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ダンサーインザダーク

山間のバス停に2人
朝の時間帯を逃すと
次がやってくるのは4時間後
到着まであと5分
あなたは踊っているようにも
揺れているようにも見える
私は読みかけの文庫本から目を離せない
伊坂幸太郎の短編なら待ち時間で
読み終えられるから
音が消える
さっきまでの衣ズレや足音が止まっている
「ねーそれ面白い?」
「えっ面白いよ」
「わたしよりも?」
「比べるものじゃあないんじゃないかな?」
「疑問形を疑問形で返してきたね」
「そういう質問だったもの」
視界が暗くなる
掌の感触
あなたは
耳元で囁いた
「、、、、」
「ん?」
「聞こえなかった、なんて言ったの?」
バスがやってきた
先に私は乗り込んで
あなたは
逆方向に歩き出す
バスは発車する
あなたを残して
私はいつもの定位置の
後方の左側の窓際に腰を下ろす
あなたは踊っている
景色は後ろへ流れていく
ラインの通知音
意図を汲み取れないスタンプが届く
2分後
【静かすぎると不安になるね世界に取り残されたみたいで】
あなたのアイコンはパンダ
コンビニで買ったおにぎりを
齧るとパリッて海苔がコト切れる音が鳴った







雨ニモマケズ 風ニモマケズ