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ちょっと特殊なデザイン「サンプル見本帳」について、業界のプロ向けに語ってみました。

こんにちは。女性デザイナーのYです。皆さん「広告宣伝のデザイン」と聞いて何を連想しますか?テレビCMや新聞広告、雑誌広告、WEBの広告・・などなど幅か広いのですが、今回はそんな多種多様な広告の中でも特殊なデザインに分類される、「サンプル見本帳」について紹介します。一般の方向けの記事は過去に一度書かせて頂いたので、今回は様々な素材商品を扱うプロの方に向けて、「サンプル見本帳を制作する上で何が必要になるのか?」「一般的なグラフィックデザインと何が違うのか?」まとめてみました。以下の項目順にご覧ください。

【素材見本帳に必要なもの】1.注文者、受注者双方のユーザビリティ

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サンプル見本帳は、商品の特性や、メインユーザー(ターゲット)がどのように商品をセレクトできると助かるかを踏まえ、商品を選びやすく、注文しやすいレイアウトやページ構成が基本です。
「必要な情報がわかりやすく表示」され、「検索性の良い」機能的なデザインにすることが大切。また、注文をするユーザーだけでなく注文を受ける方も、多数ある商品の中から瞬時に要望の商品を検索できることも必要です。

商品にもよりますが、サンプルを主体としつつも、インデックスの使いやすさ、品番やスペックの表記の見やすさ、分かりやすさはもちろんのこと、トラブルにならないよう注意事項も適所に配置してお知らせすることも考慮しましょう。

【素材見本帳に必要なもの】2.商品の特徴・魅力をより良く伝えること

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商品の価格帯やターゲット、狙いたい商品イメージを踏まえ、商品をよりよく魅せるための「世界観作り」はとても重要です。

商品によってその価値が、色柄バリエーションを多く見せた方が伝わりやすい場合もありますし、色柄バリエーションを絞って雰囲気を重視した方が伝わりやすい場合もあります。
サンプル見本帳は、商品について説明する役割だけでなく、デザイン次第で購買意欲や商品価値にも影響を与えるツールなのです。
また、サンプル(カタログに貼り付ける実物の見本素材)を並べ、説明文を添えるだけでは、なかなか商品の良さや他の素材との違いが伝わらないこともあります。


その時に事例写真(実際に商品が使われているシーン)の掲載は効果的ですが、事例がない場合はイラストや画像の合成でイメージを伝えることも。
その際は商品が目指しているイメージ、ユーザーの求めている使い方やシーンを想定し、魅力的な見せ方を考えます。

カタログ実制作前に、制作を依頼するディレクター、デザイナーと商品の特性、ターゲット、予算などをしっかり共有し、目的に合ったデザインで作成することが大切です。

【素材見本帳に必要なもの】3.素材の特徴を考慮すること

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柄のある素材など、小さいサイズだと絵柄が全く伝わらない場合があります。例えば、白い素材と思って注文したら柄物だった、、など、トラブルの原因にもなり兼ねません。

できるだけわかりやすいサンプルサイズを選ぶことも重要ですが、貼り付けたサンプルでは伝わりきらない場合、縮小サイズで全体がわかる絵(写真)を添えたり、施工事例やイメージ写真を載るなど、柄情報の補足が必要です。

【サンプル見本帳に必要なもの】4.サンプルサイズとレイアウト

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サンプル見本帳は素材の実物を見ていただくため、元の素材をカットしてカタログに貼り付けるわけですが、もともとの素材自体の大きさがあるので、素材の特徴を損なわないことだけでなく、できるだけ無駄が出ないように、取り都合を考慮してサンプルサイズを検討します。

例えば、元の素材が1㎡であれば、5cm角のサンプルサイズを貼るとすると、400枚分、2cm角のサンプルだと2500枚分になります。中途半端なサイズだとあまりが出て無駄(=制作コストUP)になることも。
サンプルサイズが大きい方が、見る方は実物をイメージしやすいですが、ページ数、元素材の大きさ、レイアウトの美しさ・見やすさ、特徴、そして制作コストの考慮が必要です。

各素材や制作工程については売り手ではないとわからないことが多いので、ADPではサンプル見本帳の制作依頼元(クライアント様)に希望や情報を伺った上で、効率的・効果的なサンプルサイズやレイアウトのご提案をさせていただいて調整することもあります。

【素材見本帳に必要なもの】5.背表紙デザイン

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個人ユーザーも企業が使う場合でも、サンプル見本帳は使用しない時カタログ棚(本棚)にしまっておきます。
サンプル見本帳の種類・使われる業種にもよりますが、ユーザーが業者さん向け(プロ・職人向け)であることが多いため、たくさんのカタログ・資料の中から、必要なサンプル見本帳をさっと手にとっていただけるようなデザインにしたいですね。
また、競合他社の同種カタログを並べてカタログ棚に並べることも想定されますので、背表紙でブラント名(企業名など)や商品について直感的にわかること、また自社の商品が他より魅力的に見える事も重要です。
多数のサンプル見本帳やカタログのシリーズがある場合は、ロゴマークの位置や文字レイアウトなど、各冊子で共通フォーマット・ルールを設けます。これによって、検索性を上げるだけでなく、ブランド力のアピールにもつながります。

【素材見本帳に必要なもの】6.冊子の構成・形状

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サンプル見本帳は、普通の印刷のみの本と異なり、素材を貼る分、嵩張ったり重くなったりします。どのような冊子にするか、商品の特性やユーザーの使い勝手、予算などを考慮して製作することも大切です。

普通に括っていくページ構成が良いか、観音開き、蛇腹折り、またはリング綴じでページを外せるようにする、取り外せる別冊を貼り付ける、などなど、手法は様々。ベースとなる紙の種類・厚みも重要で、何度見返しても壊れず使いやすい仕様にしたいところです。

変わった形状・加工はその分予算がかかりますが、それ以上に形状が使い勝手や商品の魅力を伝えるのに有効なこともありますので、製作のプランニングの段階で、予算と合わせてカタログ製作のプロにご相談しましょう。

【素材見本帳に必要なもの】7.WEBやその他媒体との連動

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サンプル見本帳は実物を見ていただくために必要ですが、掲載しきれない詳しい商品情報や施工写真、全体像、イメージ写真などをホームページを見ていただきたいこともあります。
逆に、ホームページからサンプル帳や大きめのカットサンプルを請求して、実物を確認いただくケースもあります。

サンプル見本帳を単体で考えるのではなく、商品のホームページやその他カタログ、広告(チラシ・web広告)、SNSなど、様々な媒体との連動を考慮した効果的なプランニングをすることも大切です。

ホームページの情報を充実させることは非常に有効ですので、サンプル見本帳に二次元コードを掲載してホームページの該当商品ページへ誘導したり、サンプル見本帳をwebで見られるようにした「WEBカタログ」のページの制作もおすすめです。またSNSで商品情報を発信し、カタログ請求に繋げる、など多角的なアプローチをすることで、より商品の魅力を発信できます。

【結 論】サンプル見本帳制作は経験・ノウハウが必要

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いかがでしたか?上記のように、普通の紙面への印刷のみで完結するカタログやパンフレットと異なり、サンプル見本帳制作には様々な留意点があります。
また、多数の商品を掲載するため、納期がある中短時間で間違いなくレイアウトしていくには技術や経験で差が出てくるツールです。
依頼をする際は、デザイン事務所や制作会社に過去のサンプル見本帳制作事例や経験を確認することをお勧めします。(Y)

※過去の一般向け「サンプル見本帳」記事はこちらです。