国際宇宙ステーションの表面に付着した細菌および真菌の総体的および生菌的なコミュニティの特性評価

背景

国際宇宙ステーション(ISS)は、生命維持装置、貨物、乗組員に由来する微生物が生息する閉鎖系であり、微小重力という独特の選択圧にさらされています。これまで、宇宙船や宇宙ステーションの微生物モニタリングや観察研究は、伝統的な培養法で行われてきましたが、多くの微生物は標準的な技術では培養できないことが知られています。ISS内に生存する微生物の真の数と多様性を十分に把握するため、分子および培養法を用いて、ISS表面の微生物群集を評価しました。サンプルは、14ヶ月間の3回の飛行ミッション中に、あらかじめ設定された8つの場所で採取され、地球に帰還後に分析されました。

結果

培養可能な細菌・真菌集団は、場所によって104~109 CFU/m2で、様々な細菌(Actinobacteria、Firmicutes、Proteobacteria)と真菌(Ascomycota、Basidiomycota)の系統で構成されていました。アンプリコン・シーケンス法では、培養法と比較して、より多くの細菌類が検出されましたが、真菌類はどちらの方法でも同程度の数が検出されました。細菌および真菌の負荷(培養法およびqPCR法)の経時変化は観察されましたが、場所による違いは見られませんでした。細菌群集の構成は時間の経過とともに変化しましたが、場所を越えて変化することはありませんでした。一方、真菌群集はサンプリングと場所の間で変わりませんでした。プロピジウムモノアジドによるサンプル処理を行っても、生物群集の組成や豊かさに大きな違いは見られなかったことから、分析されたDNAは、無傷で生きている生物から抽出されたものであると考えられます。さらに、無傷で生存している細菌の約46%、無傷で生存している真菌の約40%を培養することができました。

結論

今回の結果から、ISSの環境表面には多様な細菌や真菌が生息しており、それらは時間とともに変化するものの、場所によっては類似していることが明らかになりました。主な生物はヒトのマイクロバイオームと関連しており、日和見病原体も含まれている可能性があります。本研究は、閉鎖された宇宙空間の表面で発見されたバクテリアと真菌の総体的なカタログを初めて提供するものであり、深宇宙での人間の居住に関するNASAの要求を満たす安全対策の開発に利用することができます。本研究の結果は、製薬業界や医療業界で使用されているクリーンルームなど、地球上の他の閉鎖された建築環境の理解にも大きな影響を与える可能性があります。

出典:https://microbiomejournal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40168-019-0666-x


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