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エンジニアのための特許の取り方

こんにちは。Q&Qのあどにゃーと申しますにゃ。

エンジニアの憧れ、発明者としての誉れ、技術特許を取得するためのアイデアの思いつき方について紹介したいと思います。

筆者は大手メーカのプロジェクトリードの仕事をしています。リード業務になって長いため、研究開発や設計開発として技術の最先端に触れているわけではないです。そんな筆者ですが、毎年1個は特許を出願しており、すでに権利化された特許も複数あります。さらに言えば、HW関連の特許だけでなく、まったく専門性のないSW特許やUI系の特許も取得しています。Q&QについてもTreeデータ構造による機械学習やグラフUIの特許を出願しています。

今回は、研究者のように専門性がなくても特許を取得できる方法を伝えます。非専門家で特許をコンスタントに取得している人は少ないので、アイデアの思いつき方のHow toは希少な記事かと思います。大学の研究テーマを自分で考えないといけない研究室の方にも有効かもしれません。

対象となるスコープ

特許のアイデアの出す方法は大きくわけて2つあります。1つ目は専門性を研ぎ澄ますやり方です。これは、研究開発職や優秀なエンジニアが取る手段で、最先端の研究論文を読み込み、その先の課題の解決策を見つけることで特許を取得する手法です。この方法は高い専門性が必要なので今回は扱いません。今回は、2つ目の簡単な基礎知識を使うやり方です。開発から離れた筆者でもコンスタントに特許を取得できる方法なので、専門性は不要です。

対象スコープのまとめ
✗:専門性を研ぎ澄ますやり方
◎:簡単な知識でできるやり方

特許の思いつき方1 : 基礎知識

2つの領域の基礎知識があれば十分です。入社1年目で身につくレベル感だと思います。

技術系
システムのブロック図を想像できるレベルの知識があれば十分です。例えば、自動販売機を例にすると、コンピュータ、メモリ、冷熱制御、スイッチパネル、駆動装置で動いている…という知識レベルがあれば十分です。高校生でも理解できるレベル感ではないでしょうか。

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企画系
プロダクトの不便な部分を思いつけるレベルの感度があれば十分です。自動販売機を例にすると、「コロナも流行っているし直接手で触るの嫌だな」というレベル感でOKです。普通に生活していて気づけるような疑問や不満です。ふとした疑問スキルは、小学生の方が疲弊した大人より優秀だったりする場合もあります。あまり疑問を持たない人はQ&Qで鍛えてみてください。

特許の思いつき方2: 脳内に2人降臨

非サイエンスなタイトルですが、要するに二つの視点を持って考えるということです。アイデアを考えるときには商品企画、エンジニアの2人を脳内に降臨させ会話させます。具体的な方がわかりやすいと思いますので、自動販売機の新しいアイデアを検討するという例を続けます。

商品企画とエンジニアの脳内会話
企画「コロナで自販機のボタンさわりたくない。なんとかならない?」
技術「超音波センサなどの近接センサでボタンに触れず操作可能だね」
企画「すごい。他に触る操作ってあるっけ?」
技術「ボタンを押す、お金を入れる、缶ジュースを取り出すの3つかな」
企画「お金いれるとこも触れたくないな」
技術「最近はNFC決済やBuletooth決済もあるから触れなくて済むよ」
企画「そもそもボタンを押す、お金を入れる、缶ジュースを取り出すってステップ多すぎない?面倒なんだけど。」
技術「確かに。近接センサのボタン操作と自動決済とかを組み合わせてステップ数を減らしたりできるかも」
企画「スウェーデンとかだとチップ手に埋め込んで決済してるよね」
技術「ああ、手にNFCチップ埋め込んで非接触で決済もいけるね」
企画「あと、しゃがんで缶を取り出すのも最悪だね」
技術「取り出し制御に重力は使えなくなってエネルギー効率は悪いけど、上に押し出す仕組みにはできそうだね」

こんな感じで脳内で進めます。ステップのイメージとしては下記です。脳内に二人の人格を降臨させることと、QQの下図のように脳内会話を構造的に捉えることが重要です。

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思考のステップまとめ
1. 脳内に性格の違う2人を降臨させる
2. 技術者側の視座でシステム構成を思い浮かべる
3. 企画側の視座で例えば入力系で今ある不満をつらつら思い浮かべる
4. 企画の不満を技術者視点で技術解決案を出していく
5. 解決案に対してさらに企画視点で不満をつらつら述べていく
6. 技術視点でさらにその不満を解決していく

上記で自販機について特許をまとめるなら、下記のような形でしょうか。

タイトル:接触不要な自動販売機の開発
概要:従来の自動販売機は商品購入時にボタンを押下し、お金を入れて缶を下から取り出す必要があった。操作を簡易化する従来手法にはスマホとのBT連携やNFCタッチなどがあったが、根本的な解決には至っていない。本発明では、....(続く)

即席5分で考えたアイデアでは流石に浅いですが、自分の専門領域でやれば、課題をある程度は認識しているので簡単に取得できるレベルまで掘り下げることができると思います。自販機についても、この延長で企画の不満と技術者の実現性の妄想サイクルを数階層ほど繰り返せば、特許出願まで持っていくのは難しくないと思います。

特許の思いつき方3: 課題発見力

特許のアイデアを出す際に、使っている能力は下記になります。

必要な能力
企画・技術の2つの視座を獲得すること
既存の仕組みを疑問視すること(企画能力)
最近のテクノロジー動向を知ってること(企画能力)
実装方法を想像すること(技術能力)
構造的に考えること(技術能力)

エンジニアの皆様は、実装方法・技術動向・構造化については、知識は十分あると思います。重要なのは、世の中の既存の仕組みを疑問に思う力です。ホリエモンは社会の仕組みにいつもキレてる印象がありますが、あの能力が特許を取る上では超重要なわけです。

課題発見力は、日常の生活やニュースで疑問に感じたことに自問自答を繰り返し、これっておかしくない?と考えるクセをつけておくことで向上します。筆者は自問自答・他問自答を繰り返すQ&Qで身につけた能力です。

特許の思いつき方: まとめ

特許の取り方には2つあります。1つ目の専門性を研ぎ澄ます方法です。これは、1000人に1人のスーパーエンジニアになる道です。専門性に非常に自信のある方でないと、かなり難しいと思います。

2つ目は、エンジニアと企画の2つの視点を持つ方法です。これはエンジニアとしては10人に1人くらいの能力で十分です。なぜならエンジニアの中で企画視点を持っている人が100人に1人しか居ないので、結果的に1000人に1人の能力を発揮できているからです。こちらは、それぞれの能力はあまりいらないので比較的簡単な方法だと思います。

後者の方法は、それぞれの能力はそこまで高くなくても到達できるため簡単にマネすることが可能だと思います。ホリエモンも多動力で複数能力をかけ合わせて希少性を出そうと言っています。それぞれの能力はそこそこでも、能力を掛け合わせられることで希少性が生まれ、考えるアイデアはキラリと光るものになります。

余談

出願を個人でやる場合、特許出願までに100万円程度費用がかかります。弁理士さんを雇ったり、類似特許を調査したり、工数も大変です。出願してから権利化されるまでに数年かかりますし、権利の維持費もかかります。また、権利化したとしても大抵は誰も使わないニッチな権利になることが多いです。このため、会社で取得するのがベストだと思いますが、個人で取得される方はご留意ください。

以上、最後まで読んでくださってありがとうございます。

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