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さようなら、エラーゲームリセット

2024年1月5日、セガ発のスマートフォンゲーム『エラーゲームリセット(エラゲ)』がサービス終了した。約8ヶ月の命だった。

前回のエラゲを評したnoteで僕はその時点でのエラゲを「ハーフアニバーサリーすら迎えられずに死んでしまった『サクラ革命』と同じ轍を踏むことは、なんとか回避できた」と評し、心の中で「最低でも『シン・クロニクル』と同じで1年ぐらいは保つだろう」と思っていたが、まさかハフバをやったその直後にサ終発表が飛んでくるとは思わなかった。
だが、同時に「まあ、そうなる(サービス終了)だろうな」と腑に落ちている自分もいた。以前のnoteでも言った通り、エラゲは「セガという太い実家があるから、人気がなくてもかろうじて生き延びている」という状態に常に置かれており、いつ死んでもおかしくないゲームだった。あの界隈のスラングをあまり使いたくはないが、1年以内のサ終も「残念だが当然」だったと言える。

エラゲが約8ヶ月でのサービス終了に至った原因は、もう過去に執筆したnoteと、11月に制作したゆっくり解説動画で書ききったのでここに述べることはしない。興味のある方は見ていただけると幸いである。

ここからは批評でもなんでもない、いちセガファンの愚痴と嘆きを書いていく。
いつもより辛辣なので、強い言葉を好かない人はブラウザバックを推奨する。


◆サ終後の展開

サービス終了発表後のエラゲは、サ終スマホゲーの例に漏れず「ガチャ石の大量配布」「ガチャの☆3(SSR)出現確率を大幅上昇」「各種クエストの消費スタミナ緩和」などの施策、いわゆる「閉店セール」を開始。10月のサ終発表から今月までの約2ヶ月で各種イベントを行いつつ、ストーリーを急ピッチで完結させた。

ストーリーのことは後述するが、ゲーム面に関しては閉店セールのおかげでとても楽しくなった。なぜなら、このゲームのガンの一つであった「つらい育成面」という難点が解消されたからだ。
今までのエラゲは育成面において「3属性の3すくみに対応した15人のキャストを育成してね!それに加えて対立2属性にも対応できるキャストを育成してね!そしてそれぞれに『フィギュア』『アクセサリ』という装備品を用意して装備させてね!」というかなりハードな要求をしており、ひとつパーティを組み立てるだけでかなりの苦労があったのだが、育成面のハードルが下がったことでパーティ編成の難易度が劇的に下がった。
これにより一気に楽しくなったのが、ボスと1vs1で勝負するイベント「開発課コロシアム」「RAIS」だ。育成面の緩和で、これらのイベントにおいて「このキャストなら、ボスにもっとダメージを与えられるんじゃないか?」「このボスのバーストスキルには、このキャストで対抗できるんじゃないか?」など、試行錯誤の楽しみが生まれたのである。
ガチャの緩和で強力な☆3キャストをバンバン入手し、限界突破で強化できるようになったこともこの「試行錯誤の楽しみ」に一役買っており、緩和措置で強力になった自軍でボスと殴り合うのはとても楽しかった。

皮肉な話だが、閉店セール中のエラゲは約8ヶ月の稼働期間の中で最も楽しかったと断言できる。

◆ストーリーの結末

メインストーリーは、第9章と、サービス終了後にプレイヤーの手元に残るオフライン版でのみ閲覧できる「最終章」によって急ピッチで完結した。
第9章~最終章に関しては、今までのストーリーの殆どが薄味でつまらなかったことから「急なサ終だし、いつもどおりサクッと終わるだろうな」という諦観と、「最後だし、どでかい花火を打ち上げてくれるかも」というごくかすかな期待を抱いていた。

そして実装された第9章。その内容は…セガが「湯川専務」「セガガガ」の頃から続けてきた伝統芸。要するに自虐であった。
主人公(プレイヤー)たちの属するセガ世界が謎の崩壊現象に見舞われる中、バンダイナムコ世界から現れたキャスト「ディグダグ」が告げたのは、この世界はスマートフォンゲーム『エラーゲームリセット』の世界であることと、エラゲの売上不振によってこの世界は「サービス終了」し滅びること、そしてその引導をバンダイナムコ世界が渡すということ。

要は現実世界でのエラゲのサ終とリンクしたシナリオなのだが、セガが飽きるほど繰り返してきた自虐芸には寒さしかなく、「セガはバンナムに(現実世界で)負けている」という意味を込めてか、借り物である他社IPから生まれたディグダグに「セガはもう終わりなんだよ!」と言わせてしまうのも自虐がキツくて笑えない。
また、一応はゲームを締めくくるエピソードだと言うのに相変わらず話は薄味で、会話の殆どはディグダグの力で洗脳されてしまった敵キャストとの

「◯◯さん!目を覚ましてください!」
「………」
「ダメみたいです、戦うしかありません!」

という、うっすいバトル前のやり取りに終始する。

それを言いたいのはこっち(プレイヤー)なんですけど

続く最終章。プレイヤーは今までのサイコパスぶりが嘘のようにしおらしくなったリボンの最後の力によって我々が知る本来の歴史(セガが単なるゲーム会社でしかない世界)に転送されるが、その代償に世界からは(世界を支配していたエラゲ内の)セガと、エラゲというゲームの象徴であるリボンの存在が消えてしまう。
これは文字通りで、最終章を閲覧した後に過去のシナリオを振り返ると、リボンの姿はモザイクにかき消され、「セガ」「リボン」の文字は文字化けしてしまう、という徹底した不可逆の演出が入る。

演出自体は力が入っていていいのだが、プレイヤーは今まで極薄のシナリオと、どんな事態を前にしてもニマニマヘラヘラ笑っているサイコパスなリボンの姿しか見ていないわけで、リボンとの思い出が心の中に全然築かれていない。
なのに「リボンがこの世界から消えた、二度と会えない」と言われても何も響いてこないし、急にしおらしくなってヒロイン仕草をするリボンを見ても「サ終の都合なんだろうな…」としか思えないし、リボンの消滅を前に落涙するゲーム中の主人公の姿を見ても「いや、そんな感情ないですけど…」と冷めた気持ちしか持てない。

ちなみに、9章以前に張られてきた

・リボンは何のゲームのキャストなのか
・リボンのサイコパスぶりは何だったのか
・リボンの言っていた「世界統合」とは何だったのか
・リボンとともにレジスタンス活動をしていた「X」は何者だったのか
・キャストを浄化して改変された世界を正常に戻しても、世界に根本的な解決がもたらされないのはなぜなのか

といった伏線は、全部ブン投げられて終わった。

◆おわりに

このゲームの終わりを看取って、残った感情は虚しさと悲しみだった。

僕は、子供の頃両親が買ってきてくれたセガハードで育った人間である。
『夢見館の物語』で妹を探してさまよい、『パンツァードラグーン』でドラゴンとともに空を飛び、『電脳戦機バーチャロン』で限定戦争の只中に飛び込み、『ソニックアドベンチャー2』で音速で世界を走り抜け、『Rez』でJOUJOUKAの奏でるビートにノリ、『ボーダーブレイク』でニュード争奪戦に100円玉を燃やした人間である。
なので、セガの作るゲームにはどこか信頼やリスペクトに近い感情を持っていた。

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しかし、今やその感情は心の中のどこにもない。
14年越しの『サクラ大戦』の復活とそのあっけない顛末には、「これはセガも悪いけど、COVID-19でサクラ大戦名物のミュージカルとの2本柱の展開が破綻したせいでもあるし、ちょっとかわいそうだったな」という同情が湧いた。だが、大言壮語のもとに送り出されたエラゲのグラフィックと音楽以外あまりにも雑な作りと、享年8ヶ月という当然の結末に同情の余地はない。

ヨコオタロウ氏が書いたとは思えない無味無臭のシナリオ。
シナリオの不出来さによって絶たれたガチャへの導線。
ゲームシステムとの相性を考えずに他ゲーから雑にクローニングされた育成要素。

そこには、かつて自分を高揚させたセガゲーの放つ輝きはなかった。

僕はただただ悲しい。
かつて、僕を魅了したセガが、こんな雑なゲームを作って満足するような会社になってしまったことが悲しい。初音ミクと桐生一馬におんぶにだっこな姿勢でいる会社になってしまったことが悲しい。
どうしちまったんだセガ。僕たちを熱狂させたあの頃のイカしたセガはどこに行っちまったんだ。

今はただ、セガが『サクラ革命』、『シン・クロニクル』、そしてエラゲの失敗を糧に、次はちゃんとしたスマホゲーを産み出すことを祈るばかりである。

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