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チェリーブロッサム 3月31日~365日の香水

散ればこそいとどさくらは
また桜の季節、とても短い桜の時が巡ってきた。
一斉に街路を染め上げ、見事な散り際。日本の固有種と言えば梅や橘だけれど、
中国から伝来の桜に古から日本にいる人々は魅せられてきた。
“花見”の起源は、日本書記に見つけることができる。大王伊那本和気が催した宴で、高く掲げた盃に桜の花びらが舞い落ちたという記述があったと記憶している。
一方、宇治拾遺物語には、花の散り方を見て農家の少年が泣く、というくだりがある。これは一説には桜の咲き具合、散り具合で秋の収穫時期の豊作、凶作を占うような風習が当時の農村社会にあったためという。
とにかく、千年以上前から、私たちはこの花を待望し、散りゆくさまを惜しみながらもその潔さに圧倒されてきたわけだ。


ジャンポール・ゲランとの出会い
5年前には、このようなNOTEも書いた。
桜の香りにはβフェニルエチルアルコールとクマリンが欠かせないと思うけれど、その主香をどういうアレンジに誘うか、それが調香師のイメージのふり幅なのかもしれない。

20世紀の終わりに、ゲラン家当主のジャン・ポールゲランが日本を訪れ、満開の桜に感激し、それを愛でる花見の文化への敬意から「桜」をテーマにした香水が誕生した。
以後、桜が“香りの”モチーフにはもてはやされるようになったと私は考えている。
明治大正期に資生堂が輸出用に手がけた日本風の香水は椿や藤がテーマだったことからもうかがえるように、桜は、香りで注目される花では長い間なかった。
曖昧な記憶だけれど、桜がうたのモチーフの主流となる古今集以降も花の満開ぶりや散りざま、そして、桜色を取り扱うことがほとんどで香りへの言及はかなりマイナーだったはず。
香水の名門ゲラン家と日本の桜との出会いが、この花の香りへの注目を一気に高めたと私は考えている。
ジャンポールゲランが発見し創出した20世紀最後の香りの文化かもしれない。

cherry blossam/guerlain/1999
この香水の紹介を待っていたかのように、気温は上昇し私たちは春を迎えた。
きっと様々の旅たちやスタートもあるのだろう。
この桜は、風に舞うひとひらのような軽やかさ。
淡く、明るいフローラルで、グリーンティーを核に桜を想起させる花香をシトラスが包む。
花を見上げて、笑顔がほころぶ、新しい季節。
その後もゲランからは年毎のバージョンが出たりしている人気の定番になったチェリーブロッサム。
元祖のものは日本の桜への感動がやはりストレートに伝わってくる。

香り、思い、呼吸

3月31日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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#365日の香水

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