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スイス[17] 欧州の鉄道(6)TGVの夕食(上)

202202191729スイス[17] 欧州の鉄道(6)TGVの夕食(上) A. J.

 物語的には前回の「スイス[16]スイス人は職務に忠実?」の続きです。

 先にお断りしておきますが,私は日本の鉄道におけるお弁当つまり駅弁の文化を否定するつもりは全くありません。最近では列車の中でお弁当を食べている乗客を見ることはあまりありませんが東京駅をはじめいわゆる駅ナカの商売としても駅弁が繁盛すればいいな,と思います。
 ただ,個人的には列車食堂(車内食堂)も好きです。私が子供の頃は在来線にも食堂車をもつ編成の特急列車がよく走っていた記憶があります。しかし次第に食堂車は廃止され新幹線だけになりついには新幹線からも食堂車が無くなりました。
 食堂車廃止の理由は経営的問題からだったのでしょう。しかし流れる車窓を見ながらコーヒーを飲んだり長距離の乗車だと食事それも温かい食事を摂るのはなかなか楽しいものです。そういえば現実としてのオリエント急行は食堂車での豪華なメニューが自慢の一つでしたし(*1),映画やTVドラマの「オリエント急行殺人事件」(アガサ・クリスティー原作)でも食堂車の場面がよく出ます。今でも欧州(と言っても私はスイス・フランス・ドイツ・オーストリアの列車しか知りませんが)の長距離列車では多くの場合食堂車があるようです。

 さてスイス・ローザンヌ駅(Lausanne)5番線を出発するパリ・リヨン駅行TGVに無事乗り込んだ私ですが,気になっていたことがありました。そうです,食堂車です。
 列車旅行で私が積極的に食堂車に行く理由の一つは,初めての街だとどこにレストランがあるかわからない,あるいは値段があまり高い店は避けたいという考えがあり結果リーズナブルなセットメニューがある(ありそうな)食堂車を利用して行き先の街で食いっぱぐれないようにという考えからです。ちなみに今回乗車したTGVに食堂車があることは事前に調査済みでした。

 今回乗車したTGV(一等車)には若い男性の客室乗務員がいました。彼は私の重い荷物を扱う手伝いをしてくれたり,のちにパリ・リヨン駅に着く直前に私がたずねた駅のタクシー乗り場への行き方を丁寧に教えてくれました。
 ローザンヌ駅を出発してすぐ,私がその乗務員に食堂車のことを聞こうと思ったその直前です。なんと彼が各乗客にこう言ったではありませんか。
「ご希望のお客様には夕食の用意がありますがどうなさいますか? ご心配は無用です。お食事代はチケットに含まれております」
 つまり機内食ならぬ車内食があったのです。よかったぜ!一等の切符買って。

(この項続く)


(*1)オリエント急行の時代(中公新書)/平井正/中央公論新社/2007年1月25日,p.p.4-10

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