見出し画像

Web化できない究極のカタログ 「サンプル帳」 その2 企画手順

こんにちは!クリエイティブディレクターのドナリ―です。今日はわが社が長年取り扱っている究極のカタログ 「サンプル帳」について、第2回のご紹介です。

「サンプル帳とは何か?」については前回お知らせした通りなんですが、まずは再度、実物を見てもらいましょう。

画像1

こんな感じで、壁材や床材などの実物をカットした素材チップが一面に並べられています。素材を貼る前は、当然ながら台紙に「枠」が印刷されているだけ。

画像2

ここに後から素材チップを貼っていくので、マネジメントをしっかりしないと「貼り間違い」が起こります。また、貼るべき素材が「足りない」「大量に余った」なんて事態にもなりかねません。

こうした事情から、貼り付けする前の「企画」の段階が、サンプル帳制作においては極めて重要になっています。主な企画要素は以下の3つです。

1.チップサイズを決める

素材のチップが大きすぎるとコストが上昇し、小さすぎれば素材をイメージ出来なくなります。材料コストを考慮しながら、なるべく大きくなるよう設定します。

2.製本スタイルとページ数を決める

こちらもコストに直結する部分なので、見やすさとコストを考えながら最適解を決めていきます。

3.発行部数を決める

最後に発行部数を決めることで、貼り付けに必要な素材チップの総量が算出され、素材原価や貼り付け作業費の見積もりが可能になります。「特殊な印刷物だから、せいぜい数十部しか作らないだろう・・・」と思われるかも知れませんが、実は「サンプル帳」の発行部数は1万部以上になることもあります。サンプル帳のコストは以上の3段階の要素で変動しますが、基本的にコストのボリュームは以下の順となります。

チップ貼付代>素材チップ+カット代>印刷製本代>企画デザイン代

冊当たりの単価が高騰してしまうと制作部数が減ってしまい、サンプル帳を発行する意義が喪失してしまうので、「企画段階」は極めてシビアに進めばなりません。

こうした「企画」の段階を終えた後、やっとデザイナーらしい仕事の段階になります。サンプル帳を実際に使う「設計者」のニーズ(以下参照)に見合い、かつ素材の持ち味を最大限に活かす資料となるよう、デザイン処理を工夫します。

【設計者のニーズ】

〇プロ目線で仕上がりイメージを確認したい

〇コストや納期を知りたい

〇サイズや加工等の対応制限を知りたい

この3項目のうち、特にデザインに依存する部分が大きい「仕上がりイメージ」については、デザイナーがその都度、色相や彩度などの基準で選びやすくグルーピング/配列を行います。

以上のように、「入稿したら大半の作業が終わる」の通常の印刷物と比較すると、サンプル帳は「入稿した後の段取り」に多くのノウハウが必要で、弊社の重要なナレッジの一つになっています。 (ドナリ―)