鳴き砂が泣いて。
私は今いわきにいる。
福島県いわき市、映画『フラガール』の舞台として有名な福島県の沿岸部寄りの地域。
ハワイアンズスパリゾートがそのモデルとなった場所で、市内ではフラの衣装を抱えた学生達も見かける。学校にフラダンス部でもあるんだろうか。
映画『フラガール』は以前観たことがあって、フラガールメンバーの一人が父親に髪を切られるシーンと蒼井優の1人踊りのシーンがとても印象的。
実は私自身3年ほどフラダンスを習ったことがあって、まあ我ながら上手かったのではないかと思うし、楽しかったし、腰が細くなりそうな動きが多いのでまたやりたい。
そんないわき市の、名前すら私は知らなかった。
今回のいわきアリオス演劇部U30『わが星』に参加することになって、いわきってどこだろうと調べた時初めて知った。
フラガールの次に見つけた知ってるワードは「鳴き砂」。砂浜を歩くと砂同士がぶつかってキュッキュッと音がする浜で、日本で有数だという。それは聞いたことがあったし、いつか機会があれば見てみたいなあと思っていた。
もう随分鳴らなくなってしまったらしい。
昔はたくさん鳴ったらしいのだけど、12年前の津波で砂浜の形状が変わってしまったらしく、鳴き砂が見れる浜も減ったのだそうだ。
もう戻ることはないのかもしれない。鳴く砂たちは多くのものと一緒にどこかに流れて、いつか地層になるんだろう。
ぶつかって鳴る砂も、地層になってしまえばぶつかることがなくなって、鳴くことがなくなって、こうしてずっと変わってきたんだろう。
12年前、関西ではとても緩い揺れで、直近であったチリの大地震を引き合いに「チリみたいになるんかなぁ」と言った友達に対して「そんなわけないやん」と私は言った。
「そんなわけない」。10m近い水の壁に追いかけられて、何を思う暇もなく、防波堤を振り返るまもなく。
関西淡路大震災から、地震は火が大敵なのだと思っていた。
私は当事者ではないので、なにも分からない。
その地の人達の生活の変化も心境も、ニュースを見て、話を聞いて、新聞を読んで、わかったつもりでも絶対分からない。
映像を見ると目をつむってしまう。チャンネルを変えてしまう。テレビから離れてしまう。泣いてしまう。
当事者じゃないものでさえこうなるのに、テレビの向こうのあの人達に、何を思えというのだろうか。
3月11日。今日この日にこの場所に来れてよかったと思う。本当にたまたまだけど、このたまたまが無ければ私は3.11を考えるなんて、まだ先だっただろう。
「元に戻すことが復興なんじゃなくて、先に進むことが復興」
この地の復興に、今までよりもほんの少し、目を合わせることが出来たらと思う。
3.11 鳴かない砂に寄せて
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