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相互評価の効率的な数値化

冒険家の皆さん、今日もオアシスの焚き火のそばで羊の丸焼きにかじりついていますか。

さて、この記事では効率的な評価の難しい学生同士の相互評価を、どのように行うかについて書いてみたいと思います。

これは先週のハナキンで、僕が思いついたことに付き合ってくださった皆さんのおかげでもあります。まずは皆さんにお礼を申し上げたいと思います。

【相互評価が必要な理由】

本題に入る前に、なぜ学生同士の相互評価が必要なのかについて簡単に書いておきます。

学生同士の相互評価が必要な理由を一言で言ってしまうと、「21世紀において必要とされている創造性を伴うテストをグーグルフォームなどの自動採点では出題できないから」です。

Google フォームなどでは、例えば正しい漢字を選ぶテストや文法のテストなどは非常に効率的に行うことができますが、学習者が自分で文を作るようなテストは自動的に採点することができません。そして社会はますます効率化が進み、反転授業や学習管理システムなどを使えば一人の教師が100人とか200人の学習者を受け持つこともできるようになっています。

このような時代において、機械的な出題だけにとどまらない21世紀にふさわしい評価を行うには、学習者同士の相互評価を取り入れなければ教師一人で大量の学習者にきちんと対応することはまず不可能です。また、学習者同士の相互評価も教師による評価と遜色がないという研究結果もいくつも出ています。(Arnold, 1981; Orpen, 1982; Falchikov, 1986 など、参考文献の部分をご覧ください。)

【評価担当表の作成】

そして、ここからがやっと本題なのですが、僕が試してみた効率的な相互評価の方法をご紹介します。

まず、相互評価の準備として、誰が誰を評価するかの担当を決めなければなりません。先週のハナキンでは誰が参加するか事前にわからなかったので、Google スプレッドシートの共同編集機能を使って、この担当表を作りました。それがこちらのリンクです。
https://bit.ly/3jLBqkW

名前が本名ではなく「秘密の名前」となっているのは、どの学生がどの学生の評価をするのかが分かってしまうと、不正が起こるかもしれないからです。この辺りは皆さんのその状況によって本名にできるのならいいと思います。

この表の一番左側には評価する人の名前が書いてあり、右にはその学生が誰を評価するかが書いてあります。この場合は一人で四人の学習者を評価することになっています。表を見ればお分かりだと思いますが、評価する学生の名前の下にある人の名前を自動的に入れているだけです。Excel などのスプレッドシートでは「=A21」などとオートフィルを使えば、こうした評価担当の表は2秒で埋めることができます。

評価する学生の名前と評価される学生の名前の間に、「あなたの成果物へのリンク」という欄もあります。ハナキンではその場で集まっていただいた方に実験として参加してもらっただけなので空白になっていますが、もちろん授業で相互評価をする時にはこの成果物こそが評価の対象になるわけですから、ここは空欄にすることができませんよね。(もちろん成果物以外の評価方法もあっていいと思います)

【相互評価の入力】

それではここからが学習者による相互評価です。

評価入力フォーム
https://forms.gle/MWEJLoK4jaergnGa9

こちらのリンクは、金曜日に使ったGoogleフォームのコピーを自動的に開くことができるものです。自動的に作成されたコピーは皆さんのもので、僕はその回答などを見ることはできませんので、安心してお使いください。

ご覧になると分かるように、このフォームでは一人ぶんの評価しか入力することができません。4人ぶん評価する時は、これを4回使わなければいけないわけですね。もちろん一つのフォームで4人分入力できればいいのですが、そうすると後で述べるピボットテーブルによる分析のところで面倒くさいことになってしまうので、現状ではこのようにしています。Google スクリプトなどをもう少し勉強したら、このあたりは解決できるものと思いますが、ここではそうした勉強の必要のない誰にでもできる方法をご紹介することを目的としています。

【ピボットテーブル】

学習者による評価の入力が終わったら、次はいよいよそれをピボットテーブルで数値化する番です。慣れていない人にはとっつきにくいかもしれませんが、2回目からは非常に簡単で、スクリプトなどを書いたりする必要もありませんから、是非安心して取り組んでみてください。

まず最初に、分析する表を開きます。これは入力フォームの回答のタブからGoogleスプレッドシートの緑色のアイコンをクリックすれば、表を自動的に作成することができます。ハナキンで試した実際のデータがこちらです。

「結果の一覧表」
https://bit.ly/3pl0n7S

ピボットテーブルを使ってデータを分析する前に、まずどのデータを分析するかの範囲を指定しなければいけません。面倒くさいのでここでは左上のコマをクリックして全部のデータを選択してしまいましょう。その次にメニューの「データ」から「ピボットテーブル」を選びます。そうすると、「新しいタブを作りますか、既存のシートを使いますか」という質問が表示されるので、どちらでもいいのですが、ここでは新しいタブを作成する方を選んでください。

そうすると新しいタブが表示されて、行と列だけ表示されていて、何も分析されていない空白のピボットテーブルが表示されます。ここではまず右側の「ピボットテーブルエディター」という部分を見てください。ここで、どのように分析するかを指定します。

今回は列の部分に「評価する学生の名前を選んでください。」を入れてください。そして「数値(value)」の欄に「その学生を5段階で評価してください。」を入れてください。

そうそう、最初は数値の合計が表示されるものと思います。この場合はもし評価すべき学習者がサボっている場合、4人ではなく3人や2人からの評価の合計になっている可能性があります。したがってここでは「平均」(average)を選びましょう。これも右側の「ピボットエディター」の中で関数を「Average」に指定するだけでできます。

こうするだけで学生同士の相互評価の数値化が効率的にできるようになります。この数値を学習管理システムに入力するのは、今のところ僕は手でやるしかなさそうですが、この辺りももう少し改善できるといいですね。

この手順は言葉で説明されたものを読むよりも実際の画面を見るほうが簡単だと思いますので、よろしければこちらの YouTube 動画もご覧ください。

繰り返しますが、21世紀に必要な能力は 、Google フォームなどで自動的に採点できるようなものではありません。そして学習管理システムや反転事業などの普及によって、一人の教師が何百人もの学習者を担当しなければならない時代は、すぐそこにまで迫っています。次の時代を生き残るためにも、学習者同士の相互評価を効率的に数値化するスキルは、教師にとって絶対に必要になります。こうした危機感を共有している皆さんに、今日の僕の提案が少しでもお役に立つことができれば嬉しいです。

そして冒険は続く。

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【参考資料】

Arnold, L. (1981), Use of Peer evaluation in the assessment of medical students, Journal of Medical Education, 56, pp.35-42

Orpen, C. (1982), Student versus lecturer assessment of learning: a research note, Higher Education, 11, pp.567-572.

Falchikov, N. (1986), Product comparisons and process benefits of peer group and self assessments, Assessment and Evaluation in Higher Education, 11, pp.146-166.


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