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多拠点生活のきっかけは?〜再び、“旅する農業生活”へ〜

若い時は仕事が長続きせず、製造業で働いたりトラック運転手をしていたけれど、ある時ずっと興味のあった農業の世界に飛び込んでから、ADDressで庭や畑に携わるようになった会員の吉田雅彦さん。2022年5月現在、58歳。
吉田さんとの出会いは、2022年3月のADDress上野原A邸(山梨県上野原市)オープニングセレモニーでした。

上野原A邸オープニングセレモニーでメディアの取材に答える吉田さん(右端)

ADDressの家守から「吉田さんという会員さんが、雑草を刈ってくれたり野菜を作ってくれたり、庭や畑を管理してくれて助かっている」という情報が、各地から耳に届くようになり、畑に興味のある私としては、「いつかお会いしてみたい」と思っていました。

私は築300年の古民家を改装した上野原A邸のオープニングを祝うイベントで、広い敷地内の一角を「菜園」として活用し、吉田さんに野菜づくりについて相談しました。吉田さんは快く引き受けてくれ、会員さんら参加者と共に、上野原A邸の畑づくりをしました。あれから2か月。真っ赤な苺が育ち、夏の収穫に向けて茄子やトマト、きゅうりなどの苗も順調に育っています。

住み込み農業バイトで全国を転々と

ADDressは学生から退職シニア層まで、幅広い年代の会員で構成されています。最も多いのが20代から30代の若者ですが、50代以上も2割程度占めます。吉田さんもそのうちの一人です。

九州・熊本県の畑。ADDress九州エリアも家が増えてきました

若い時は3年ごとに仕事を転々とし、「これだ」という職業になかなか出合うことがなかったと振り返る吉田さん。好景気の社会の流れに乗り、さまざまな仕事を経験しながら生活をしていた矢先にバブルが崩壊。経済転換を迎えたことをきっかけに1992年、吉田さんは一念発起し、かねてから頭の片隅でずっと憧れていた農業の世界に飛び込みました。

長野県川上村のレタスやキャベツの高原野菜農家に、住み込みアルバイトとして応募。5月の植え付けから10月くらいまでの半年間、現地で生活し、ゼロから学んだといいます。

「やはり自分には農業が合っている」
農業なら仕事が続くかもしれないと川上村での生活を経験し、その想いは確信に変わりました。

家庭を持ち“定住農家”になるも・・・

身体を使って土をいじり、野菜を育てることに一筋の光を見出した吉田さんは、その後も各地で農業バイトの経験を重ねました。
夏場は涼しい北海道の夕張メロン農家や長野県の野菜農家で過ごす。冬場は暖かい鹿児島の沖永良部島(おきのえらぶじま)で切り花の栽培を手伝ったり、宮崎県で切り干し大根を生産したりと、“旅する農業生活”を始めました。各地の仕事はJAや自治体を訪ねて「農業に携わりたい」と相談し、紹介してもらったお仕事だったそうです。

「地方の農家さんは人手不足が深刻だと聞いていたので、どこへ行っても農業に従事することができました」

上野原A邸で吉田さんが育てた苺が美味しそうに色づく(2022年5月)

そんな吉田さんの次の転機は「結婚」でした。
“旅する農業生活”から“定住農家”を目指して、資金集めのために3年間、トラック運送業で稼ぎ、千葉県館山市へ家族で移住。念願の農地を借りました。

その広さ、なんと900坪(3,000平方メートル)!

お正月などお祝い時で使う食用野花を中心に育て、夏野菜や果物づくりにも励んだと言います。
館山移住2年目、2人目の子どもが生まれ、稼ぎを増やすために大好きな農業を週末だけに限定し、平日は地元のガス屋さんで働くスタイルに切り替えました。

病気、災害、引っ越しで再び旅生活へ

「もともと血圧も高かったのですが、働き過ぎたのと仕事のストレスがあったのだと思います」

ある日、脳出血を起こして倒れ、左半身の麻痺が残ってしまいました。それでも、「右利きだったので、生活にはほとんど支障はなかった」と前向きに話す吉田さん。とはいえ、病気直後は「もう農業を辞めようかと思った」と思い詰めたこともあったそうですが、器用に右半身を使い、トラクターの運転もこなし、農業生活を継続しました。

館山での農業は楽しいこともあったけれど、害獣被害には苦しんだそうです。ただ、「動物よりも人間の方がタチが悪い」と、大切に育てたスイカを人に盗まれる被害が2年続き、「スイカ作りは好きだったけど、モチベーションが削がれてしまって止めてしまった」と残念そうに語りました。それでも、3年前の房総半島を襲った台風被害までは、館山での農業生活を継続されました。

「暴風雨で一軒家がボロボロになって、住めなくなってしまいました」

吉田さんは、館山市を離れて君津市にアパートを借りました。車で1時間かけて畑に通う生活が始まりましたが、広大な畑の管理が身体に堪えるようにもなりました。そんな矢先に見つけたのが「ADDress」。離婚をしたことや障害年金給付の事情もあり、館山の畑を返して、再び昔のような“旅する生活”をADDress会員としてリスタートしたのです。

四季を快適に過ごし、農業を楽しみたい

最初の家は、長年生活した千葉県内にある茂原市(茂原A邸)でした。家守さんがこじんまりした畑のスペースに穴を掘ってコンポストを作り、耕していた形跡があったので、「(家守さんは)畑をやっている人かも」と思い、空いているスペースを使わせてもらい、野菜を植えたのが最初の“ADDress農活”だったと振り返ります。

その後は千倉A邸(千葉県南房総市)で菜花を育てたり、鶴巻温泉A邸(神奈川県秦野市)の家守さんに畑を紹介してもらったり、清川A邸(神奈川県清川村)の雑草刈りをしたりと、各地の戸建庭(菜園)付の家を転々と訪問しては、積極的に「畑メンテナンス」をしてくれました。庭付きの家を管理する家守の間で、今や吉田さんを知らない人はほとんどいないでしょう。

上野原A邸で吉田さん(中央)を囲んで食事を楽しむ(オープニングセレモニーにて)

今回の記事の執筆にあたり、吉田さんに依頼をしたところ、すぐに快諾のお返事をいただきました。私がちょうど上野原A邸から戻って来たと話すと、「来月また行きますよ!」と弾むような声で話された吉田さん。その前に、南伊豆A邸(静岡県南伊豆町)に行き、さつまいもを植えるのだそうです。

私がこの後はどこへ行ってみたいですか?と問うと、「暑くなったら長野や東北に行き、2月頃に南の九州や四国へ行って、農業をしたい」と即答された吉田さん。ただ、「九州や西日本はまだ庭付きの家が少なくゲストハウスが多いので、敷地内を耕していいものか」と悩まれている様子。一緒に緑を作りたい家守さん、オーナーさん、会員さん。ぜひ、ADDressの庭で土いじりをしてみませんか?(文/ADDress取締役・広報PR・自治体連携担当:桜井里子)

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