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最初のコーチと最後のコーチ。最初で最後のコーチ

最初のコーチ

自分は昨年までずっと、幼稚園児や小学生のクラブでコーチをしてきました。

幼稚園児や小学生に携わるということは、当然、そのほとんどの子が「うちのクラブ」でサッカーを始める子ばかり。
つまり、彼ら彼女らのサッカー人生において、僕は「最初のコーチ」になるわけです。

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これは当時からよく言っていたことだけど、最初のコーチということは、とても責任重大ですよね。
「サッカーの第一印象」がそこで決まるわけだから。

「俺はこの子達にとって最初のコーチ。だからヘタなことはできない」って、ずっと思ってた。

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最初のコーチが人として魅力がなかったり、サッカーの楽しさや肝を伝えるのが下手だったり、サッカーの自由さを伝えられない人だったら。その子はサッカーが嫌いになって、もう二度とサッカーをやらなくなるかもしれない。

その反面、最初のコーチがキッカケで(もちろんそれ以外にも要因はたくさんあれど)サッカーが大好きになって、中学・高校、いやそれ以降も⋯大人になってもずっと、サッカーを続けてくれるかもしれない。

だから、最初のコーチって本当に責任重大なんです。

ジュニア年代でコーチをしている人で、自身が「この子達にとって最初のコーチなんだ」という自覚をまだ持ったことがない人は、たぶんまだまだ多いのではないかと。自分の週末の居場所のためにコーチしてますって人はよく見かけるし、ただただ、与えられた学年での勝ちにこだわるだけの人もいる。

その方にとっては毎年毎年新たな子どもたちが入ってくるけれど、入ってくる子どもたちにとっては、そこで出会ったコーチは人生でただ一人の「最初のコーチ」だから。

今からでも遅くないので、本当の意味で「最初のコーチ」になりましょう。

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最後のコーチ

紆余曲折を経て、僕は今、外部コーチとして高校サッカー部(男子)に関わっている。

そしてこれは最近になってようやく気づけたことなのだけど、
高校生のコーチをするということは、ひょっとしたら、彼らのサッカー人生において「最後のコーチ」になるかもしれない、と。

多くの高校生たちは、高校での三年間を最後に、サッカー人生を終える。
もちろん、大学でもサークルで趣味としてサッカーしたり、個サルに参加したり、大人になっても趣味として草サッカーはするかもしれないけれど

大学でも体育会部活に入り本格的に続ける、Jリーガーになる、海外に挑戦するというような「アスリートとして、チームに所属して競技として続ける選手」の数に比べたら、高校を最後に第一線でのサッカー人生を終える選手の方が、その数は圧倒的に多い。

だから、そのほとんどの選手と関わっている自分は、彼らのサッカー人生において「最後のコーチ」になるということだ。

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小さい子どもの頃から長く続けてきた彼らのサッカーの、最後の三年間。
多くのコーチから引き継がれた、それぞれの選手のサッカー人生の最後を預かることになる。それはとても光栄で幸せなことだし、魅力的な仕事でもある。そしてもちろん、とんでもなく責任重大。

「最後の三年間が、一番つまらなかった」
「最後の三年間で、サッカーが嫌いになった」

とならないように。

サッカーの楽しさや奥深さを少しでも伝えてあげて、彼らが第一線を退いて大人になった後も、サッカーを趣味として一生続けてくれるように。
その時にサッカーを本当に知っているおじさんであってほしいし、自分の子どもにも、その楽しさを伝えてくれるような大人になってほしい。

「最後の三年間が一番楽しかったし、サッカーがもっと好きになった」
「最後の三年間で、俺は一番うまくなれた気がする」

となってほしい。そして

「もう選手として本格的には続けられないけれど、でもサッカーは大好きだから、趣味として一生続けたい」
っていう状態で、彼らを送り出してあげたい。

それが、彼らにとって「最後のコーチ」になる自分に課せられた最大にして唯一の使命なんだろう、と思う。

だから「最初のコーチ」と同じくらい、ひょっとしたらそれ以上に「最後のコーチ」って責任重大なんです。
「もうサッカーなんていいや」なんて思わせてしまったら、それこそコーチ失格なわけで。

その反面
高校のこの時期にサッカーの楽しさや奥深さを新たに知ることで、本当なら高校でサッカーを辞めるつもりだったのに
「もっと上のレベルでやってみたい」「大学でも続けたい」「海外に挑戦してみたい」というような「その気」になる子が出てくれたら、それはそれで本当に嬉しいことで。

つまり最後のコーチになるはずだったのに「最後じゃなくなった」となることも、僕らにとっては幸せなことなんですよね。

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最初で最後のコーチ

最初のコーチと最後のコーチで思い出したけれど、5年前まで、僕は高校女子のサッカー部でもコーチをしていました。
その高校女子サッカー部は、高校で初めてサッカーをする、という子の方が多かった。

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人生で最も輝いていてイケイケな年代であるJKが、高校で初めてサッカーに挑戦するってめちゃくちゃロックだし、最高にカッコいいよね。
そんな特性があったからこそ、僕は11年間もそこでコーチを続けられたのだと思う。
そんな子たちと一緒にサッカーするのが、とても楽しかった。

当然あの子たちは、男子以上になおさら、当たり前のように高校でサッカーは辞める。
11年間で関わった子はたぶん200人くらいだと思うけれど、大学でも部活でサッカーを続けた子は数えるほど。

つまりあの当時のほとんどの子にとって、僕は「最初で最後のコーチ」だったわけだ。

サッカーに挑戦した3年間で、唯一のコーチ。
彼女たちが教わったサッカーは、すべて僕が教えたサッカーということになる。そう考えると、ちょっとおそろしい。

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最初で最後のコーチ。
これは「最初のコーチ」と「最後のコーチ」よりも強烈にズシリと響く、なかなかのパワーワードだ。

正直に言うと、当時の僕に、この感覚はなかった。
「俺はこの子達のサッカー人生において、最初で最後のコーチなんだ」という自覚があれば、もっともっと、彼女たちを楽しませてあげられたかもしれない。

今、当時関わった彼女たちに全力で謝りたい気分になっている。
会ったら土下座するかもしれない。

だからこれ読んだ当時の女サカのみんな、今度飲みに行こ(奢る)

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