重力があるという幸せ

浮遊感が私の体を突き抜けた。私は目を覚ました。時計を見ると7時20分。7時30分には家の前にいつも学校に一緒に行く友子が来てしまう!急いでベッドから飛び出した。飛び出した瞬間、頭が部屋の天井にぶつかってしまった。私、そんなにジャンプ力あったかなと思ってあたりをみわすと、目覚まし時計、学校指定の鞄、スマホが地面から浮いて宙に舞っている。なんでー!と思ったが、自分も浮いている!とりあえず学校に遅れそうなので、急いで平泳ぎをしてスマホをキャッチした。右上に目をやると7:24だった。まずいまずいと思って今着てるスウェットを脱いで左の方に浮いている制服を引き寄せて、腕を通す。浮いている状態で着替えるのは初めてのことでとてももたもたしてしまった。時計は7:28。あわてて今度はクロールで家から出た。そこには驚くべき光景が浮かんでいた。なんと出た先は、宇宙だったのだ。真っ黒な世界に遠くに見える小さく白く光る点が無数にある。ふっ、と後ろを振り返るとそこには地球があった。地球は緑と青の模様に包まれたとてつもなく大きい球体で、ぼんやりと周りが青く光っていた。その光がとても幻想的で、私はしばらく声を失っていた。ただ呆然と地球を見ていたら、地球の光がどんどん大きくなってきた。眩しいぐらいになってしまった光を私は目を細めながら見続けていた。しかしとうとう目を瞑らないと目が痛くなる所まで眩しくなってしまったので、私は仕方なく目を瞑った。


目を開けると私はベッドの上にいた。ちらっとスマホを見ると時刻は7:30を表示していた。玄関のチャイムがけたたましく鳴っていた。友子がもうきてしまったみたいだ。
「おはよ〜今日も重力があって良かったよねー!」
「なんでよ、当たり前じゃん」
そう言って、ニコニコしている私を友子は不思議ちゃんを見る目で見ていた。