見出し画像

2日目 12/19 函館

目覚ましが鳴ったのは10時10分。
小山はもう起きていたようで、こまめにチェックしているパチスロの本はとっくにカラーページを読み終わっている。
とりあえず歯を磨き、身の回りの整理をした。
家を出たときには11時ちょっと前だった。

家を出てすぐのところにBOOK OFFがあったので寄ってもらい俺の好きな落合信彦の本を二冊買い、ブランチとして昨日から目をつけていた「ラッキーピエロ」に向かった。
思ったよりボリューム万点で少しポテトを残してしまったことは残念だ。
食べ終わったときはすでに11時50分なっていた。
12時10分の船に乗る俺は急いでフェリー乗り場に送ってもらった。

フェリー乗り場に到着し、急いでチケットを買って、小走りに船へと向かおうと思ったその前に、先ほど買った本を小山にプレゼントした。

「じゃ、行ってくるは」

「おう、がんばれよ。気をつけてね。」

確かそんな内容の会話だったと思う。
気持ちが高ぶっていたせいもあってあまり覚えていない。
男の会話なんて所詮そんなものだ。

でもその言葉の中に込められた意味は深い。
なぜなら小山は3年前の春に同じ大学に入学し、大学生活を共にし、俺が旅を決意し準備する過程を一番よく見ていた友人であるからだ。

すばやく船に乗り込み、甲板へと出て小山を探した。

「俺は何をやっているんだろう。恋人じゃあるまいし。」

そう思っていると、ここから少し遠い駐車場から一台のインテグラが静かに動き出した。
小山は行ってしまった。

一人取り残された気持ちになりながら、しばらく見ることがなくなるであろう北海道をゆっくりと眺めていた。

2等客室には誰もいなっかった。
貸し切り状態の客室でゆっくりと荷物の整理をしていると睡魔に襲われ寝てしまった。

目覚めて気が付くと青森がもう見えていた。
悪天候のために30分遅れで青森に到着。

船を降りとりあえずヒッチハイクできそうな道路へと向かった。
その道路へ向かう途中、いよいよ長い旅が始まるという実感が湧いてきて、たまらず大声で叫んでしまった。

と、言いたいところだが叫ぶといっても良い言葉が思い浮かばず「イエーイ」とか「ホー」などと、使い方が間違っていると思われる言葉を叫んだ。

国道に出て早速ヒッチハイクしたがなかなかつかまらない。

国道に出てから約40分ほど、冬の青森の洗礼を受けた。
記念すべきヒッチハイク第一号となる車の運転手は、将来お坊さんになるために修行中の人だった。

その方に、弘前大に今年入学した3歳年下の従兄弟の修也の家の近くである弘前駅前まで送ってもらった。

今回のヒッチハイク旅は冬なので、さすがに野宿はできない。
そのため知り合いや友人の家に泊めさせてもらいながら、宿泊代を節約し九州まで行く予定である。
その記念すべき一人目が従兄弟の修也という訳である。

家から駅までは10分ぐらいと修也は言っていたが、実際は30分かかったようで、待ち合わせの15分遅れで修也は駅に到着。そして久しぶりの再会を果たした。

とりあえず修也の家に行き荷物を下ろし、夕食を買いに行った。
札幌では飲み会続きだったので居酒屋には行きたくない。そんな要望を聞いてもらったため、「あかねちゃん弁当」で夕食を、コンビニで酒のつまみを、そして自動販売機でビールを買って修也の家に戻った。

3年も会っていない2人には積もる話が山ほどあり、そのため会話が弾んだ。気が付くともう12時を回っていた。

4時から新聞配達のアルバイトがある修也を先に寝かせるため、部屋の電気を消し、電気スタンドの明かりだけにしてこの日記を書いた。
ふと横を見ると修也の寝顔が見える。

その寝顔は小学生の頃によく我が家でしたお泊まり会の記憶を蘇らせ、そして眠気に襲われるまで俺はそれを味わっていた。

(終わり)


↓音声配信を始めました。よろしかったら、登録お願いします!
マーシーの旅な話

Apple Podcasts

Spotify

Google Podcasts

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?