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キースの言葉を贈ってくれた彼のこと

今から30年前
ローリング・ストーンズが初来日を果たした。それまでずっと待望されていたけれど、一度も実現していなかった来日。それがとうとうあのタイミングで叶って、東京ドーム10daysというとんでもない大規模公演が実現した。

忘れもしない1990年2月14日、大雪の東京ドーム。歴史に残る、ストーンズ初来日公演の初日。

当時高2だった僕は、同じクラスの親友と一緒に、チケットがないままに東京ドームに向かい、水道橋の駅からドームに渡る橋の上で出会ったダフ屋さんに声をかけた。
もしかしたら「かけられた」のかもしれないけど、その辺の記憶はもう定かではない。

ダフ屋さんが
「兄ちゃんたち、若いから安くしてやるよ」と言って、結構マケてくれた金額でチケットを売ってくれた。

バレンタインデーに、男がふたり。しかも大雪の中。そんな僕らに同情してくれたのか、それとも早くノルマを売って家に帰りたかったのかもしれないけれど、あのダフ屋さんの言葉からは確実に優しさが伝わってきて、僕らは「ありがとうございます!」と感謝感激大感謝を伝えたような記憶がある。

優しいダフ屋さんのおかげで運よくチケットを買え、観ることができた歴史的なライブ。
あの時の興奮と感動は、今でもハッキリと覚えている。

ステージが爆発してキースがイントロ弾きながら出てきた時の衝撃。今見ても鳥肌が立つ。

後で知った話なのだが、あの日のライブ中、ミックは「日本は俺たちの最後の到達点なんだ。ようやく辿り着いた」と言って泣いていたらしい。そしてキースも、実は泣いていたという。

当時のミック・ジャガーとキース・リチャーズは、ともに46歳。

月日は流れて、2020年。僕はとうとう、あの時のミックやキースの年齢を上回ってしまった。
その間、自分で始めたクラブを20年間ずっと続けてきた。そして2020年に、そのクラブから自分はとうとう離れることとなった。

僕が勝手に何かを始め、そして不本意ながらその何かが終わってしまったその間も、ストーンズはまだ、ずっと続いていた。

今、ミックとキースは77歳。それでもまだ、ローリング・ストーンズはずっと転がり続けている。
結成58年目の今でもまだ、ただひたすらカッコよく、転がり続けている。

なのに自分は⋯
と、そんなことを思っていた誕生日の夜。あの大雪の日に一緒にストーンズを観に行った彼から、メッセージが届いた。

無理して、無茶せず、貴方の道を
浮き沈みがなければ、違いがわからない。
味気なくて、ただ平坦で、心電図を見てみなよ。波形が平坦になったらおしまいさ。あんた死んでるってことだぜ

(キース・リチャーズ)
何より心身に気を配り、気をつけて。
"お楽しみはこれからだ"

嬉しかった。彼が贈ってくれたキースの言葉を、ずっと見返してた。僕の近況をわかった上で、キースのこの言葉を選んでくれたのだろうか。
きっとそうなんだろうな。あっきー、ありがとう。

2020年、自分の身にはいろんなことが起きた。
クラブから離れた時、それまで「近くにいる」と思っていた人が、何人も「ささーっと」いなくなった。
びっくりするほどあっけなく、波が引くように離れていった。

あぁ、その人たちにとって自分は単に「付き合いのあるサッカークラブの人」でしかなく、ただそれだけの利用価値でしかなかったのだと、僕は初めて知ることになる。

その反面
「クラブを辞めようが関係ない、君の味方でいる、そばにいる」と言ってくれた人も、何人もいた。
それまでに僕が気づいていなかった、人の優しさを知ることにもなった。
自分にとって大切な人がこんなにもいてくれることを、不覚ながら初めて知ることができた。

今年はコロナ禍のせいで世界中が大変な一年だったけれど、コロナだけでなく、自分にとっても激動の年になってしまった。
自分の環境も、自分の周りもガラリと変わった。

けれど、変わらずにいてくれた人たちもいる。こんな僕を信用し、信頼し、味方になってくれた人たちがいたことに、僕は本当に救われた。

その人たちのために、僕は生きていきたいのだと気づいた。

もうすぐ訪れる2021年。自分と、自分の周りにいる人たちをまず幸せにしたい。

コーチユニオン「REVERSE」もその一環だし、さらにスポーツの世界に留まらず、もっともっと、社会の渦の中へコミットしていければとも思っている。

自分の周りだけでなく、社会に顕在する「あしたが見えない」人たちの「あしたのため」にも、2021年は積極的に動いて走り続けたい。恥をかくこともあると思うけれど、もう恥は充分にかいた。今さら、世間体なんて気にしていられない。

僕も、まだまだ転がり続ける。平坦な道でのんびりするのは、もうちょっと先延ばしだ。

皆さん、よいお年を!

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