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つくらない。つくられる。廃校になった母校を訪れてみた。

コロナが落ち着いたので、
母に会うため、2年ぶりに田舎へ帰省した。

早朝、久しぶりに母校まで散歩してみると、
端っこの海沿いの防波堤には釣り人が2人。
それ以外は廃校して以来15年間何も変わらない、よくある田舎の風景。

ところが、グランドは妙にキレイなのだ。
それなりに整備されているし、
ゴミひとつ落ちていない。
うーん、誰かが管理してる?

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すると30分後、元気な声が聞こえてきた。
よろしくお願いしまーす!

野球少年たちだ。
朝7時。コーチら大人と共に、車から道具を出して、一生懸命グランドに運び込んでいた。 

そう、我が母校は、隣町の少年野球チームが使うホームグランドになっていた。

ゾロゾロと約20人のキッズたちが、
練習の準備をする。
コーチたちは、
せっせとライン引きやグランド整備。

1人の少年に聞いてみると、
今日はこれから試合があるようだ。
早朝からご苦労様です。

試合前のウォーミングアップが始まった。
ランニングの掛け声、キャッチボールの声出し、早朝のグランドに活気が吹き込まれていった。

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かつては、筆者もこのグランドで、
朝から夕方まで白球を追いかけた。
練習中みんなで大声を出すと、校舎の裏山に反響して、その音が何重にも大きくなった。

1学年30人足らず、全校生徒80人の小さな学校。野球部員も20名足らずだったが、裏山に響く掛け声には、街の強豪校なみの活気があった。

あれから35年。廃校になって15年。
今は釣り人と、高齢者の散歩ぐらいしか見かけないグランドで、再びこんな光景がみられるとは。

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少子化の加速により、学校の統廃合は、
もはや地方だけの問題ではなくなっている。

翌日、市役所のまちづくり担当者に話を聞いてみたが、『廃校の再活用については、われわれ行政が何かをやろうとしても、予算不足や運営管理者の問題でなかなか進まないのが実態です。』

反面、全国ではさまざまな廃校利用の事例が生まれているのも事実だ。宿泊施設、キャンプ場、飲食店、オフィスなど、学校インフラの持つ魅力は、これからも多様化し進化するだろう。

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子どもたちだけの学び舎としての学校は、時代とともにその役目を終えたのかもしれない。

これからは、大人も子どもも高齢者も、健常者も治療を必要とする者も、地元も行楽客もワーカーも会社も行政も、みんなが集えるシェアスペースとして、活気づいていけたら素晴らしいと思う。

みんなの場所は、
誰かにつくられるのではない。
誰かがつくるのだ。

そして今日。
我が故郷の学び舎は、小さなプレイヤーたちによって、かつての活気を取り戻しつつある。

もうここは、廃校の跡地ではない。

野球少年たちの立派なホームグランド。
キッズたちの元気な声が、
晩秋の裏山にこだましていた。

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2021/11/24
Hacasse

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