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12月28日まで大阪がアートになる「Study:大阪関西国際芸術祭」

NFTの本を書いたことから、何かとアーティストさんや、キュレータさんとお話しする機会が増えているITコンサルタント&講師業の足立明穂です。

あ、最初の写真の「ラバー・ダック」は、12/25までしか浮かんでませんよw それに、今回の主題の芸術祭とは別イベントやし(まぎらわしいことするなよ ^^;)

知人から、大阪で開催されている「Study:大阪関西国際芸術祭」のプレイベントに参加できる機会をいただき、一般公開の前に見学させていただいたので、その内容を紹介します。

「Study:大阪関西国際芸術祭」は、大阪市内のあちこちに会場があり、メインは大阪駅直結のグランフロント地下2階で行われているのですが、それ以外にも、中之島センター、船場、西成など、いろいろな場所で開催されています。それらをバスで巡るアートなプチ旅行(?)の特別プログラム。

宇宙ので計測したデータなどのアートから、西成のアル中のおっちゃんが作るアートまで、幅広くて頭も心も右へ左へと揺さぶられました。そして、バスツアーではありますが、あちこちの会場を歩き回るので、身体もあちこちに物理的に移動して、帰りは、ここ最近感じなかった、まさに、心身ともに疲れているけれど、とても心地いい疲労感を感じる体験でした。

「Study:大阪関西国際芸術祭」とは?

「Study:大阪関西国際芸術祭 vol.3」(以下、本芸術祭)は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を契機に、ソーシャルインパクト(文化芸術経済活性化や社会課題の顕在化など)をテーマとした世界最大級のアートフェスティバル「大阪関西国際芸術祭(仮)」の開催をめざすにあたり、それらの実現可能性を検証するためのイベントです。

Study:大阪関西国際芸術祭 公式サイトより

2025年に開催される大阪・関西万博のプレイベントとして開催されていて、今回で三回目。
世界最大級のアートフェスティバルを開催しようというのが目的になっています。

なので、単にアート作品の展示だけにとどまらず、アートを軸としたビジネスのピッチなどもあり、アートに関するあらゆるものが集合しているような状態。

会場も大阪に20か所以上あり、アーティストキュレーターも数えきれないほど参加しています(先の一覧に載っていない人たちも沢山!!!)。

すごく幅広いイベントなので、「え?」、「ほぉー!」、「なるほど!」、「うーん・・・」、「これはないわ・・・」感情が揺さぶられまくりますw

では、12/22の午後に参加した6か所を一気に巡った内容を紹介していきましょう!

コズミック・エネルギー:宇宙の起源

京都大学土佐尚子教授の作品「Sound of Ikebanaシリーズ」と、野村康生さんの宇宙を旅したプレートと地上のさまざまな地域に置かれたプレートを集めて宇宙を表現した作品があります。

これは、無重力状態での音を計測し、そのデータを3Dの画像で表現。
IT屋なので、この辺は、もう、それだけで、ゾクゾクしますw

数値データというビッグデータやデータサイエンティストであれば、肌感覚でわかるようなことを、視覚化し、アーティスティックに見せるというのは、いいですよねー!

「見える化」とか、グラレコのような、感覚的にとらえることを、視覚化して共通認識に仕立て上げるというのは、アートとサイエンスの融合として面白いところ。一瞬で理解できる、そして、感情を動かすことができるというのには、今から重要なスキルになってくるだろうなぁって感じています。


野村康生さんの作品は、中央につられている5つのプレートが重要な意味を持ち、すべての根源である木火土金水を表現しています。

そして、それぞれが、それぞれのエレメントを象徴するところに取り付けられ、そのうちの1枚は、宇宙船の外に取り付けられ宇宙空間に晒されて地球に戻ってきたものです。

宇宙に行って、宇宙空間で、紫外線や電磁波や太陽風などを浴びてきたプレートが目の前にあるということに感動を覚えます(え? わたしだけ?w)。

いきなり、なんだか、高度な科学技術と、宇宙空間という壮大なスケールの話から始まって、アーティストの野村さんが熱く語り、最後は、ツアーで来ている人たち(約15名ほど)と「ハグしましょう!」とか盛り上がってましたw

バスに乗り、次の会場へ

『STREET 3.0:ストリートはどこにあるのか』

船場にある船場エクセルビルが、会場です。

余談ですが、この後、落ち合った知人が、ここのビルのオーナーと知り合いでした。世間は狭いw

ストリートがメインテーマになっていて、エントランスもスケボーのハーフパイプを模したような状態になっています。

まず、2階は、「香り」の展示。

ガラスの容器がさかさまに置かれていて、それを持ち上げて香りを楽しみます。

もう、この時点で、やられたーーー!って思ってしまいました。
「香り」って感情と結びつくのに強烈なアイテムで、さらに、香りと感情はセットになって、脳にしまいこまれるので、感情を揺さぶるのには、めちゃくちゃに面白いものなのです。
それをアートに仕立てるとは!!

キュレーターの緑川氏によると、おそらく日本では、ここでしか体験できない作品の一つが「地球最後の人とAI」。
タイトルからして、おぉ!って思ってしまうし、その「香り」って!!!!

気になる香りは、なんとも言葉で表現できないものであり、何に似ているとも言えない香りでした。ぜひ、船場エクセルビルの2階に行って、体験してみてください。

一番奥に展示れてますよ!

3階は、ストリートアート

壁に、ドーン!

で、このアーティストのお話を聞くと、「VERYONE」という名前をかいていて、世界中のストリートで名前を書いて、広めるというのを同じジャンル(?)のアーティストたちと競っているそうなのです。
そういう世界があるって、知らんかった・・・・

好き勝手に、好きなことをかいてるだけなんじゃね?とか思っていました。彼らには、彼らのルールや流儀があるのですよね。

この活動を何十年も続けている。

これからは、なんか、「落書き」って思っていたものから、アート作品として、また、彼らアーティストの流儀みたいなものが見えてくるようになりそう。こういう視点の変化が起きるのが楽しい!

「橋脚」が出現!

ここは、入った瞬間に、「工事現場?」って思わせるような展示です。
解体する橋脚を再現し、そこに自ら撮影した写真を張り付けています。
でもって、金網で囲って工事中であることも再現。

いやー、もう、だんだん頭が追い付かなくなってきてますw

消えゆく建築物とかを記録し、作品とする・・・
なんか、もう、追い付いてません(^^;

ハイテクなアートといえるのか、ハックというべきか・・・

海外の方の作品(?)が2点。
といっても、モノがあるわけではありません。記録映像が流されているだけ。

アラン・バーソルの「Dead Drops」。
通路に面した壁にUSBメモリを埋め込みます。

でもって、そのUSBにノートパソコンを接続し、埋め込まれたUSBのメモリを使って、見ず知らずの人たちが「コミュニケーション」するとう作品です。

ベタな言い方をすれば、昔、民宿などに置いてあった「宿泊ノート」のようなもの。
そこに泊まった人が、あれこれ、書き込んで、思いや感じたことなどを書き込んで、他人がそれをよんで・・・

それを、USBメモリを使ってやるってことですね。

あえてのインターネットの掲示板とかではないところに意味があって、その場所に行った人でないと情報のやりとりができない。

なかなか面白い発想です。でも、これって、アート?w


もう一つは、サイモン・ウェッカートの「Google Maps Hacks」。
スマホをたくさん台車に入れて、ガラガラと引っ張りながら、車道を歩いています。

これで何が起きるのかというと、Googleが、スマホの位置情報を「誤認識」して、車がノロノロと走っていると勘違いします。

その結果、実際の道では、ガラガラで、車が走っていないのに、Google Mapでは、赤で渋滞している表示になるのですねwww

こうやって、Google Mapをハックするw

めちゃくちゃ、面白い発想。だけど、これも、アート?www

データサイエンスがアートになる??


AQV-EIKKKMの「アルゴリズム」という作品。
未来感満載で、個人的には、頭が沸騰するほど面白い!

さまざまなアーティストを年齢や性別、国籍、SNSのフォロワー数、作品数などなど、あらゆるデータで数値化し、それを順位付けしていきます。

そして、それぞれのパラメータを色で表し、アーティストの特性として「作品」にしてしまう。

このパネル1枚、1枚が、一人のアーティストの特性を表現しています。
ただ、誰かはわからないように、番号で表示されているだけ。

これこそ、人間では扱いきれない大量のデータをアルゴリズムで分類し、「見える化」し、その算出結果をも作品にしてしまう。

ジェネレーティブアートのようなNFTでも多く出てきた手法をさらに推し進めたような作品ですね。興味深いです。

釜ヶ崎!

大阪の西成。そこには、「釜ヶ崎」と呼ばれる地域があります。具体的な地名があるわけでもなく、あいりん地区ともよばれていたホームレスが多く集まる場所です。
そこでのアート活動を再現し、展示しています。


壁も天井も埋め尽くす筆文字は、釜ヶ崎にいる人たち、来た人たちが実際に描いた筆文字。人それぞれの、さまざまな感情が噴出していて圧倒されます。


洗練されたアーティストの刺さる一言ではなく、大衆の声のようなものが感じられますよね。

後でも出てきますが、ホームレスで飲んだくれのおっちゃんも、腕に覚えのある人たちもいて、びっくりするような作品も作ります。

そして、あの「Chim↑Pom」!!!

Chim↑Pom(チンポム)は、めちゃくちゃ気になっていたアーティスト集団なので、こんなところで作品に触れられるとは、思ってもみなかった!!
でもって、衝撃だったことで、写真撮影もすっかり忘れてしまっていた(^^;

Chim↑Pomが表現する「ストリート」の作品で、足の踏み場もない状態w

これは、ぜひ、何も知らずに、船場エクセルビルで体感してください。めちゃくちゃ面白いインスタレーションです!! いや、人によっては、嫌悪感を感じるかもしれないけど、それが、「道」の一つの表情なのですよね!!

西成(釜ヶ崎)エリアの展示

船場エクセルビルで、かなりお腹いっぱいなのですが、バスに乗り、西成へ。先ほどの釜ヶ崎と呼ばれるエリアですね。
そこにも展示会場があります。

kioku手芸館「たんす」

元々は、タンスを売っていたお店ですが、そこを洋裁や手芸などの工房、作品の販売を行っています。

いろいろな国の人も釜ヶ崎にはいるので、そういう他国の文化なども交えて新たな作品を作るといったこともやっているそうです。

また、後継者問題についても、フォーカスして活動しているとか。

1点ものばかりになるので、気になる方は行ってみては?
今回のツアー中にも、何名かが購入されておられました。

ゲストハウスとカフェと庭 釜ヶ崎芸術大学

いやもう、個性の塊みたな人たちが集う場所。
ホームレスのおっちゃんたちもひっくるめ、釜ヶ崎にアートを取り入れて、釜ヶ崎芸術大学(通称:釜芸(かまげい))として活動しています。

庭に、みんなで堀った井戸があって、水が出すぎて崩落したとか(え???)。でもって、今は、コンクリートで固めて、さらに、このブロックなども自分たちで作ったそうです。

ウェルカムソングで、釜ヶ崎大学の「校歌」を披露、いや、一緒に唄ってくださいってことになりましたw でもって、歌が終わると、「これで、みなさまも、入学できました!」
いやはや、ほんと、ここは、テンション高めの個性豊かな人たちですw

この釜ヶ崎大学には、現代アートの森村泰昌がデザインしたゲストハウスもあります。

宿泊もできるそうですが、凄い部屋ですw

屋上からの眺めは、なかなか、考えさせられる風景。

アベノハルカス、通天閣のてっぺん、星野リゾート、西成警察、そして、国籍のない子供たちが通っていた施設なども見えるのですよね。
なんか、いろいろな意味でも縮図のような気がします。

で、屋上に来た本当の目的は・・・・

ドイツ・ハンブルクをベースに活動するアーティストTONAさんの作品です。

この施設には、いたるところにアートがあって、不思議な空間。ホームレスのおっちゃんや、ここに流れ着いてきた人たちの思いが作品になっています。しかも、びっくりするような完成度の高いものが多い!

先に紹介した飲んだくれのおっちゃんの作品です。たこ焼きを口に運んで食べます。で、食べたたこ焼きは、手元の船(たこ焼きが入ってる入れ物ね)に戻ってきますw 芸が細かい!w

こういうところに、不思議な(?)アーティストが埋もれているのですよね。でも、悲しかな、釜ヶ崎の平均寿命は短くて75歳だそうです。

日の出湯はなれ こいさん路地 長屋

薄暗くなってきて、寒さも一段と・・・
でも、まだまだツアーは続きます!
さらに、歩いて、釜ヶ崎エリアの長屋。
ここにも、不思議なアートが展示されています。

キム・ジェミニさんは、古くからある工場で使われた大きな機械が転売されて、さまざまな国を巡っていくのを追いかけて、資本主義や共産主義など、さまざまな地域を巡っていくのを記録。
常木 理早さんは、スポーツでは身体の動きなどを採点して評価するのに、日常の動作はそういうことはなく、何かの目的だけが求められる。そうではなく、日常の生活にも評価採点といったものを組み合わせるという考えで、物干しざおを体操の平行棒と見立てたらどうなるのか?といったことを作品にしています。

ICHION CONTEMPORARY B2

さて、すっかり日が暮れて、このツアーでは、最後の場所になります。

書道という枠組みから、アートへと変化させていった井上有一と、彼にに学んだ人たちの作品が展示されています。

山本 尚志さんの「マシーン」。文字の順番が入れ替わっているのは、「行」という枠組みから外れるという発想だそうです。
同じく山本 尚志さんの「モーターショー」。ミニカーのケースに描けば、もうここはモーターショーになりうるということを表現しています。
グウ ナカヤマさんの作品。文字を突き詰めていき、鳥を表現した「文字」
日野 公彦さんの作品。心象を1色で表現。書道家なので色彩表現するのに興味がないというのを言われていたのが印象的でした。
日野 公彦
ハシグチリンタロウさんの作品。未来の文字というものがなくなった世界でのVRゴーグルに装飾する未来人の作品をイメージしているそうです。世界観は面白かったです。

ツアーを終えて


ということで、グランフロントまで戻ってきました。

一気に、色々見たので、本当に、心と頭を揺り動かされまくりです。

よくわからない作品、面白いと思った作品、なるほど!と発想がひっくりかえりそうな作品などなど、ほんと、これほど揺さぶられた半日は、なかなかないなぁと思いました。

こんなアートに関するツアーって参加したことがなかったので、めちゃくちゃ楽しかったし、だからこそ、アートって広がりがあり、人間の根源的な感情に直結しているものじゃないかなって再認識しました。

仕事柄、NFTや生成AIなどテクニカルな方面からアプローチしていますが、もっとアートな面からも考えていかないといけないし、そこに大きなチャンスや、新たな世界観が構築できそうだと、帰りの電車の中では、興奮している感情とは裏腹に(?)、あちこち歩き回って、身体が疲れているのとで、それは、それで、すごく心地いい時間でした。

マジ、アートは大事です! いろんな刺激を受ける!!

12/28まで、あちこちで、いろいろやっているので、お時間ある方は、ぜひ、足を運んでみてください。いろいろな会場を見て回れば回るほど、自分の視野や感情、考え方、価値観などが枠を超えて、広がりますよ!

https://www.osaka-kansai.art/

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