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住宅ローン金利上昇機運高まる~金利急上昇に備える住宅購入戦略~

住宅市場の転換期である2023年。

2023年の変化ポイントは3つ。

ポイント①:価格
二極化が加速し価格が上がり続けるエリアと下落していくエリアの2極化が拡大している

ポイント②:在庫
コロナ時に住宅特需が発生し住宅在庫が激減したが、23年度からは大幅に在庫過多な状態になっている

ポイント③:住宅ローン金利
22年住宅ローン金利は底であったようだが、固定金利が年始から大幅に上昇。変動金利も上昇する可能性があり、危機意識が高い

この3つのポイントの中でも住宅ローン金利については不動産仲介の現場で特に深刻な相談を受けることが多くなってきています。

そこで、今回は私なりにこれからの金利上昇を踏まえてどのように住宅ローンを考えるべきか、また今後の住宅選択の注意点などをお話していきたいと思います。


いよいよ住宅ローン金利上昇が始まる

金利上昇局面へ変調したのは22年12月末。
前日銀総裁黒田氏のYCCに関して国債利回り誘導幅を0.5%に設定した頃からです。

そして、年明けの金利市場は急騰しました。

その後23年4月には総裁が現植田氏に変わり黒田氏の政策を基本路線として踏襲する方向で日銀の政策がコントロールされてきました。

これからの金利上昇シナリオの順番は下記三点の流れとなります。

①YCCコントロールの緩和と解除

23年7月末の日銀政策決定会合でYCCの上限余地を現状の0.5%~1%の範囲に緩和する方針が打ち出され、長期金利はさらに一段階上昇しています。

23年9月の現状では10年国債の利回り金利は0.7%超。

今後は、このYCC自体が撤廃となる方向で調整されるのではないでしょうか。

金融経済の教科書では本来、長期金利(10年国債利回り)は「市場で決定されるべき金利」となっています。

よって中央銀行(日銀)が現在のように自国の国債を購入してテクニカルに長期金利コントロールするべきではないのが通常の認識です。

②マイナス金利政策の解除

YCCコントロールの次はマイナス金利解除が起こると思われます。

マイナス金利とは各金融機関が日銀の当座預金へ預け入れる金の一部にマイナス金利を適用するというもので「資金を日銀に預け入れずに市場への貸出を優先しなさい」という目的があります。

マイナス金利の適用範囲は「一部」なのでこの取り組み自体は撤廃したとことろでマイナスインパクトは限定的です。

よってこの政策は「安定的な賃金上昇と物価上昇の流れ」が改善されれば即時撤廃になるのではないでしょうか。

実際に、9月9日読売新聞の記事では「条件が揃えば年内中にマイナス金利解除もあり得る」という日銀植田氏の見解があました。

読売新聞オンライン「マイナス金利解除「物価上昇に確信持てれば選択肢」…植田日銀総裁インタビュー」

賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になれば、大規模な金融緩和策の柱である「マイナス金利政策」の解除を含め「いろいろなオプション(選択肢)がある」と語った。現状は緩和的な金融環境を維持しつつも、年内にも判断できる材料が出そろう可能性があることも示唆した。

読売新聞オンライン「マイナス金利解除「物価上昇に確信持てれば選択肢」…植田日銀総裁インタビュー」

ただ、9月22日の日銀政策決定会合ではこの内容に関して火消しした発言に変わりました。

日本経済新聞「日銀、早期修正観測けん制」

23年の大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は22年実績を1.72ポイント上回る3.99%で約30年ぶりの高水準になった。

日本経済新聞「日銀、早期修正観測けん制」
日本経済新聞「日銀、追加の緩和修正見送り 金融政策の現状維持を決定」

長期金利の事実上の上限を1%とする長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)や、マイナス金利政策、上場投資信託(ETF)の買い入れなどの現行の緩和策を続ける。

日本経済新聞「日銀、追加の緩和修正見送り 金融政策の現状維持を決定」
日本経済新聞「マイナス金利解除で日銀総裁「到底決め打ちできず」」

日銀は22日に開いた金融政策決定会合で、金融緩和政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は記者会見で、金融政策を修正する時期は「到底決め打ちできない」と述べ、市場に浮上する早期の正常化観測をけん制した。

日本経済新聞「マイナス金利解除で日銀総裁「到底決め打ちできず」」

総務省が22日発表した8月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は前年同月比で3.1%上昇した。

日本経済新聞「マイナス金利解除で日銀総裁「到底決め打ちできず」」

22日の東京外国為替市場では円安・ドル高が進んだ。一時は1ドル=148円40銭台と、会合結果公表前の147円70銭台から70銭ほど円安に振れる場面があった。

日本経済新聞「マイナス金利解除で日銀総裁「到底決め打ちできず」」

③ゼロ金利政策金利の見直し

金利上昇シナリオの中で特に関心が高いのがゼロ金利政策の解除です。

ゼロ金利政策は2000年あたりからスタートし、一度見直しが入った時期もあったものの、総じてこの30年間の日本では「長期デフレ経済」=「ゼロ金利政策」というものでした。

政策金利をゼロ相当にコントロールする施策は、「短期金利」に連動するので住宅ローン変動金利の指標となります。

そのため、ここ30年間の日本の変動金利店頭金利は0%~0.5%上限という無風な状態が継続されているのです。

このゼロ金利政策の解除は日本経済や住宅ローン市場の大きなインパクトになると注目されています。

しかし、
「いつ解除されるか?」
「どの範囲までか?」
という疑問もあります。

この疑問が解決されるのは日銀が重視している「賃金上昇と物価上昇の安定継続的な流れ」を見極めてからとなるので、来年2月~3月の春闘による賃金上昇ペースが判明するタイミングとなるでしょう。

そうすると、4年4月あたりが大きな転換期になるのではないでしょうか。

変動が7割以上の日本の住宅ローン市場

類似国スウェーデンでは不動産下落へ

リーマンショック後に先立って「マイナス金利導入」を行ったのが北欧諸国です。

その中でもスウェーデンは「住宅ローン金利選択の7割が変動金利」で、この数年で政策金利が0%から4%に上昇したことにより不動産価格が22年前半ピーク時の10%超も暴落しているそうです。

日本経済新聞「変動ローン、住宅熱の盲点 「7割選択」日本に北欧の警鐘」
日本経済新聞「変動ローン、住宅熱の盲点 「7割選択」日本に北欧の警鐘」
日本経済新聞「変動ローン、住宅熱の盲点 「7割選択」日本に北欧の警鐘」

2019年、スウェーデン中銀はマイナス金利政策の解除を決めた。高インフレを抑えるため、今月21日には8会合連続となる利上げを決定し、政策金利は4%に達した。

日本経済新聞「変動ローン、住宅熱の盲点 「7割選択」日本に北欧の警鐘」

一部の住宅保有者は負担の重さに耐えられず、持ち家を手放した。1〜2世帯向け住宅の価格は22年前半のピーク時からすでに1割超下げた。市場ではさらなる価格下落を予想する声もある。低金利時代に住宅価格が高騰していただけに反動は大きい。

日本経済新聞「変動ローン、住宅熱の盲点 「7割選択」日本に北欧の警鐘」

一方、世界最大の住宅ローン市場を抱える米国では9割が長期固定を選択する。米連邦準備理事会(FRB)の利上げによって30年固定ローン金利は足元で7%を超える

日本経済新聞「変動ローン、住宅熱の盲点 「7割選択」日本に北欧の警鐘」

この記事を見て個人的には「政策金利が4%に急上昇したのに10%程度しか下落していないの!?」と率直に思いました。

リーマンショック時(2008年)に東京の住宅用地は半年で30%超暴落したことから比較すると、スウェーデンの10%超は暴落ではなく下落調整の様にしか見えません。

米国では9割が固定型金利

前述の記事では「米国の9割が固定金利」を選択していることも記載されていました。

米国経済は日本とは違い「インフレ経済」を前提としているので、固定金利がベーシックのようです。

日本のように「長期デフレ経済」では「変動」の方が有利になるのでしょうね。

変動か?固定か?は不毛の議論

過去から学ぶ

私自身、不動産業界経験27年となりますがこれまでの経験から「変動金利一択が正解であった」と言えます。

なぜなら、90年代のバブル崩壊後から日銀が政策金利(変動金利指標)において超低金利政策を踏襲し続けたからです。

しかし、この27年の中で2006年~2007年では政策金利が見直しされた珍しい期間もありました。

  • 2006年7月:+0.25%

  • 2007年2月:+0.25%

この2年間では計0.5%の金利の見直しがあり、変動金利は2.375%から2.875%に上昇しました。

この当時も金利上昇するという理由で住宅購入の駆け込みが多かったと記憶しています。

その後、ご存じの通り2008年リーマンショックによる世界の金融危機が起こり、再びゼロ金利に戻りました。

このように30年間超低金利政策を続けているものの、0.5%程度の政策金利の見直しがされた事実もあるのです。

では今後はどうなるのでしょうか?

金利動向は予測不可能

今後の金利動向がどうなるのかという点について結論を申しますと…「予測不可能」
経済論においても「金利と為替は予測できない」というのが通説です。

実は、その通説を痛感させられた私自身の経験があります。

私が20代の不動産営業マン時代に国立トップの統計学教授の方の住宅購入仲介を行いました。

教授は住宅ローンの金利選択の為に膨大な統計データーを分析し、私に見せてくれました。

頭の良くない私は無数の数字の羅列を見て内心「????」でした(笑)

教授そのデーター分析から固定金利10年を選択されたのですが、その後10年間住宅ローン変動金利の実行金利は下がり続け、結局その10年間は変動金利で返済していた方が有利であったということが分かりました。

どんな権威のある教授であっても金利動向を予測し正解することは不可能の訳ですから私達が為替や金利の予想をすることは難しいというのが結論であると思います。

但し一点だけ断言できるとしたらこれ以上の金利低下は不可能であること。

また、今後は金利上昇をそれなりに許容しながら経済発展を考えるべきタイミングに突入したということです。

これからは金利アップサイドを前提に許容すべき時代です。

変動でのリスクヘッジ4つ

ライフプランシミュレーション作成

今後のリスクヘッジの1つとして、まずは専門家のFPによる金利上昇リクを加味したライフプランシミュレーション作成をしてください。

実行金利でなく固定金利での支払い許容で判断

また、変動金利を選択するのは問題ありませんが今の変動金利実行レート0.4%程度での返済計画でなく、フラット35固定金利(現状1.8%程度)の金利で返済計画から検討判断しましょう。

ちなみに、金利0.4%と1.8%では以下のような支払い額の違いがあります。

「変動金利では支払いできるが、固定金利では到底支払えない」という世帯は、その金額の住宅ローンを組んでの住宅購入は断念しなければならないと考えるべきでしょう。

変動金利支払と固定金利の差分を貯蓄

前述のように仮に5,000万円を借り入れする方が変動金利を選択する場合には、固定金利返済計画との差額33,000円を強制貯蓄するようにしてください。

この差額を投資信託や定期預金に貯蓄していくことにより変動金利の上昇リスクを吸収できます。

将来的な資産性を分析し購入判断しましょう

最後に大事なのはやはり「購入物件」の精査です。

今後日本の課題は少子高齢化人口減少です。

この背景を元に自分が購入する予定の物件が10年後20年後にどのように変化していくのかを分析する必要があります。

米国では急激な金利上昇(この2年で+4%超上昇)によって不動産取引が前年比40%ダウンしていますが、地域によっては価格下落ではなく、むしろ品薄感から上昇に転じているエリアもあるのです。

このことから現在価値でけで判断せず、将来性・収益性・希少性などを再分析することが大事だと分かりますね。

変動固定ミックスも検討してみる

冒頭でもお伝えしたように、最近の住宅購入相談では物件そのものの相談よりも「住宅ローン金利選択」についての相談が多くなっています。

しかし、前述した通り「未来の金利動向は予測不可能」です。

そのため、金利選択を心配される方には「変動金利半分」+「固定金利半分」「ミックス型」での住宅ローン組み立てを推奨しています。

これにより金利上昇リスクは程よく分散されます。

例えば…

  • 思ったほど金利上昇しない場合:「固定金利を繰り上げ返済」

  • 思った以上に金利上昇した場合:「変動金利を繰り上げ返済」

とバランスよく返済計画を行うことにより、経済変化をコントロールできるはずです。

日本経済新聞「住宅ローン 個人の借入残高、過去最高」

5年に一度は住宅ローンのメンテナンスを行うべき

最後に、住宅ローン商品は「一度組んだら完了」という考え方はやめましょう。

「住宅ローン」=「金融商品」なので、5年に一度は見直すことをお勧めします。

当社では5年に1度、住宅ローン専門家による住宅ローンメンテナンスを無料で実施しています。

まとめ

  • 金利上昇局面のスタートはこれからと考えるべき

  • 変動金利上昇も視野にいれるべきタイミングへ

  • 変動金利上昇リスク対策を万全に行いましょう(LP・支払い許容・貯蓄・物件選定etc)

  • ミックス金利も検討してみよう

  • 5年に一度は住宅ローンメンテナスをしましょう

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