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中国不動産バブル崩壊か?~中国不動産市場と今後の日本不動産市場に与える影響は?~


日本経済新聞「中国恒大、米で破産申請」

経営再建中の中国不動産大手、中国恒大集団が17日、ニューヨークで破産を申請した。

日本経済新聞「中国恒大、米で破産申請」

この報道を受け米国株式は混乱し、下落基調に変化しました。

中国恒大集団は昨年デフォルトしたのではないか?
という疑問があったため、改めて調べてみると米国の破産手続きについては、どうやら会社再生の一環だったようです。

しかし、その翌日の18日には中国の大手不動産開発会社碧桂園(カントリー・ガーデン)が発行したドル建て社債において、8月7日期限の利払いを履行できなかったという報道が…。

この報道により米国株式はまたしても混乱に陥りました。

その後、「中国不動産バブル崩壊」⇒「世界金融市場警戒」などの報道が止まりません。

今回はこの話題の内容を私なりの視点で簡単に解説していきたいと思います。


中国恒大集団2021年にデフォルト債務不履行

恒大集団は2021年にデフォルト(債務不履行)に陥り、その当時はリーマンショックの再来か?と金融市場でも大きな話題となっていました。

日本経済新聞「中国恒大、米で破産申請」

このことをきっかけに恒大集団は経営再建を目指していますが、その後も不動産市場は低迷。他の不動産企業も含め、資金繰りは難航したようです。

今回恒大集団は、資産差し押さえリスク等の軽減によって債務再編に向けた債権者との協議を加速させることを狙って「連邦破産法15条」を申請したのであって、破産したのではないと発表しています。

恒大集団の負債総額は22年末時点で2兆4374億元(約49兆円)。
今回の米破産法適用により、今後この負債の一部の外貨建債券処理交渉を有利に進める計画的な破産申請ということです。

しかし、中国では景気の冷え込みを背景に、住宅販売が一段と低迷しています。

また、恒大以外の碧桂園など大手デベロッパーの経営危機も相次いで表面化している状況です。

人口減少も始まり不動産需要はさらに落ち込むという見方も多くあるため、今回の措置によって恒大集団の劇的な再建は困難なのではないでしょうか。

中国の大手不動産開発会社「碧桂園(カントリー・ガーデン、広東省仏山市)」は、発行したドル建て社債2本(総額2,250万ドル)の保有者に対して、8月7日が期限であった利払いを履行できなかった。30日間の猶予までに支払いができなければ、デフォルト(支払い不能)となる。

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中国金融、膨らむ火種 不動産大手・恒大が米で破産法申請
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同社は実質的に、デフォルトに陥った恒大グループの4倍にも上るプロジェクトを抱えています。
そのことから、デフォルトに陥れば恒大グループよりも影響は深刻だという報道もされています。

このような報道から、既に中国の不動産バブルは崩壊しているという実情が伺えますね。

不動産市場崩壊における中国経済のインパクト

中国のGDPに占める不動産業の割合は関連産業を含めると約30%となっています。

不動産業界が20%落ち込むとGDPは5~10%減少する試算もあるのです。

これまで中国は不動産価格の上昇によって経済成長してきた国でもあるため、不動産価格は上がり続けるものという前提で無理に購入していた層なども多いのではないでしょうか。

そんな中、不動産価格は大幅な下落局面となり、不動産デベロッパーの破綻だけなく一般消費者のデフォルト懸念も発生しています。

これは日本の90年代バブルと似た様相となっており、今後中国もバブル崩壊を起こし、日本のように「失われた●●」という時代に突入するかもしれません。

また、ここ数年の習近平氏による独裁政権化で地政学リスク拡大が懸念されており、国際経済からも取り残されてきている印象です。

世界各国のグルーバル企業は生産拠点等を中国からインドやベトナム・インドネシア等に移転しており、金融セクターについても香港・上海からシンガポールなどに移転して始めています。

今後、中国の空洞化がより加速する方向になるでしょう。

中国若者の失業率は20%超

[北京 20日 ロイター] - 中国で若者の失業率が3月に50%近くに達した可能性が研究者によって指摘され、公式統計を巡る議論が再燃、労働市場の低迷が改めて注目されている。

国家統計局は同月の16─24歳の失業率は19.7%と発表した。これに対し北京大学の張丹丹副教授は財新のオンライン記事で、家で寝そべっていたり親に頼る非学生の1600万人が統計に含まれていたら、失業率は46.5%に達した可能性があると指摘した。記事は17日に掲載されたがその後削除されている。

6月の公式統計では若者の失業率は過去最高の21.3%。これは就職活動を行っている人を対象としている。

REUTERS「中国の若年失業率、46.5%に達した可能性 研究者が指摘」

ここ最近はこのような報道が多く散見されるようになりました。

中国の若者の失業率は20%超になっており、その勢いは止まらない模様です。

日本全体の失業率は2%台、米国は3%台、欧州6%台となっており、それらと比較するとかなり異常な状況ですよね。

恐らく、経済成長時代が完全に停滞してしまっているので、戦力化できない若年層を新規採用する機運が中国企業には皆無ということでしょう。

中国政府は今月から若者の失業率の対外発表を禁止したようで、このあたりの情報統制はさすが独裁政権といった感じですね。

経済混乱で台湾有事の可能性!?

これはあくまでも個人的な憶測懸念ですが…
今回の中国バブル崩壊が「台湾有事」に発展するのでは、と懸念しています。

中国の共産党習近平氏の現在の懸念点は「中国のバブル崩壊」ではなく「共産党一党主義崩壊」の一点であることが考えられるからです。

以前中国では2019年から発生している香港民主化デモ拡大による軍事制圧、またその後のタイミングよくコロナパンデミックなどが発生するという事態となりました。

今回の「中国バブル崩壊」「中国国内からの政治批判」という流れに変化するでしょう。

この流れに変化しないよう国民の視線を逸らすためには、「台湾有事」が手っ取り早いと考えるのではないのでしょうか。

どうかこれが杞憂で終わることを望みます。

中国不動産バブル崩壊の所感

私が7年前に観光で上海市を訪れた際、現地在住の知人から上海は年率20~30%も不動産価格が上昇しており、中国人は不動産を2件も3件も購入しているという話を聞きました。

当時は投機的な不動産購入が問題になっていたので物件価格に占める融資割合上限規制などが実施されていたようです。
(当時の融資割合上限規制は8割)

また、当時の上海の不動産利回り(年間賃料÷不動産価格×100)は1%未満でした。

確か当時の調達金利は6%程度だったので、購入したとしてもインカム(家賃収入)だけでは到底回収できるはずがありません。

しかし、不動産価格が年間20%~30%上昇し続けるのであればインカム(家賃収入)を見込むのではなく、数年我慢して保有することでキャピタル(値上がり)だけで十二分に投資対象効果があったのです。

このような不動産神話(不動産は上がり続けるもの)というのは90年代の日本のバブル時の光景と一緒です。

いつの時代もこのような「根拠のない熱狂」が不動産バブルを産み出します。
そして、その行き過ぎたバブルはいずれ振り子の原理で適正値まで下落調整されるものです。

私が常に「不動産適正価格はインカムで判断するべき」とお話しているのはこういった問題点があるからです。

日本の不動産市場に与える影響

結論として、今のところ中国不動産市場が日本不動産市場に直接的なマイナス影響を与えることは無いかと思います。

昨年、お隣の韓国でも不動産バブル崩壊の報道などがされましたが、日本への影響は見られなかったためです。

ただ、経済規模がそれなりに大きい中国(世界GDP2位で3位日本の4,3倍)なので債券問題や貿易流通、旅行需要など間接的なインパクトは部分的に派生していくと考えられます。

日本不動産市場へのプラス影響は、中国国内の富裕層が中国の経済や地政学リスク回避の為に「中国元(現金)」「それ以外のストック」=「日本の不動産」へ変化させる流れが加速することではないでしょうか。

今後、中国経済の崩壊が加速する中で中国経済に依存している企業は短期的・中期的な影響を必ず受けます。

8月17日にこの報道が出てからはこれまで好調だった米国株式も下落基調に転換しているものの3月に起きた「シリコンバレーバンク破綻」「クレディスイス騒動」時と比較すると思いのほかインパクトが弱い状態です。

中国国内の経済崩壊という結論からリーマンショック再来という流れは限定的な影響に止まりそうな感じです。

しかし、一つ気になるのはここ最近落ち着きつつあった先進国の長期金利動向が上昇基調に変化してきている点です。

この金利上昇が継続された場合、「金利上昇」⇒「経済停滞」⇒「でも物価下がらず」=「スタグフレーション」という構図になるのではないかと懸念しています。

1970年代、第一次・第二次オイルショックと二度も物価上昇の再燃がありました。歴史は繰り返すとよく言われますので、現在やっと落ち着き合いてきた物価高も再燃する可能性は十分有り得ると考えるべきです。

今回の「恒大集団破産申請」「碧桂園等のデフォルトリスク」の世界経済に与える影響は今後数ヶ月間、注視していかなければなりませんね。

まとめ

  • 中国恒大の米国破産申請はシナリオ通り

  • しかし、他の不動産デベロッパーの連鎖破綻懸念継続

  • 中国経済は明らかに崩壊の兆し

  • 先進国を中心に今後、金利上昇懸念が再燃

  • 中国経済動向は数か月注視が必要

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