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顧客に愛されるサービスを提供するために。Adecco Groupが取り組むCX

Adecco Groupでは、Customer Experience(CX/顧客体験)向上のための戦略をグループ全体で展開しており、日本では、2020年にCustomer Experience(以下、CX)推進部を立ち上げ、同時にCXプロジェクトとして、CXを高める活動に全社横断的に取り組んでいます。

Adecco GroupにおけるCX向上への取り組み、これまでの課題や展望などについて、マーケティング本部CX推進部 部長の多賀 智美さんにお話をうかがいました。

CXが社内に浸透するまで

――CXの向上が本格的に全社横断的な取り組みとして実施されたのは、どのような経緯からでしょうか。

Adecco Groupでは、従業員の行動規範として5つのコアバリューを定めており、その一つに「カスタマーセントリシティ」という考え方があります。「素晴らしい顧客体験を通じて顧客ロイヤルティを高めるための行動」と定義しているカスタマーセントリシティの文化が、もともと社内には根付いていました。

その土壌において、よりCXを向上させ、お客様にAdecco Groupを選んでいただけるようになるために、CXにフォーカスした戦略がAdecco Group全体で2016年ごろから展開されました。

同時に、Adecco Group全体でCX向上を測る指標として、NPS®(Net Promoter Score®)プログラムを導入しました。NPS®は日本語で「推奨者の正味比率」を意味し、「友人や同僚に薦めたいか?」という質問への回答から算出される、顧客ロイヤルティを測る指標です。
 
もともと似たような指標として5段階評価でサービスの満足度を測る「CS(顧客満足度)」を採用していたのですが、お客様のロイヤルティを高めるという観点やNPSⓇスコアと売上げの成長率との相関性の高さから、CXを重視した指標に切り替えることになったのです。
 
そもそもAdecco Group全体として、カスタマーセントリシティが文化として強く根づいており、さらには、顧客視点のサービス開発を進める必要があるというマーケットの潮流も導入の追い風になったと考えます。

――現在の社内でのCXに対する理解の浸透、そしてNPSⓇの認知度は、導入当時と比べていかがでしょう。

CX推進部が発足したのは2020年です。すでにNPSⓇ導入から3年が経っていたのですが、社内でCXやNPSⓇについて知られていないということを痛感しました。
 
CXを向上させ、NPSⓇというツールを使って私たちのサービスレベルを上げていくには、CXの指標となるツールについての理解が欠かせません。だからこそ、まずは社員に向けてNPSⓇの説明から始めました。活用による具体的な方法やメリットを伝えたり、CXをどう考えるか、なぜ取り組みが重要なのかを考えてもらい、NPSⓇを活用するためのトレーニングを行ったりと、地道な活動を現在も続けています。
 
チーム発足から3年が経ち、CXやNPSⓇという言葉が現場レベルで話題に上がることが多くなり、だいぶ浸透してきたという実感はあります。

CXの向上には顧客をつなぐコミュニケーションツールが重要に

――指標であるNPSⓇの具体的な活用方法を教えてください。

NPSⓇは言ってしまえば「顧客アンケート」です。ただ、アンケートはどうしても一方通行になりがち。アンケート用紙を渡して、お客様に書いてもらうけれども、それをもとにお客様へフィードバックすることは少ないですよね。
 
もし、私たちのサービスについて何も感じていなければ、お客様はわざわざ時間を使ってアンケートに答えてくれないはずです。つまり、アンケートに答えてくれることは、私たちへの期待の裏返しなのだと思います。そう考えてみると、この期待をまずは真摯に受け止めることが重要です。
 
だからこそ、NPSⓇは単なる指標と捉えるのではなく、顧客とのコミュニケーションツールとして考えることが大切です。アンケートに答えてくれたお客様の営業担当者には「メールでも電話でも良いのでリアクションをしましょう」と声を掛けています。「アンケートに答えていただき、ありがとうございました」でも良いし、もしいい評価がつかなければ、「どういうところが至らなかったですか」と聞いてみるのも良いでしょう。そうすることで、お客様にも「しっかりと見てくれている」と思っていただけるはずです。
 
少しずつですが、現場にもその考え方が根づきつつあると感じます。アンケートを用いてコミュニケーションを取ることで、お客様に信頼感・安心感を持っていただけている。営業活動の一つとして確立されつつあると思います。

――CXの向上に関して、他にどんなアプローチがありますか。

NPSⓇの活用で最も一番重要なことは「クローズドループの実践」と言われています。つまり、お客様からサービスに対するフィードバックをもらい、フィードバックの分析をして、お客様の理解を深め、課題を発見する、という一連の流れを実践するということです。一般的なPDCAサイクルのようなものですね。
 
例えば、スコアが低かった場合、サービスに何か問題があったのか、など課題を見つけます。最後に洗い出した課題を改善、お客様に還元していくまでが一つの流れとなるのです。このステップを回していくことが、CX向上において最も重要なことだと言えます。

――多賀さんは入社当初は営業職だったそうですが、その経験から現在のCX向上のための取り組みやNPSⓇというツールはどのように映っているでしょうか。

「私が営業職だったときにあったら良かったのに」と思いますね。営業は当然、お客様との信頼関係を構築しなければ受注がもらえません。そのためにはお客様が何に満足していて、何に不満を持っているのかを本当の意味で理解する必要があります。
 
とはいえ、面と向かって「このサービスどうでしたか」と営業が聞くのも、お客様が本音で答えるのも難しいと思うんです。だからこそ、アンケートという形でお客様の感情を見える化できるのは良いと思います。また、良い評価をいただければ、モチベーションアップにつながりますからね。
 
もし、悪い評価をいただいてしまったときは、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。でも、お客様が信頼・安心していただけているのかを客観的なスコアで知ることができるのは、サービスの課題発見、課題解決につながるヒントがいただけるということです。


CXを高めることでES・CSを向上させる好循環を実現

――クローズドループの実践から、具体的にどのようなフィードバックや課題解決がありましたか。

顧客やタイミングによって、対応の仕方も変わります。例えば、スピードを持って対応することも一つの顧客体験ですし、顧客に寄り添ってじっくりとニーズを聞くのも顧客体験となります。
 
また、自分ではスピーディーに対応していたと思っていたけれども、お客様から「いやいや、他社よりも遅いよね」と言われることも気づきの一つです。感覚のギャップを知ることができるし、他社のことも知ることができる重要なフィードバックですよね。
 
他にも、アンケートのお客様の声からWebページの仕様改善につながったり、回答に対して素早いフォローと課題解決をすることでクロスセルやアップセルにつながったようなこともCX推進の効果ではないでしょうか。
 
こうしてお客様の気持ちに気づき理解することで、はじめて私たちの営業活動やマーケティング活動が究極の顧客志向になることができると考えます。一方的な営業やサービスは単なる押しつけでしかありませんからね。

――アンケートで届いたお客様の声に対する社員の反応などを教えてください。

お客様の声は日々、数えきれないほど届いています。例えば、当社にはキャリアコーチという独自の役割を担う担当者がいます。キャリアコーチは派遣社員一人ひとりに寄り添いキャリア構築に対するアドバイスを行っているのですが、この役割を担う担当者がいることは派遣社員の皆さんに非常に評価されており、「アデコでしか働きたくない」と言っていただける理由の一つになっています。
 
やはりこうした良いフィードバックをいただけると、社員のモチベーションにつながります。働きがい・やりがいが高まり、社員一人ひとりの躍動にもつながっていきます。
 
お客様の満足度が上がりロイヤルティが高まっていくことが、私たちのやりがいにもつながるのです。つまり、ES(従業員満足)とCS(顧客満足)が循環するということ。そうすれば、より「お客様のために何かしてあげたい」と考えるようになり、さらなるCXの向上につながります。こういった良い循環が少しずつでき始めているのを感じます。

――多賀さんが働きがい・やりがいを感じる瞬間はどんなときでしょうか。

お客様の声を分析していると、自分が直接担当したお客様でなくても本当に涙が出るほどうれしくなることがあります。社員が「こんな風にやってみたら、お客様が喜んでくれた。うれしかったです!」と笑顔で話すのを見ていると、私もワクワクするし、うれしくなりますね。
 
もちろん担当者の努力があってこそなのですが、「自分がその一端を担っている、一体感を持って取り組めている」と感じるときが、この仕事をやっていて良かったなと思うときです。

コロナ禍で見えた新たな課題と気づき - コミュニケーション力

――コロナ禍で、働き方や働く環境などが大きく変化しました。その中で出てきた新たな課題・問題点などはありましたか。

お客様からの期待という視点で考えると、私たちのサービスにおいて期待値が高いのは営業担当やキャリアコーチのコミュニケーション力です。コロナ禍においては、仕方のないことですが、タッチポイントの数自体が減ってしまいました。
 
そのため「もっと訪問回数を増やしてほしい」「もっとコミュニケーションの機会を増やしてほしい」というお客様からのニーズが増えました。コロナ禍が収束しつつある今、徐々にリモートだけでなく対面のコミュニケーションも増加してきたと感じていますが、より一層、お客様のご希望に合わせたコミュニケーションを模索していきたいと考えています。

――コミュニケーションを図る上で重要なことは何だと考えていますか。

コロナ禍での経験を経て得られた気づきは、コミュニケーションは「量」と「質」という二つの側面から成り立っているという点です。よりタッチポイントを増やしていくという量だけでなく、お客様との対面の機会が限られていたからこそ、いかに質の高いコミュニケーションを図るかという点に気を配ることが重要だと改めて感じました。
 
私たちCX推進部ではこの量と質を総合したコミュニケーション力を高めるために、関係部署との連携をより一層強化し、担当者によるコミュニケーション力のばらつき解消を目指していきたいと考えています。

もっと信頼される、もっと愛される会社になるために

――これまで多賀さんはCXを推進する活動をされてきましたが、現状、社内におけるCXの浸透度合いは何割くらいだと思いますか。

厳しめに言って、まだ6割ぐらいだと思います。社内においてCXの重要性を理解していない、あるいはNPSⓇを知らないという人はほぼいないと思います。ですが、正しく理解した上でCXを向上させる活動ができているか、ツールを使用できているか、というと道半ばですね。

――なるほど。それでは10割を目指すことを含めて、今後の施策・展望を教えてください。

CXの向上への取り組みには終わりはないです。お客様の声には常に耳を傾け、改善点を見出す、そして改善をするというクローズドループを回していく。これをしっかり継続していきたいです。
 
そのためには、何か新しいことをするのではなく、従業員一人ひとりがCXを意識し、カスタマーセントリシティを実践し、やり抜くことが欠かせません。具体的には、今までやっていた営業活動を、よりお客様視点で何ができるかと見方を変えるということです。そうなれば、自然とお客様にもっと信頼される、愛される会社になる――、そう信じています。

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