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大きなリスクを取らずに、しかも「先延ばし」をしても成功できるのか?➖オリジナルな人の特徴とは➖

「ふつの人たち」のために書かれた本

 久しぶりに骨太な本に出会えたので紹介します。あの『GIVE &TAKE「与える人」こそ成功する時代』で有名なアダム・グラントの著書、『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)です。結論から申し上げて、本書は「ふつうの人」たちのために書かれた、ふつうの人たちだからこそ共感できる本です。 私がここでいう「ふつうの人たち」とは「大きなリスクを冒したくない人たち」のことです。

 私などはまさしく「ふつうの人」の典型なのですが、それでも「自分がやりたいことを実現するためにはどこかでリスクを取らねばならない」ということは常々考えております。ホントに。つまり「どこでリスクを取るべきかなのか?」それは「今なか?」それとも「もう少し先送りしたほうがいいのか?」あるいは…と、日々もんもんとしながらそのタイミングを見計らっているわけでして、そんな矢先にこの本と出会えたのはちょっとラッキーでした!

リスクのバランスをとる

 自分に何がしかの目標があった時に、「ふつうの人」ではなく非凡な人だったら、すぐにでも氷海に飛び込んで泳ぎ切ろうとするのかもしれませんが、私のような凡人にはまずストレッチやマッサージが必要だし、泳ぎ始めたはいいけど途中でバテてしまった場合の休憩所なんかも事前に設定しておく必要があるわけで、

 著者であるアダム・グラントはそんな「ふつうの人たち」に対して、様々なエビデンスをもとに、例えばこんなアドバイスをくれます。

ある領域でリスクをとろうするときは、別の領域では慎重に行動するというポートフォリオのなかで、リスクのバランスをとれ。 

 つまり、ある分野において安心感があると、別の分野でオリジナリティを発揮する自由が生まれるのであり、その代表として詩人のT.Sエリオットやヘンリー・フォードや、ビル・ゲイツなどの人物をあげます。彼らはちゃんとセキュアベース(安全地帯)を持っていたのですね。

『成功を収めるオリジナルな人は、ある部分で大きなリスクを冒しつつ、別の部分ではことさら慎重になることでバランスをとっている』人が多く、またそのように慎重な行動を取る人のほうが、大胆な行動を取るリスクテイカーよりも、成功する確率がずっと高いのだそうです。 

「先延ばし」は創造性の源にもなる

 それからもう一つ。先延ばしはよくない。すぐに行動すべきだとよく言われますが、アダム・グラントさんはここでも疑問を呈します。本当にそうか?と

 古代エジプトでは、「先延ばし」を意味する二つの異なる動詞があった。一つは「怠惰」、もう一つは「好機を待つこと」を表す言葉だった。

 歴史上にも「先延ばし屋」はたくさんいました。レオナルド・ダ・ヴィンチは『モナ・リザ』を描きあげるのに16年もかけてるし(この間何度も描くのをやめて放置したんだそうです)、「私には夢がある」で有名なキング牧師の演説も、実はその原稿はスピーチ直前に作り上げたものでした。

 様々なエビデンスを取った結果、グラントは「先延ばしはクリエイティブな仕事にはとくに有益である」と結論づけました。それは、「科学的な問題や解決策に対して早まった選択をしないように、アイディアを温める期間」であったり、あるいは「さっさと片づけてしまおうという衝動を抑えるための一つの方法である」というのです。うーん。すぐに行動できない自分にとってはものすごく励みになる結論ですわ。

 本書には「アドラー心理学による、出生順位に見られる性格」の研究やその後の知見などにも章が割かれており、私には色々な意味で興味深い内容の本でした。

 ハラリの『サピエンス全史』然りですが、海外では学者さんの書いたこういう骨太な本がベストセラーになったりしますが、今の日本では考えられない文化の違いがあるのでしょうね。ぜひ手に取ってもらいたい本の一冊です。



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