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【学会誌】パワーデバイスの最新動向
こんにちは。
『表面技術』2023年6月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になったポイントをメモしておきたいと思います。
今回読んだ論文のタイトルは「パワーデバイスの最新動向」で著者は筑波大学の岩室さんです。
内容
前回の記事はパワーエレクトロニクス全体の話でしたが、今回の記事はパワーデバイス(素子自体)についてです。特にIGBTとSiC-MOSFETに関する解説です。
パワーデバイスに求められる性能
電流導通時の電気抵抗が低い
スイッチングが速い
破壊することなく安定な動作が可能
IGBT
超低オン電圧かつ超高速スイッチング、高破壊大量を併せ持つ
最新のIGBT素子は、オン電圧が正の温度係数を示す=温度が上昇するとオン電圧が増加する
並列動作が容易になり、大電力に対応可能
IPM(Interlligent Power Model):過電流・過熱保護機能を持つ最新IGBTと制御機能を持つ専用ICを搭載したモジュール
近年でも、逆阻止IGBT(RC IGBT:IGBTとpinダイオードを1チップにまとめたもの)など、開発スピードは一向に衰えない
RC IGBTは1つの素子でダイオードとIGBTを含むため、モジュール内の素子数を半分にすることができる
IGBTとpinダイオードはそれぞれ設計最適化手法が異なるため、1素子に統合するための設計に難しさがある=現時点では設計ノウハウとして各社の差別化要素になる
SiC
Si素子に比べ最大接合温度(下記参照)が高いため、冷却部品の小型・軽量化が可能
Siパワーデバイスのプロセスを流用できる
イオン注入や熱処理でn型・p型の不純物層を広い範囲で選択可能
微細トランジスタ構造で低オン抵抗化が可能なトレンチMOSFETが主流になりつつある
SiCウェハの製造プロセスではコストダウンに向けた動きが加速している
例えば、昇華法に代わる新たな製法(下記参照)
今日は以上です。
(参考)
・最大接合温度
半導体デバイス内部のPN接合部における最大温度を示す。
半導体デバイスの整流作用を含めた重要な機能はPN接合において発現する。バンドギャップ(禁制帯幅)及びドーパント濃度に依存するある温度以上になると、半導体P型とN型の相違が小さくなりPN接合部の機能が無効化する。Siではこの温度は250℃程度、SiCでは800℃程度と言われている。
最大接合温度は、デバイス内部の最大温度とほぼ等価な意味で使用される。半導体デバイスは半導体材料以外の材料からも構成され、その周囲をパッケージ化されている。実際に使用される半導体デバイスの使用可能な最大接合温度は、半導体材料以外の材料や周囲のパッケージ材料の信頼性から制限される。現状での半導体デバイスの使用可能な最大接合温度は175℃程度である。
・昇華法に代わる新たな製法:参考文献を見るとおそらくこれ。安い多結晶基板を支持基盤とすることでコストダウン出来るようです。
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