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イスラエル注目のスタートアップ5選

中東のシリコンバレーと名高く、今や世界のスタートアップの中心にもなりつつあるイスラエルにGOB-IP Co-nect事業部の中山友貴が行ってきましたので、全3回に分けてその様子をレポートしていきます。

第一回:実際に行ってみてわかったイスラエルの3つの特徴
第二回:イスラエルのスタートアップエコシステム

第3回目は「イスラエル注目のスタートアップ5選」についてです。

私中山が実際にこの目で見てきたスタートアップの中で面白いと思ったスタートアップを5つ選出して、どんなところが面白いと感じたかも含めてご紹介させていただきます。

1.anagog

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イスラエルスタートアップはサイバーセキュリティやヘルスケア、プロファイリング技術を活用したリテールテックの領域に長けている事業が多く存在します。

1つ目に紹介するのはリテールテック領域でオフラインのデータビジネスを行っている「anagog」です。

2010年創業のanagogは、スマートフォンを活用したユーザー行動分析ツールサービスを展開しています。

ユーザーの行動分析に特化した独自のAI(JedAI)を端末内にSDKをインストールすることで、主にGPSとジャイロセンセーを活用して、その人がどこでどのくらいの時間を使って、何をするのか等、ユーザーのオフラインのリアルをデータ化することが可能となります。

結果、高度なパーソナライズを可能にして、ユーザーの未来行動を予測することになります。具体的には主に小売、自動車、銀行、通信領域に進出しています。

驚くべきは、その電池消耗率です。このSDKは端末の1%の充電量しか使用しません。もちろん、スマートフォンに依存する部分も大きいが、現在市場に出ているスマートフォンであれば基本的に問題無く、使用することが可能とのことでした。

彼らのアルゴリズムのユニークなポイントは、100の「Micro segments(デモグラフィック)」とanagog内で取得した時間あたりのデータ「Micro moments(サイコグラフィック)」の掛け算で組まれていて、顧客が欲しいと思った適切なタイミングで強力なマーケティングを実現している点です。

例えば、平日、幼稚園に行く。休日には動物園に行く。みたいな人の場合、多くが母親である可能性が高く、しかも幼稚園児がいることが想定できます。

ここまでわかると幼稚園で使うようなクレヨンなどの商品ページを最適なルートで、最適なタイミング顧客に提示することが可能になるということです。

まさにGAFAが収集することのできないオフラインの情報を収集して、マーケティングに活かすことでビジネスにしています。

2.playsight

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グローバルスポーツプラットフォームを構築している Play サイトは2010年に創業しています。

現在は次世代のアスリート、コーチ、チーム、リーグ、スポーツ施設を AI と機械学習を活用したビデオの分析技術でつなぐプラットフォームを構築しています。

彼らのサービスでは、スマートカメラを活用して(このカメラは市販のもので良い)ライブ放送であったり、その動画データに解説を入力させたり、自由にズームインアウトをさせて、自分の見たいシーンや見たい箇所を切り抜いて使うことができるところがポイントです。

技術の部分はイスラエルのが空軍で活用するブリーフィングの技術を活用しています。これによって現在ではコーチがアスリートを育てる際のフォーム確認などを行っています。

彼らはそれにプラスしてそれらの動画コンテンツを生成してプラットフォームの中で自由に見れるようにしています。

現在ではこれをフリーにしていますが、ここから課金であったりだとかマネタイズポイントを作り出すということを考えています。

最新の画像解析技術も活用していて、例えばバスケットボールなどのゲーム中のスコアリングなども同時に公開し続けることが可能です。

彼らの現在のサービスの中での注力してる部分としては、アスリートを育てたいトレーナーであったりとか、コーチなどが使うシーン、試合中レフリーが足りないなどの状況を加味して画像解析であったりとか、審判などの行為ができるというところに活用しています。

彼らはワールドカップやオリンピックなどの際にこのサービスの転用が可能と語っています。

彼らがこのサービスを展開しながら見えてきている今後の方向性としては、マイナースポーツや子供が行ってるクラブ活動の動画を家にいながらリアルタイムで見ることも可能だったり保存することによって、いつでも見ることが可能となる世界です。

それらのコンテンツに解説を入れたりだとか少しデザインを加えることによってプレイサイトが持つコンテンツ技術を活用した放映権の取得を考えているそうです。

3.6degrees

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ウェアラブルセンシングデバイスの開発販売を行う6degreesは、Bluetooth でスマートフォンやタブレット、パソコンなどを接続することで、上半身が不自由な人がハンズフリーでデバイスを操作することを可能にしています。
(事実、イスラエルには戦争負傷によって四肢が不自由になる方が多く存在しています。)

独自のジェスチャーを活用することによって、コマンドをデバイスに送信する仕組みです。

腕につけるセンシングデバイスは色々とありますが、6degreesの精度はかなり高いです。自分の腕の動きや身体の動きのクセもAIが学習することで誤作動も最小化することが可能となっています。

デモでは、実際に我々もゲームをしましたがが、このデバイスを使ってスマホでの操作を問題なく行うことができました。

今後このようなデバイスが普及することで指だけでない方法でデバイスの操作ができる未来が来ることを実感しておりました。

4.Niio

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デジタルアートキュレーションプラットフォームのNiioは、会社のオフィスや商業施設向けにデジタルアート展示するプラットフォームです。

彼らはアートの消費のされ方を劇的に変化させることを実現しています。 すなわち、デジタルアーティストと商業施設や企業をマッチングさせることによって、既存のアートスペースにおける絵画からのスイッチではなく今までアートがなかった空間をアート化させることに成功しています。

デジタルアートはディスプレイがあれば表示をさせることが可能であり、彼らが持つデジタルアートボックス(Apple TVのようなクラウド型データボックス)をディスプレイにつけることによって、いつでもアートをかけ変えることができるようになっています。

このデータボックスはブロックチェーンによりセキュリティも強化されており、アートとアーティストの権利を守っています。

ノンバーバルコンテンツであるアートを活用した商業施設のブランディングや企業のブランディング新たなマーケティングツールとして展開している。日本への導入を検討する際に広告との組み合わせが面白いと感じました。

デジタルアートをいつでもかけ変えることができるところを活かして、例えば5分おきにデジタルアートと広告の配信を切り替えていく。

そうすることによって、広告枠そのものへの価値を高めます。時間帯単価の高い広告運用ビジネスを行うことができる商業施設などからしたら、このサービスを利用することで、内装のためにかかる費用を一定化させるだけでなく、その一部を広告によって賄うことができると考えると非常に効率的であるように感じました。

5.agritask

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アグリタスクは農作業を管理するプラットフォームを提供するアグリテックベンチャーです。

栽培から出荷までをデータで一元管理することで、情報の透明性を強化しているところが特徴です。代表的な導入企業としてはコーヒー豆を扱うスターバックスがあげられます。

導入企業の多くは、自社が有する農園(スターバックスでいうとコーヒー豆)にこのシステムを導入することで生産管理を行うというような手法で活用しています。

農家側はスマホ一台あれば導入を開始することができるため、非常に手軽にスタートができる上に高機能の部分までも盛り込んでいくことが可能となっています。

また、年間の生産量の確認なども行うことができるため、多く採れる年と少ない年とを見比べて変化を確認したり、その検証を行うことができます。

農作物を育てるのに必要なデータは位置情報をベースにして、ドローンによる画像解析や天候のデータ、独自のセンサーや機械のデータを活用しています。

これらのデータコレクションを活用することによって、生産性を上げるこができるのが最大の特徴です。

アグリタスクは、現在では大きな農場で使われていますが、今後マイクロ農場での活用も拡げていくことができれば、ゆくゆくは自家栽培の野菜だけで暮らせる時代が来るかもしれないと感じました。

事実、砂漠のなかにあるイスラエルで野菜の自給率が90%を超えることができるのはこういったアグリテックが存在しているからだと彼らは語っていました。

6.おわりに

いかがでしたでしょうか。

私が実際に見てきたイスラエルスタートアップを5つご紹介させていただきました。

テクノロジーを活用して、様々な事業がうまれ、それらが世界的に戦うことができるレベルのビジネスにまで発展している点でとても魅力的なベンチャーが多かったです。

2020年には成田からの直行便も通り、ますます近くなるイスラエル。
私、中山の記事は今回で終了となりますが、是非今後ともイスラエルに注目してみて下さい。

GOB-IP Co-nect事業部
中山友貴


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