さんさんばんだい

行きたいところへ行く
西へ東へ北へ南へ　
感情は遅れてやってくる

福島県に住んでいながら会津磐梯山に登ったことはなくてそもそも山に登る登りたいっていくつかの障壁を乗り越えないと辿り着けない境地なようにも思う
たまたま山に登ってしまっただとか
流れで登ることになってしまったなんて
そうそうないだろうし
行ってみたい
って衝動が芽生えなければ
山へは行かないんじゃないですか

登山はするんですかって聞かれて
山には行きません
と私は即答する
常日頃いかにも山へ行く人の装いで
ありながら
私は山へは行きません

問　山
答　じゃないです

問　山ですか
答　山ではありません

山って呼ばれることって
山田さんとか山本さんとかじゃなければ
いや
山田さんであれば山田さんだし
山本さんであれば山本さんだ
山
疑問形を含むその一言は
どんなシチュエーションで
発せられるのだろう

我が名は安達太良山
山の化身
流行りの擬人化により
こうして地上に現れた
山
そうさ私は
山
だ
よくぞ見破った人間よ
私は山だ
あなたは何者だ
なんて返してみようかしらん

石原直樹さんは
世界地図を巡り巡っている
被写体と撮影者との距離が
人と人の距離
目で捉えられた
見えたものを見えたままに写している