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『対怪異アンドロイド開発研究室』を書くにあたり影響を受けたかも・参考にしたかもしれない作品リスト

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私の作品対怪異アンドロイド開発研究室が書籍化し、12月22日に発売いたしました!

さて。
なにか企画アイデアが浮かんだら、次はそのアイデアをどう発展させるかを練っていく必要があります。
そのため、私はさまざまな先行研究を漁ります。

本作の根幹となるアイデアは、「ホラーって主人公が怖がってるから怖いんじゃない?」「怖がらないキャラを主人公にしたらどうなる?」という思考実験にはじまり、
「だったらアンドロイドを主人公にしてしまえば恐怖心なんてのもなく、極地作業をロボットに任せるみたいに安全に心霊スポットの探索とかできるんじゃない?」という発想です。

同じようなことをすでに考えてる人もいそうだな……と思ったんですが、どうにもなさそうでした(星新一とかだったらもしかしたら似たようなのはあるかもしれません)(あったら教えてください)。
せいぜい『ヘルレイザー4』「遠隔操作ロボットでパズルボックスを解く」くらいなものでしょうか。

「SFホラー」というと、大抵はSF存在(ロボットや宇宙人)がホラー存在となって主人公を襲います。
これには逆に困りました。
よって、それぞれの分野ごとに研究し、複合させることになります。

どのような作品に影響を受け、どのような書籍を参考にしたのか。
覚えてるかぎり列挙して解説していきます。


・ホラー

実話怪談を読んでいると「もう少し踏み込んで調べて!」と思うことがしばしばあります。
一方、なにかおかしいと思いつつも怖いので踏み止まって放置してしまう……という気持ちも理解できますし、好きなバランス感覚でもあります。

「せっかくなら謎を追及して欲しい」「でも明かされすぎると興醒め……」そういう葛藤があります。
霊能者もリアリティレベルを壊しがちな劇物で、あまりやりすぎると「退魔ファンタジー」になってしまいかねません。
好奇心をある程度は満たしつつ、不気味さを残して不安な気持ちにさせる。そういうものを目指しています。

裏バイト:逃亡禁止
影響を受けた自覚がかなり強い作品です。
主人公の目的はあくまで「バイトを完遂し生き残る」ことにあるので怪異の正体にまで踏み込まなかったり、事件そのものは解決しなかったり、というか人類が完全敗北していたりします。
「主人公が生存する」という部分勝利のようなものは約束されているんですが、それはそれとして怪異の脅威や不気味さが除かれるわけではない構成がとても好みです。

戦慄怪奇ファイル コワすぎ!
ホラーモキュメンタリーに「癖の強いキャラクター」を合わせた先駆的な作品です。
主人公の工藤Dが「暴力」でホラー存在に挑んでいくさまは「せっかくならもっと踏み込んで調べろよ!」というホラーに抱きがちな思いに応えるものであり、思わず笑ってしまうギャグのような面白さがあります。
ですが、結果的には事件は完全に解決はせず敗北しているような結末になることも多いです。
ホラーをただ茶化すのではなく「格」が保たれるバランス感覚が好きな作品です。

ちいかわ
なんだかんだと可愛いマスコットキャラクターが主人公なので死んだり血を流したりみたいなわかりやすい悲劇的結末は起こらない……のに、そんなことが一切慰めにならない作風はどうすれば再現できるのか……。
「拾魔」編など実に完成度の高いホラーですし、主人公らに無限の食料を与えてくれる「湧きドコロ」が急に枯れてしまう話など、「世界の真実」が読者としては気になって仕方ないのにそこには踏み込みようのないキャラクターが主人公になっているという説得力がすごい。
コミュニケーションがとれそうでとれない怪異の描写も見習いたいものです。

裏世界ピクニック
小桜が好きなんです。研究者肌なんですが、ギャグ調ではなく怪異にガチビビりしているという造形が……。
もうおわかりですね。露骨に影響を受けてます。

来る
ラストの霊能者集結は露骨に影響を受けているのがわかると思います。
映画は他にもある気がしますが、この作品ほどわかりやすいのはないでしょう。

・SF

なかなかどうして納得のいくアンドロイドキャラというのは難しいものです。
「人間には擬人化という不治の病がある」という言葉もあるよう、人間は非人間存在を擬人化せずにはキャラクターとして理解できないからです。
私個人としては完全に無感情なアンドロイドが好みなのですが、それでは「キャラクター」として成立しづらく……。
かといって、非人間的に描きすぎるのも「嘘」だろうという思いもあります。
自律行動には「感情」に類する判断機構は必要だろうし、、アンドロイドが人間を模するものである以上ある程度人間的になるのはそりゃそうだよなあ、などとさまざまな葛藤があります。
そういった葛藤の落としどころを探るために影響を受けたり参考にした作品群です。

ORIGIN
無感情の人型ロボットを主人公にしつつも、漫画的にコミカルに描いているバランス感覚が見事な作品です。
特に「父」を殺した犯人、すなわち「復讐の相手」を知ったときの反応がよいですね。
機械に「感情」が発生する機序を真面目に考えていたり、ハッタリを効かせまくったSF設定が魅力です。

Y田A子に世界は難しい
基本的にはコメディで、SF部分はそこまで本気ではない……とは思うのですが、「アンドロイドは精密機械なのでメンテナンスが十分でないとわずが数年で稼働不能になる」という点に着目している点がよいです。
人間と微妙に噛み合わない会話や、ペッパーさんの「人工知能ってなんやねん。ただの知能でええやろ。生まれで差別するんか?」みたいな視点も面白く、その意味ではたしかにSFしています。

アイの物語
「ロボが人間になりたがるなんて偏見ですやめてください」という視点が痛快ですね。
「人型ロボットが役立つ現場ってなに?」ということは私も前々から考えていましたが、この作品でも「介護現場じゃね?」という答えが出されていて、せやろなあと思いました。
「AIが人間には理解不能な独自の語彙を発明する」というのも面白いと思ったのですが、『対怪異~』ではテーマからは外れる(SFに寄りすぎる)気がしたので不採用としました。

アイの歌声を聴かせて
「思いついたことを手当たり次第に試す」という挙動がAIらしくてよいです。
AI系モンスターにありがちなハッキング万能描写も、ハッキングじゃなくて(同じように自我に目覚めてる)AIの協同という設定になってるのも面白い。

未来の二つの顔
「AIの反乱」についてここまで真剣に考えてる作品が1979年の段階で出版されてるわけです。
だというのに、映画界ではこの作品の100分の1も頭使ってないような「AIの反乱」作品が未だに……。

・参考資料

以上はフィクション作品ですが、以下は現実の研究とかそんなんです。
とはいえ、現実にはまだ自律汎用のアンドロイドなんて開発されていないので、現段階での技術やら最先端の研究者の見解やら、そういったものを参考にしました。
かなり直接的に引用している本もちらほらあります。

日本現代怪異辞典
きさらぎ駅のような「異界駅」はかなり好きなモチーフで、『対怪異~』にも登場しているとおりです。
この本を読みながら「この怪異にアンドロイドならどう対処できる……?」というようなことを考えてました。

妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心
恐怖の構造
恐怖の哲学 ホラーで人間を読む
恐怖の作法 ホラー映画の技術
荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論
「ホラーとは……」「人間はどういうものに恐怖を覚えるのか……」といったことを考えるのにこれらの本を読みました。
「主人公が怖がってるから読者も怖いんだよ」みたいなことが書かれていたり、「ですよねー」と思いました。

強いAI・弱いAI
『対怪異~』の作中で「お片付けロボット」が登場しますが、これはこの本にあった「お片付けロボットには数兆円規模の市場価値がある」という話から来ています。
他にも、AIに意識のようなものが生まれるにはなにが必要か、など刺激的な話がされています。

柔らかヒューマノイド: ロボットが知能の謎を解き明かす
『対怪異~』の冒頭に「ドアノブを掴んで回すことができる」とありますが、これはこの本で書かれている従来型の硬いロボットではドアノブを回すことは非常に難しい、という話から来ています。
一方、「やわらかさ」を持っていると特に計算を必要とせずに身体の機能だけで容易くドアノブを回すことができます。
また、「人型ロボットを作る理由」として「構成論的研究」という意義があるという話もこの本によります。

アンドロイドは人間になれるか
「幽冥寒村」にてアリサが依り代になる展開は、この本にあった「アンドロイドは宗教指導者になりえる」という話から着想を得ています。

機械カニバリズム 人間なきあとの人類学へ
『対怪異~』の作中に出てくる言葉「現実は一よりは多く、複数より少ない」というのはこの本からの孫引きだったりします。

怪談に学ぶ脳神経内科
「怪談って科学的にはどういう解釈できるの?」という部分を詰めるために参考にしました。
実話怪談読んでてもよくありますよね、それって怪談じゃなくてなんかの疾患なんじゃないの? って不安になる話……。

意識はいつ生まれるのか 脳の謎に挑む統合情報理論
「意識」というものを定量的に測る統合情報理論について、『対怪異~』でも引用しています。

睡眠の科学
『対怪異~』作中の夢や睡眠の話はこの本の内容を参考にしてたりします。

完全探偵マニュアル Best
完全探偵マニュアル Worst case
探偵の現場
「共死蠱惑」に探偵が登場しますが、「実際の探偵ってどんな感じ?」というのを知るために参考にしました。

ロボットは涙を流すか 映画と現実の狭間
僕がロボットをつくる理由――未来の生き方を日常からデザインする
脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線
優しいロボット
生命知能と人工知能 AI時代の脳の使い方・育て方
他、いろいろ読みました!
まだあった気がしますが、そこまで影響がなかったりうろ覚えだったりするので割愛します。


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