【掌編小説】 斜面

ランドセルを背負ったテキストが坂をのぼっている。

坂は石畳になっている。
まばらな大きさの石鹸を敷き詰めてある。
坂の両脇には民家がある。
石垣の上で、ピクトグラムたちが香箱座りをして眠っている。

坂の中腹まで来たテキストが、後ろを向く。
テキストの瞳に、寄棟造《よせむねづくり》の赤い集落と、シイの木が群生する山が映る。

テキストの家は坂の頂上にある。
ママがテキストの帰りを待っている。
パパが、テキストのランドセルの中に入っている。

坂をくだってきたミュージックが、クラクションを鳴らす。
テキストが振り返って、ミュージックをよける。

テキストは坂をのぼっていく。
寄棟造の赤い集落と、シイの木が群生する山を望みながら。

〈起きる〉