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大谷翔平選手の通訳が起こした衝撃的な違法賭博事件とギャンブル依存症の深層を解析:ABAの視点から

ブログ記事の概要

水原一平元通訳が大谷翔平の信頼と財産を悪用して違法賭博に手を染めたという衝撃的な事実が明らかになり、ギャンブルの破壊的な影響力が改めて浮き彫りになりました。この事件は、依存症がいかに人々を裏切り、個人的にも経済的にも破滅に追い込む程度が大きいかを思い起こさせるものです。

このブログでは、応用行動分析学(ABA)の視点を通して、ABAの原則を検討しながら、娯楽としてのギャンブルからギャンブル依存症へとつながる環境要因と個人の行動の間の複雑な相互作用を掘り下げていきます。これらの行動の原則を知ることで、ギャンブルは一般的に認識されている以上に依存症に陥りやすいという事実に気付くことができます。

ギャンブル依存症が引き起こす深刻な裏切り

大谷翔平選手の通訳を務めていた水原一平氏が、ギャンブルの借金返済のために大谷選手の口座から24億円以上を不正に送金していた事件は、世間を大いに驚かせました。このように、ギャンブル依存症が人をどれほどまでに追い込むことができるのか、その恐ろしさを改めて痛感させられます。依存症が私たちの行動に深く影響を及ぼす一大問題であることは間違いありません。

こうした背景を踏まえて、ABA(応用行動分析)の視点から依存症の深層を掘り下げ、その根本的な原因を明らかにしてみたいと思います。

ABAから見たギャンブルのメカニズム

ABA(応用行動分析)では、行動は環境によって引き起こされると考えます。そのため、ABAの枠組みで依存症を考えると、依存症は単に個人の意志の弱さや性格の問題というよりも、その人の周囲の環境や状況によって大きく影響されるものと理解されます。

行動は環境変数に影響され、制御される

例えば、流行の服や新発売のスイーツを購入したくなるのは、友人が着ていて「素敵だな」と思ったり、コンビニで見かけて「美味しそう」と思ったから、つまりそれらを見かけたから、自分の生活環境に存在しているからです。そもそも存在していなければ、当然「欲しい」と思うこともなく、購入することもできません。

正の強化

そしてそれらを購入し、期待通りの満足感をもたらした場合、同じ行動を繰り返す傾向にあります。これをABAでは正の強化と言います。正の強化とは、行動後に快刺激を受けると、その行動を今後繰り返したくなるという行動の原理です。

正の弱化(罰)

反対に、期待して買った商品が期待を裏切った場合、その行動は弱化し、再び同じ行動をする可能性は低くなります。これを正の弱化(罰)と言います。行動後に不快刺激を受けると、その行動を今後繰り返さなくなるという行動の原理です。

ギャンブル行動を強化する強化子

ギャンブルに関しても同様の原理が働きます。もし生まれて初めてのギャンブルで勝利し、大金を手にした場合、今後もギャンブルを行う可能性が高くなります。

もう少しABA的に詳しく言うと、行動後に得られる報酬としてのお金は、強い強化子になるので、行動が維持されやすいのです。

強化子とは、ある行動の直後に起こる刺激変化であり、今後同じ行動を再び起こる可能性を高める機能を持つ刺激変化のことです。ギャンブルの場合、強化子は「お金を獲得すること」です。お金はいくらあっても飽きることない、ありとあらゆるものと交換可能な万能な強化子(般性強化子)なので、行動の強化に非常に効果的で、飽きることなくギャンブルを繰り返してしまうのです。

反応努力

また人は簡単な行動ほどをその行動を起こしやすく、面倒が多いほど避けがちになります。このような労力が少ない行動のことをABAでは反応努力と言います。人は同じ強化子を獲得できるなら、反応努力の小さい行動を選択します。ですからもし一晩でお給料1ヶ月分を獲得した場合、仕事よりも優先してギャンブルをしたくなります。また昨今では、オンラインギャンブルやスマートフォンアプリを通じて、いつでもどこでもギャンブルが可能になりました。これによりギャンブル行為への反応努力が大幅に減少しました。したがって、特に依存症のリスクが高い人々にとって、ギャンブル行為に参加するハードルが低くなり、結果としてギャンブル依存症のリスクが増大しています。

ABAから見た、ギャンブルが依存症になるメカニズム

ギャンブル行動がただの娯楽から、人生を破滅させるほどエスカレートしていくメカニズムを、飽和、強化計画、動機付け操作の概念などのABAの原則によっても説明できます。

飽和

飽和とは「飽き」のことです。大好きなお寿司が強化子だった場合、時間とともにお腹がいっぱいになったら、お寿司はもう強化子として機能しなくなります。しかし前述した通り、お金は飽和につながりにくいです。
しかし、勝ったときのスリルや興奮は時間とともに薄れていく(飽和する)ことがあります。このため賭け金を増やしたり、倍率の高いゲームを選んだりして興奮レベルを上げることによって、ギャンブル行動が強化されることがあります。

強化スケジュール:変動比率強化スケジュール

ギャンブル依存症の原因は強化スケジュールにあると言っても過言ではありません。この概念を理解することで、なぜギャンブルにこれほど中毒性があるのかを解明することができます。

変動比率強化スケジュールとは?

ABAにおける「強化スケジュール」とは、行動変容のために、いつ、どのように強化(報酬)を与えていくか計画することです。

変動比率強化スケジュールの「変動性」とは報酬を得るために必要な行動の数が毎回変化することを意味し、「比率」とは行動の数を意味します。

釣りと変動比率強化スケジュール

釣りを想像してみましょう。釣り糸を垂らすたびに魚が釣れるわけではありませんよね。3回やって釣れることもあれば、10回やって釣れることもあるし、1回だけで釣れることもあります。いつ魚が食いつくかわからないけど、いつも次に何か釣れる可能性があるから釣りを続けるわけです。それが変動比率強化スケジュールです。

では、なぜこのスケジュールがギャンブル行動を長引かせ、やめられなくするのでしょう?

予測不可能性

人間は、予測可能な報酬よりも予測不可能な報酬の方がエキサイティングで魅力的だと感じます。いつ勝つかわからないので、「次こそは」という興奮が、何度も賭けさせてしまうのです。

やめにくい:消去抵抗が高い

変動比率強化スケジュールで強化された行動は、消去に対して非常に抵抗力があります。つまり、勝てなくなったとしても、以前の勝った経験から、またいつかは勝てるとわかっているため、ギャンブルを続ける可能性が高くなります。そのため、負けを繰り返してもギャンブルをやめることが難しくなります。
たとえ何度も負けたとしても、次に勝てるかもしれないと思うと、なかなかやめられないのです。次こそが、その日一番の大物になるかもしれないと思って、一日中釣りをしているようなものです。

行動が多い:高い反応率

変動比率強化スケジュールは反応率が高い傾向があります。つまり短期間でより多く賭ける傾向があるのです。ギャンブラーは、「次こそは、次こそは」と思っているので、何度も何度もプレーを続けることがよくあります。

サプライズ勝利の興奮

予想外の時に勝つという驚きは、本当にエキサイティングなものです。この興奮は、ギャンブル体験をより思い出深いものにし、強い強化をもたらします。ですから、たとえその間にたくさん負けたとしても、また挑戦したくなります。

その他の変動比率強化スケジュール

他にも変動比率強化スケジュールで強化されている行動は多くあります。

ソーシャルメディアの使用

通知や新しい「いいね!」がないかをスマホでチェック。いつ「いいね!」や「コメント」が返ってくるかわからないので、頻繁にチェックするように促されます。自分のコメントや投稿がたまにバズった場合、投稿頻度が上がります。

この強化子計画により、ギャンブルの行動は非常に強く、変化しにくくなります。漁師が大漁を期待して漁を続けるように、ギャンブラーは次の勝利のスリルを追ってギャンブルを続けます。このため、ギャンブルをする人は、「次に大勝ちするかも」 という考えがいつもあるので、ギャンブルをやめるのが難しくなります。

まとめ

水原一平元通訳の違法賭博というショッキングな事件は、依存症が人間の行動に与える深刻な影響を浮き彫りにしました。仮に私たちが彼と同じ環境や立場にいたとしても、彼のような大胆な犯罪を犯す人はそう多くはないでしょう。ですから、彼の犯罪をすべて環境のせいにするつもりはありません。しかし、ABAの観点から依存症を考える時、ギャンブルは一般的に認識されている以上に依存症になりやすいことを心に留めておく必要があります。そして、一度依存症に陥ってしまうと、いくら本人を責めても抑止力としてはあまり効果がありません。今後の予防や処遇を考える時、環境要因を考慮した科学的な解決策を検討することが極めて重要です。

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