保険の保険の保険

なぜだ、なぜ生きている。俺は確かに死んでいるはずだ。ついさっきお昼ご飯はラーメンを食べに行こうと思い立ち、駅に向かった。丁度駅につくその手前の交差点で車にはねられたのだ。自分がはねられた瞬間は覚えている。車に激突した瞬間自分が回転して腕の骨が音を立てて粉砕されるのを感じた。はじめは痛みはなく、感覚だけだった。しかし地面に叩き落とされた後、言いも知れぬ背筋の冷たさと周りのじんわりとした温かさを感じた。恐らく助からないであろう血の量が自分の周りに流れ出ていたに違いない。そして激痛に耐え切れぬまま、俺は息絶えた。しかし、恐るべく事に、俺はベッドで目覚めた。悪い夢だったのだろうか。それにしてはおかしい。異様にリアルだ。しかし、身体のどこを調べてもそれらしき後もない。まるで自分の体では無いような気分がするほど、身体に傷はなかった。悪い夢だったと自分に言い聞かせてベッドから降りた。壁に掛かっている時計を見ると昼過ぎ前だった。少しお腹がすいたような気がしたので駅前のラーメン屋に向かうことにした。リベンジだ。こんなに命懸けのリベンジをするやつはいるまいと内心おかしくなりながら向かった。自分が事故を起こした(夢かもしれないが)交差点に着いた。すると、ふとおかしなことに気づいた。花が置いてある。自分が死んだところにだ。おかしい。明らかにこれは自分は事故にあっている。それならばなぜ自分はここに無傷で立っているのだ。ここで考えついた。これは他の人の死を経験したのだ、と。その時俺は幽体離脱していて、擬似的に夢の中で他人が死んだその瞬間に中に入り込んだに違いない、と。そうなると死んだ人には申し訳ないが、死ななくて良かった等と考えながらラーメン屋に入った。ラーメン屋に入った瞬間、事故は起きた。アルバイトの女の子が粉の入ってる袋を落としたのだろう光景が目に入った。その瞬間、あたり1面が燃えるように周りを取り囲む赤い光と凄まじい熱と共に爆発した。粉塵爆発だ。空気中に舞う細かい粒子に火花が飛び着火すると周りの空気を取り込んで大きな爆発を起こす。俺は、また死んだ。

気がつくとベッドに横たわっていた。俺は精神的疲労でクタクタになっていた。夢か現かわからないところで二度も死んだのだ。鏡で顔を見るとクタクタにやつれているはずの顔はやけに綺麗で健康そうない色をしていた。その時、電話がかかってきた。俺は急いで携帯を探し出し、電話に出た。
「もしもし」
「こちらコピークローン保険機構の者ですが、先ほどお母様がお亡くなりになられましたのを確認いたしました。二回目のご利用という事で保険適用内でしたので、2時間以内にコピークローンを自宅の寝室にお送りいたします。」