様へ

Aerial Partnersでは現在、様々な事業者様へのバックオフィス業務の効率化の仕組みをクライアント様と共に作っていっています。今回はブロックチェーンゲーム運営事業者様の取り組みについてお話させていただきましたが、業種は同じでも会社が違えば当然、業務フローであったり、社内内部での確認作業(内部統制行為)は違ってきます。

Aerial Partnersでは我々の強みである会計専門家としての強みを活かし、個社個社の現状の業務フローや内部統制を確認した上で、クライアントと効率化・自動化できるポイントを探し、もう一つの強みであるテックの力を用いて新たな仕組み作りを行っています。

バックオフィス業務を効率化したい、自動化を進めていきたいとお考えの企業担当者の方がいらっしゃいましたら常にパートナーは募集していますのでお気軽にご連絡ください。