『魔機人形と棄てられた世界』制作録①
制作録といいつつ完成したあと思い出しながら書いてます。
なぜならこの作品は行き当たりばったりで制作されたからです。
・発端
これです。なんとなく思いついて、技術的に実装できそうだなあとやってみたというだけのものです。このときが4月1日なので制作開始日が4月1日ということになります。
ツクールMVにはドラクエであるような仲間キャラが後ろから並んでついてくるような機能がもとからあるのですが、その仲間キャラが勝手にウロウロしたら楽しそうだな……と、それだけの思いつきです。
・着想①既存作品から
おおもとの着想は、たとえば『スカイリム』などに登場する「従者(フォロワー)」、あるいは『elona』の「ペット」、もっと露骨なのが『マインクラフト』での「メイドさんMOD」です。
「メイドさんMOD」とは『マインクラフト』にメイドさんを追加するMODです(正式名は「littleMaidMob」)。
本来はプレイヤーが行う作業を「メイドさん」が代わりにしてくれます。
プレイヤーは野生のメイドさんにケーキを渡すことでメイドさんを雇うことができます。
要は、バニラ状態でも実装されている「狼」を拡張したようなキャラクターです。
メイドさんは賢いので戦闘以外にもアイテムを収集してチェストに収納したり、作物の収穫や羊の毛刈り、料理もできます。
なによりかわいいです。
と、あの感じを目指して「自動戦闘」「アイテムを拾う」「アイテムの受け渡し」「弱ったら自動で回復」あたりを実装しました。
目指したのは「仲間と一緒に冒険する」体験です。
・着想②アクションゲームが苦手
アクションゲームが苦手です。
特にジャンプアクション! 足場から足場へのジャンプなんて「落ちるかもしれない」というリスクと「落ちたら面倒」というストレスのためになんも面白くありません! 足場が規則的に動くなんてもってのほかです!
まあ、本作にそういう要素は特にないのでただの恨み言です閑話休題。
ジャンプ要素でなくとも、「敵の攻撃を見極め回避し、敵の隙を見極め攻撃する」という一連のルーチンがだいぶ苦手です。
要は「タイミングを見極める」というのがとにかく下手くそなのです。
「めんどくさいから一方的に攻撃させろ!」とか思ってます。
そういうわけで、「仲間に勝手に戦ってもらう」ことにしました。
さらに、「プレイヤー自身が戦う」という要素をオミットしました。
引き算です。
本来だったらあるべき要素を削ることでゲームとしてはだいぶ別物になるのではないかという狙いです。
主人公に戦闘能力が一切なく、仲間にすべて戦闘を任せるタイプの作品というと……プレイしたことはありませんが『ピクミン』とかそんな感じでしょうか?
多分ですが、あんまりない感じのゲーム性だと思います。
・「仲間キャラ」が増えるときって楽しいよね
基本的なコンセプトは定まりました。
「仲間と一緒に冒険する」「プレイヤー自身は戦わないアクションゲーム」
ここからアイデアを練っていきます。
どういう順番で思いついてどういう順番で実装したかについては覚えてませんが、RPGにおいて「仲間が増える」というのは報酬で最も大きく、楽しい瞬間だと思っています。
というわけで、各ダンジョンに「人形」が眠っていて、それを再起動することで仲間に加える、という方向で定まりました。
で、このゲームの場合、仲間が一人だけだとあまり楽しくありません(たいていのRPGでもそうですが)。
仲間の攻撃力と敵のHPや攻撃力が一定なのでほとんどゆらぎが生じないからです。
二人以上仲間がいて初めて、一体の敵に対して各個撃破が成立すると無傷で倒せたり、逆に分散すると深手を負ってしまうというようなゆらぎが発生します。
そういうわけで、二人目の仲間は早い段階で加わるようにしよう。
三人目も早めにしたいが、あんまり早すぎてもちょっともったいない※ので少し難易度を上げよう。
(※「仲間キャラ」は「報酬」として大きいので、できるだけ長くぶら下げてプレイヤーの欲求を煽り続けたいというデザイン意図。もちろん、あまりもったいぶりすぎても逆効果にはなる)
四人目はさらにもう少し遠くに置いてよいだろう。最悪こいつは仲間にしなくてもクリアできる……。
画面密度的に四人くらいが限界かな。
と、ざっくりとビジョンを固めました。
・「報酬」を定めよう
ゲーム制作において、プレイヤーに与えられる「報酬」をどう用意するかというのにはいつも頭を悩ませます。
先にも述べたように「仲間キャラ」というのは報酬として最大級のものです。ソシャゲでも主な収入源は仲間キャラが増える「ガチャ」です。
とりあえずRPGに限定して語りますが、次点では「武器」などの「装備アイテム」でしょうか。
というわけで、装備アイテムの扱いについて考えねばなりません。
まず、単なる好みというか個人的な方針として、「できるかぎりアイテムの種類を増やしたくない」というのがありました。
また、この作品には「仲間にアイテムを持たせる」という機能が存在します。
もちろん、武器だって複数持たせることもできるわけです。
それなら……?
剣を一本装備したら攻撃力+1!
剣を二本装備したら攻撃力+2!!
剣を三本装備したら攻撃力+3!!!
よし。
「武器を装備したら装備しただけ強くなるって、なんかずるくて楽しくない?」と、この仕様で行くことに決めました。
さらにいえば、この仕様だと同じ武器を複数手に入れることにも意味が生じてきます。
「え、この武器もう持ってるんだけど……要らない……」という現象が回避しやすくなります。
むしろ同じ武器だろうと何本だって欲しくなります。
となると、仲間の強化手段はわかりやすく「所持品枠」を拡げることになるでしょう。
あとは前も言いましたが、「文書」や「ストーリー」も報酬として便利です。なんといってもゲームバランスにまったく影響を及ぼしませんから。
これも続投でよいでしょう。ダンジョンの行き止まりに置くものを悩んだら文書を置いておけばよいのです。
・便利な「アイテム合成」システム
「報酬」の話題の続きにはなりますが……
「アイテム合成」は便利です。
なにが便利かというと、「報酬」を「素材」という形で細分化できることです。
さて、RPGであるからには「敵」がいます。
「敵」はプレイを妨げ、プレイ時間を稼ぐ「障害」ですが、せっかく倒すからには「報酬」が欲しいものです。
「経験値」や「ドロップアイテム」がそれにあたります。
敵をただ倒すのが楽しいというゲームもあるでしょうが、倒した勲章としての報酬(ゲームとしてさほどうまみはなくても)があれば、やはり楽しさは増すものです。
本作でも「敵」を倒せばアイテムがドロップします。
ですが、いくら武器を複数装備可能だからといって雑魚敵を倒すたびに武器をドロップしていればあっという間にゴミになります。
かといってごくまれにしか落とさないレアアイテム扱いにすると雑魚をいちいち倒すのがめんどくさくなります。
最悪リセマラが視野に入ってくるでしょう。
これが「素材」アイテムならどうでしょう。
いくら集めても足りない。もっともっと欲しいと雑魚敵を積極的に狩るはずです。
というか、仲間が勝手に狩ってくれます。
仲間が勝手に戦って敵を倒してくれるだけで楽しいのに、アイテムまで落としてくれるなんて……!
お得ですね。
あとはまあ、単に私自身「アイテム合成」のルーチンワークが好きなのがあります。
素材を集めてアイテムを合成して、足りない素材一覧とにらめっこして、また素材を集めに行って、レシピを手に入れてつくれるアイテムがまた増えて……。
そうそう、「アイテム合成」システムを導入すると「レシピ」というのもかなり強力な「報酬」として機能します。
「報酬」の種類が増える! これは素敵なことです。
え、ここまでくると「アイテム合成」を導入しない理由がないのでは……?
まあ、「お店」があるようなゲームだと衝突してしまうかもしれません。
ちなみに本作の舞台となる世界はとっくに滅んでいるので「お店」も「通貨」もありません。
・戦闘システムを整備しよう
行き当たりばったりの制作なのでどういう順番で手をつけたかは正直覚えてませんが!
システムのブラッシュアップの経緯についても書いておきます。
プロト版を自分でテストプレイし、「仲間を周りにウロウロさせながらダンジョンを探索する」という体験を確かめるうち、「君が先に行ってくれると助かるんだけどねえ」という思いが強まってきました。
初期verだと仲間はプレイヤーの周りをウロウロするだけで、プレイヤーが敵の近くまでいかないと仲間も当然敵には気づかない、そのぶんプレイヤーが巻き込まれるリスクも上るという形になっていました。
そういうわけで「突撃命令」を実装しました。
プレイヤーの見てる方向5タイル先に仲間を先行させるコマンドです。
その先で仲間が敵を発見した場合は勝手に戦って倒してくれます。
「え、これじゃプレイヤーにはもうなんのリスクもないのでは?」とか思いましたが、やってみるとなんだかんだ油断したりでダメージを負うこともありました。
うーむ、わるくない。
あとは悩んだのが、「仲間が倒れた」ときの処理です。
このゲームでは主人公に戦闘能力がないので仲間がいなくなると詰むおそれがあります。
で、そのへんをウロウロして勝手に戦ってくれるというコンセプトである以上、倒れた場合はその場に倒れてくれないと不自然です。
仲間が倒れた場合は倒れた仲間のところまで歩み寄り……
①回収する。プレイヤーの所持枠にアイテムとして格納される。
②再起動する。蘇生アイテムを消費して起き上がらせる。
まあそんなところだろうなと思いつつ、どこに倒れたかわからなくなったり、倒れた場所に辿り着けないようだと詰みますね?
そんなわけで、拠点から遠隔で倒れた仲間を回収するシステムを導入することにしました。
これはちょうどそのころプレイしていた『DAYS GONE』の「バイク回収システム」から着想を得たものです。
(『DAYS GONE』においてもバイクはゲーム進行に欠かせないものです)
さて、遠隔回収は非常に便利ですが、これだけだとわざわざ倒れた仲間に歩み寄る意味がありません。
「倒れた仲間を回収して持ち帰る」というのも体験としてそこそこ楽しいものだと感じていました。
基本的にはそちらを選ぶようにしたいものです。
遠隔回収は便利すぎる反面なんらかのデメリットが必要……。
『DAYS GONE』の場合はお金が必要でした。
業者に頼むという設定なのでまあ当然です。といっても、お金なんてありあまってるので別にデメリットとしては機能してませんでしたが。
本作の場合も「お金」の代わりに「素材」を消費して回収する形にすればよいでしょうか?
仲間がいないと「素材」を入手できないのに?
あまりない可能性ですが、原理的には詰みうる設計です。
(『DAYS GONE』の場合はたとえ無一文でもゾンビを倒せばお金が手に入ります。そして主人公はそのへんで拾った武器でもゾンビを倒せます)
そういうわけで、遠隔回収の際には「回収される仲間が持っていた武器やアイテムをなにか失う」という形にしました。
その仲間がなにも持っていなければなにも失いませんが、あまりそういう状態にはならないでしょうし、だったら気兼ねなく遠隔回収を使ってもらえばよいだけです。
このデメリットの設計として「持っていれば失う」という形は我ながらうまい発想だなとか思ってます。
(まあ、初っ端の初っ端で最初の武器をなくすとだいぶきびしいようですが……)
・ハクスラか、ローグライクか
だいぶ雑な分類にはなりますが、RPGは「ハクスラ」タイプと「ローグライク」タイプと二種類に分けられるのではないかと考えています。
「ハクスラ」タイプとは、無限リソースのゲームです。
敵を倒し、アイテムを手に入れ、レベルを上げ、強くなったらより強い敵を倒し、より強いアイテムを手に入れ、より強いスキルを習得し……というのを繰り返すのが楽しいゲームです。
いわば「レベル上げ」や「雑魚狩り」作業が発生しやすいのがこのタイプです。
「ローグライク」タイプとは、有限リソースのゲームです。
プレイヤーの持てるアイテムの数にはかぎりがあり、手に入るアイテムにもかぎりがあります。手に入ったアイテムを一つ一つ吟味し、いらないものは捨てるというような取捨選択の作業が発生します。
場合によっては時間経過で「空腹」になり、そのために「食糧」アイテムを確保する必要などがあります。
と、「ハクスラ」「ローグライク」という呼称はともかく、ゲーム内リソースを無限とするのか有限とするのかというのはゲーム性に大きく関わる問題です。
さて、これまで私のゲームは多くが後者の「有限リソース」ゲームに該当するものでした。
わかりやすくいえば「日数制限」です。
実際にはかなり余裕がありほとんどフレーバーのような扱いであったとしても、「日数制限」が設けられればプレイヤーは緊張感をもっていかに効率的にプレイするかを考えることになります。
本作で「日数制限」を設けるか否か。
だいぶ悩みましたが……結果としてはオミットしました。
理由としては、本作は「冒険する」ことを主題に置いていること。
「もっと無思考に仲間が勝手に暴れ回る様子を楽しんでほしい」といった理由によります。
なにより、「日数制限」はその性質上、ゲームのボリュームを制限するものでもあります。
どんどん世界が広がっていくタイプのゲームとは相性が悪いといわざるをえません。
日数にかぎりがあるのにわざわざクリアする必要のないダンジョンを探索しますか? なにがあるかもわからないのに? せっかくのリスクを冒して探索したのに大したものが得られなければガッカリしますよね?
と、そんなこんなで本作は「ハクスラ」タイプで行こうと決定しました。
一方で「持てるアイテムにかぎりがある」という仕様によって、短期的にはローグライクめいた部分もあります。
というのも、正直、完全無限リソースゲームって面白くないよねという思いがありまして……。
「回復アイテムを無限に持てるので雑魚戦ごとにメニューを開いてパーティを回復させる作業が入る」みたいなアレです。
そうなるとすべての雑魚戦で最強魔法をブッパする激戦になってしまうんですよね。
また、ダンジョン内に全回復ポイントがあるのも便利ではある反面、ゲームとしての楽しさというか緊張感を削いでるような……とか。
と、いうわけで。
いい感じにいいとこどりできていればよいのですが……できていますかのう……。
・前作からの反省
いろいろありますが、わかりやすいのが……
メニュー画面です。これが前作。
そして今作。
なにが違うのかというと、「セーブ」と「ロード」が分けられていることです。
実は前作でも、「セーブ」を選ぶことでこのように「ロード」することも可能でした。
しかし、プレイヤーにそんなことはわかりません。
「ロードしたいな……でもメニューにはセーブしかない……いったんタイトルに戻らないとダメなのかな……とりあえずまあいいか……」
みたいな感じで、「セーブ」を押してみたらそこで「ロード」もできるなんて思ってもいません。
だってそんなこと書いてないんだもん!
「セーブ/ロード」とでも表記すればよかったのですが、収まりが悪いので……今回は分けました。誤操作リスクもありましたからね。
うーむ、こうやって人は成長するんですねえ……。
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