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繊細な大胆な多様性

1971年にランコムのシッキム(sikkim/lancome)という香水が誕生した時、そこはまだ独立した王国だった。

チベット、ネパール、中国と隣接するシッキム
17世紀にチベットにダライ・ラマ政権が樹立されたとき対立していた一部の人々が亡命した地がシッキムで、チベットではこの亡命政権を「チベットの一部」と考えた。さらのそのチベットを属国扱いしていた清朝からも属国扱いされるという、シッキム王国は非常に覚束ない状況の建国であったらしい。
ブータンから侵攻されたり、ネパールとの間に戦争が起こったりと、周辺国に影響されながら、1975年まで王国は続いた。
英国の東インド会社がネパールに侵攻した時には互いに「敵の敵は味方」ということでシッキムはイギリスの保護国になった。
1815年のこと。
(なので王国としての存在は厳密にはこの時までになるのかもしれない)

最後の国王の退位
最後は独立したインドの保護下におかれるが、国王はインドと対立。
国内が混乱し、退位。インドに取り込まれ、現在は、シッキム州となっている。
歴史を反映し公用語はネパール語、チベット語も多数派だという。
文化や食習慣もチベットとネパールの影響がそれぞれ色濃い。
チベット仏教のほか、ヒンドゥ教やキリスト教の信者も多いという。
ヒマラヤ山麓の景観、歴史的な仏教寺院。

これらはすべて、今日知ったこと。ネット上の旅行サイトなどですぐにでてきた。これまで、何も知らずにいた。

アジアのグラデーション、仏教文化のグラデーション
先日訪れた白金の松岡美術館にはヒンドゥや南アジアの仏教美術のコレクションが常設されている。
日本の寺院を訪れて目にする仏像とは顔つきや体つき、ニュアンスが違っていて、同じ仏や神の姿を人は“自分たちを”モデルに表すのだなとあらためて感じ入った。
アジアに生まれ育ち、いくつかのアジアは旅もしている。
けれど、私の知っているアジアは全アジアの一割にも満たないのだと、あらためて想う。

シッキムのお姫様
ヒマラヤ山麓の美しい景観の中で、周辺国とせめぎ合いながら300年以上続いた王朝の美しい姫をイメージしたと言われる香水。
切れ長で高い頬骨の美女か、大きな黒目と褐色の肌のエキゾチックな美女か。
知らない方が、想像の翼が広がる。いい加減に無責任に。

Sikkim/Lancome/1971
パルファンタイプのコレクションで実は未開封。
中身もほぼそのまま。
アルデハイド、シプレー、フローラルの要素が絡み合い、ミステリアスな香水の形になったいるようだ。
小さなボトルの中に繊細で大胆な多様性が息づいている。

香り、思い、呼吸
9月27日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。


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