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寂しい香り

目が覚めて、寂しさを感じる朝がある。今朝もそうだった。

「寂しい」キービジュアルを探した結果
今日は寂しさ(と香り)について書いてみよう、そう思って愛用してるbeautiful ai https://www.beautiful.ai からキービジュアルを探した。
lonely,lonelinessで検索すると、俯いた人が一人ぽつんと佇む画像がどどーっと出てくる。稀に動物や人がいない山や海の自然の景観。一人でいることは寂しいということなんだな、とbeartiful aiの探し出した画像を見て思う。同時に、大自然の中に身を置いたり、時に一人になる時間は必要なこととも思った。
逆説的な「寂しさ」
そう考えていたら、唐突にパリのシャンゼリゼ通りが浮かんだ。この時期はクリスマスのイルミネーションもあり、世界一華やかでにぎやかな通りになる。大半は旅行客で、ハイブランドからマクドナルドまで通りを埋め尽くす商業施設のキラキラしたプレゼンテーションと目を輝かせてテンション上げているたくさんの人々、時々スリ。

賑わいの中にいるから寂しい
孤独というのは、シャンゼリゼ通りを歩いているような時に唐突に襲ってくるものではないかしら?
周囲で起こる笑い、さざめき、興奮の中で自分だけが取り残されて独り、ということを感じてしまう時。(仮にその時誰かと一緒にいたとしても)
何故なら寂しくないものを知って初めて寂しさを知るから。
恋愛で憶病になる心理が起こるのは、満たされて幸せをかみしめてしまったら、それが消えた時に知らなければならない悲しみ、寂しさに耐えられそうもないからだ。寂しさは暖か満たされた感情と表裏一体なのだと思う。

楽観があるから悲観という概念が存在する。
華やかな目抜き通りの脇道には静かな人影のない細い道がある。
この対比のなかで目抜き通りはますます華やかさを増す。
このNOTEのキービジュアルは「ENJOY」を指定したら出てきたもの。何の気なしに選んだけれど、よく見れば観覧車には誰も載っていない。誰も楽しんでない。とっても寂しい一枚だったかもしれない。

「寂しい」という名前の香水はあるか?
さて、lonelyなんとか~のようなネーミングの香水はあるのか。自分でも調べたけれど、lonelyやlonelinessの名を冠する香水は見当たらなかった。生成AIにも調べてもらったけれど同じだった。
人は寂しい思いをするために香りをまとうわけではないものね。多分。

「寂しい香調」とは?
まず柑橘系や、フルーティー系は違う、匂い立ちが良いので元気だ。
次にムスクやアンバーなどの動物系、セックスアピール、官能に気持ちを取られるのでこれも寂しいとは異なる。
木の香りや樹脂系の香りは、保留性に富んで落ち着つきがあるから何か寂しいに通底させられるかもしれないが、どちらかと言えば静けさに寄っているかも。
香りの創作において調合の結果が何かの気を引く、心に残るものを調香師は目指しているはずだから、結果が「寂しい感じになる」というのは、プロセスから考えると想像しづらい。
修業時代、調合が上手くいかず香料同志の相殺が起こった時「動きがなく寂しい」と評価をされたことがある。

ゲランのシャンゼリゼを贈った
先ほどシャンゼリゼの光景のことを書いたけれど、ゲランのシャンゼリゼという香水がある。
昔、この香水をプレゼントしたことがある。
「貴方はあの目抜き通りのように、いつもたくさんの人に望まれ、会いたい気持ちを起こさせ、それを受け容れて周囲をにぎやかにしている」というメッセージを込めた。とても喜ばれた。喜んでくれたことに私の気持ちも呼応しながら、瞬間的な寂しさが心を通り抜けた。
「私はそこにいつまでいられるのかしら?」

寂しさの宿る場所
寂しさはひっそりした裏路地にあるのではなく、笑顔行きかうメインストリートにある。
寂しい香水という”もの”はないけれど、華やかで明るいテーマの香りが、それゆえに自分の寂しさを際立たせる時、それは、この上なく寂しいフレグランスがそこに存在していることになる。
寂しい香りは、私がシャンゼリゼの香水を贈った時に過った感情のように、明るいきらめきの中に一瞬放たれるものかもしれない。

理由もなく「寂しい」と思って始まった一日、ゲランのシャンゼリゼをムエットにとってみる。行き交う人々の幸せそうな会話か聞こえてきそうだった。

香り、思い、呼吸。
#note100日
#コルクラボ
#adams

champ-elysees/Guerlain/1996
調香師はオリビエ・クレスプ(olivier cresp)
ミモザの香るトップノートで「シャンゼリゼに春が来た!」という
喜びのテンションを著しているらしい。ヨーロッパではミモザのような
黄色い花の開花から春が始めると言われてるそう。





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