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「アフター」後の世界とは、、話題書籍を読み終えて

■書籍の紹介

■はじめに

「アフターコロナ」への準備や「企業のオンライン化」が急務とされる中、世の中のオンライン化への動きは望まぬ形で爆進する形になりました。

手探りで大手から中小の企業がやれウェビナー、やれデジタルマーケティングと謳っている中で、今後の世の中の動向を探りたいという目的から本書を選定いたしました。

『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』

驚くことに、本書が発行されたのは1年前にも遡る2019年3月でした。

当時からもオンライン化はどこの企業も始めていましたが、進捗としては緩やか、むしろ昔からオフラインでの活動がメインだった企業は「そのうちやる。」のスタンスだったかと思います。

1年で、これ程までに情勢が変わってしまったのは改めて恐ろしいと感じるものです。

■アフターデジタルとは

書籍の題名にも記載されている、このアフターデジタルという言葉は端的に言いますと、オンラインとオフラインの概念が消えた世界の事を指します。

現状の日本など、明確にオンラインとオフラインを区分けしている状態を反対にビフォアデジタルと定義しています。

中国を始めとした大国やエストニアといった小国からアフターデジタルの世界になりつつあると本書は説いています。

そこでは、国民単位で生活のありとあらゆるデータが管理され、購買行動や消費行動の際の正確なアプローチや都市開発といったインフラ設備の整備材料にまで落とし込まれ利用されています。

エストニアでは居住者に電子居住権を与え、国民や外国人は皆そこへ登録を行い生活の基盤となる光熱費等の支払いなどをしています。

中でも特徴的なのは誰がいくら蓄えを持っているかを可視化する事ができる点です。一見プライバシー侵害の様な気もしますが、裏には犯罪抑制などの狙いがある様です。

またスウェーデンではSF映画さながら、肉体に小型のチップを埋め込みそこでの決済が完遂する仕組みを既に整えています。

日本国内のマーケティング事例など直近で漁っていた身としてはこれらの国の進化・取り組みは非常に目新しいものでした。

中でも最先端・先陣を切るのは中国です。

■時代の変容を追う

具体的に中国の取り組みをインプットする前に、まずは中国が築き上げたOMOという概念からご説明をします。

OMOとは下記引用させていただきます。

OMOとは、「Online Merges (with) Offline」を略した言葉です。2017年9月ごろ、元GoogleチャイナのCEOであり、現シノベーションベンチャーズの李開復(リ カイフ)が提唱して広まった言葉です。日本語では「オンラインとオフラインの融合」を意味します。このOMOは、オムニチャネルの次を行く新しいマーケティングの概念として大きな注目を集めているのです。

いわゆる先の章で定義つけられたアフターデジタルの世界をOMOという様に呼称します。

従来はWebが発展してからというものO2Oマーケティング等が企業の目指すべきところとされ、日系企業のあらゆる企業が1つの指針に掲げていました。

O2Oは「Online to Offline」の略で「On2Off」と表現されることもある。ネット上(オンライン)から、ネット外の実地(オフライン)での行動へと促す施策のことや、オンラインでの情報接触行動をもってオフラインでの購買行動に影響を与えるような施策のことを指す。

ところがもう近年ではO2Oは古く、目指すべき所はOMOという様に変化をしています。

中国の有名企業の多くは、デジタル上、リアル上でのユーザーの行動は全て同一として捉えています。

どういうことかと言いますと、例えば道端で水が欲しい人の行動としては近くのコンビニで買う事もあれば、30分後に家に着くのであれば着く時間を見越してECを使う場合もあるという事です。

つまり、ユーザーはその時、その時で自分にとって都合の良い選択をしておりそこの考えにオフライン、オンラインという概念はないという考え方です。

具体例として、中国では無人コンビニが流行しています。

無人とは言えども、実際には店員の様な役目をするスタッフは常駐しており、あくまでも決済の際のレジ活動を無人化しています。

これは正に、オフラインという概念のリアル店舗という立ち位置ですが、中国企業では各店舗毎に監視カメラを設けてユーザーの行動を表情や僅かな動作(棚に戻す迷いの行為)などを追ってデータ化しています。

上記の仕組みと店のスタッフの力を使い、来店の際に「コーヒーが好きな顧客」が来た際にはスタッフが声をかけおすすめの商品を紹介するなどのセールスの機会を作っています。

一連の流れは、僕たちが普段運用しているWeb広告と変わらない動きでして興味関心のあるユーザーへ適切な情報を届けてコンバージョンへ導いています。

確かに、この様な動きをリアル店舗でされますとオンラインだから~という概念は通用しないのかもしれません。

一方で恐ろしいのは、ここで集めたデータを今度はマーケティングの材料として自社に活かす、他社へデータとして販売する所まで見えている点です。

正にコンビニという1つの店舗がプラットフォーム化しており、2次3次のビジネスの機会を創り上げている状態になっています。

■国民のスコアリング

データを取り入れた事例として、店舗以外にも人ベースの話しもあります。これもまた、今後の世界を変えていく概念になるかもしれません。

中国最大の大手企業アリババ傘下のアント・ファイナンシャルが手掛けるジーマ・クレジットというサービスです。

これは中国で約半数のシェア率を誇るアリペイという電子決済サービスの1つのサービス内容です。

元々決済サービスとして有能なアリペイには膨大な購買、サービス利用の際のデータが蓄積されており、利用者を様々な指標からAIを用いて「信用スコア」と呼ばれる指標でスコアリングをしていきます。

加えて、ユーザー自身も登録情報を充実、例えば出身大学などの情報を記載すると信用スコアが積み重なる仕組みになっています。

これにより溜まっているスコアに応じて街中で受けられるサービスの充実や社会的地位も獲得できるようです。

1部では合コンでモテる材料にもなっており、見逃せない数値になっています。

更に、本来であれば会員登録等の行動を起こさせなければ知る由もない個人の出身大学等の情報は全てアリババに入るという形です。これにより、ECや生活費の支払い等の情報以外を公的に集めることに成功しています。

■データが文化を形成する世界になる

前章で紹介をしました「信用スコア」たる概念があると、国民のプライバシー侵害や差別に繋がってしまうのでは?という懐疑的な意見もありました。

実際は逆で、今中国では信用スコアによる文化形成がされています。

どういうことかと言いますと、まずは中国の国柄について。中国は性悪説の考え方が強く、「我先に得をする。」という考えが根強い国でした。

日本でも割り込みなんてので中国人のマナーの悪さが一時期話題になりました。一方で日本は性善説的な考えが強く、神様が見ている、お天道様が見ているという根底的な考えからマナーの良さは世界基準でもあります。

中国では、信用スコアの社会浸透とともに、スコア上昇を目指したマナーの厳守が増え始め数年前とは異なった環境にあると言われています。

加えて中国企業の多くは、日系企業の暖かさを学びたいとの方向にシフトしつつあり、国全体での考えが変わってきています。正にデータ、テクノロジーが文化形成を創った瞬間でもあります。

■平安保険に見る、今後の企業としての顧客接点事例

中国に誇る最大の保険会社、平安(ピンヤン)保険はユーザーとの接点を常に持ち、事業を拡大しています。

最大の売りはもちろん、保険を売ることではありますが、別途自社アプリを開発して、多くの中国国民へダウンロードを促しています。

どうやら中国では、保険という商材の価値が薄いようで、不要もしくは適当に選ばれている状況にあるようです。

営業マンは仮に保険が取れなくとも、訪問先へはアプリのダウンロードを促すようです。

このアプリには凄い仕掛けがあります。

内容としては、医療に関するものでアプリ上での医者と利用しての問診や近くの病院等への斡旋を促してくれる機能になっています。

医者とのチャットはもちろん、自分が掛かりつけになるであろう医者のプロフィールも詳細に把握できるため、病気等になった際のお助けマンの様な役割を担っています。

これだけ聞くと、単なる便利アプリですが、裏で平安保険のマーケティング情報と繋がっており、例えば「直近訪問した〇〇さん、アプリ上でがんについて調べていた。」という情報を営業へおろし、営業はそのまま〇〇さんへ「がんでお困りですか?」とアプローチができます。

この様にアプリ上で取得したデータを元に、適切なセールスへ結びつけています。またこのアプリもプラットフォームになっており、膨大なデータを保有することから別ビジネスへの展開も期待できます。

■リアル店舗での体験の合理性

中国アリババの手掛ける、大手スーパーの「フーマー」という業態があります。

最大の特徴は商圏3Km以内で、スーパーの商品を届けるという仕組みを整えている事です。

今や中国の生活には欠かすことのできない店舗になっており、フーマー付近の物件の価値は上昇しているとまで言われています。

しかい、30分で宅配が可能だけなら実店舗を設ける必要はありません。これにはアリババ社の狙いがあります。

店舗は店舗でスタッフも常駐しており、レジ打ち且つオンラインでの売買のピックアップまで請け負っています。

そのピックアップの過程で注文された商品が天井部にあるベルトコンベアに運ばれ運搬車に届けられる仕組みになっています。まるで工場のような店舗の内観は1度は足を運んでみようという好奇心を擽られます。

実際にフーマーの店舗目当てで来る方は多く、手ぶらで帰って家で注文をする方も中にはいるそうです。

加えて、生鮮市場では生の伊勢海老などが生け簀におり、プロが捌いて品出しをしている様です。さながら、築地市場の様なイメージです。

すると、宅配で生鮮食品を頼むのに躊躇する人も、加工の過程が目の前で見えれるので安心して宅配注文をできるようになるとの事です。

上記は体験が生んだ購買活動になっています。またアリババ自身もフーマー出店の際には、膨大な自社データから出店先の土地を分析しているとの事で始めから勝ち戦の状態で出店ができるとの事です。

仮に日系企業が真似しようものならまだまだ先になるビジネス業態になるのではないでしょうか。

■OMOを意識した顧客接点を作り上げる事が最重要

中国企業の目まぐるしい努力は書籍を読んでいていひしひしと感じました。しかし、これらの取り組みの根底には売上を上げるという概念がありつつも、以下に自社×ユーザーが接触点を持てるかを徹底的に考えられて作り込んでいます。

まずは下記の3つの要素をご説明します。

テックタッチ

・デジタル上で完結する顧客との関係

ロータッチ

・イベントや店舗などで完結する顧客との関係

ハイタッチ

・個別面談や対応などで完結する顧客との関係

主に上記の3軸で構成が練られています。

中国企業はオフラインの繋がりを軽視するのではなく、最上位のエクスペリエンスとして提供するものだと考えを持っています。

自社顧客になったユーザーの課題や不満をとことん深堀り、プラットフォームを改善させ常にユーザーとの接点を持ち続ける吸着率を重視しています。

デジタルでは完結のできない体験部分を店舗やイベントで押し出し、長く使ってもらえる仕組みづくりを意識しています。

ある意味では製品(プロダクト)ですら1つの接点として捉え、次にどう繋げるかが明確です。

日経企業の場合はサービスは最候補でも断続的に終わってしまう点が課題に挙げられています。

例えば大手ホテルチェーンではA国で宿泊したユーザーが「固い枕を好む。」という傾向が出た際にはB国宿泊時には既に固い枕が用意されているという具合です。

一方で日本のサービスはその場その場では最候補でも、宿泊地を変更するたびに自身の説明等を一カラしなくてはならないなどの問題が発生しています。これまでは、当たり前の動作でも世界基準で見ていくと遅れているとなると見直していく必要があります。

■アフターデジタルを読了してみて

本書を読んでいて、国、企業レベルの話なので、現場に落とし込むのは難しいかもしれないと思いました。

ですが、少し視点を変えれば、現場でも使える要素は多々あります。

例えば日本が、フーマーの様な体験型スーパーで成功するかという点です。恐らく、単に模倣しただけでは成功しないでしょうか。なぜならアリババの持つ膨大なデータから勝てる立地選定をしているからです。

さながら、キングダムでいう所の王翦「勝てる戦以外には興味がない。」に親しいでしょう。

これと同じで、クライアントの多くはウェビナーを取り入れ始めていますが、単に模倣しただけでは現場レベルで失敗する可能性が高いです。

そのためにもリスティングプラスがデータの出どころとなり、成功事例や失敗事例を多く溜め込みある種のノウハウとして機能する必要があります。

また、成功事例の真似事は結果仮初めの姿でしかなく、裏付けのない状態では敗けるのは当たり前です。目的を持ち、優先する事項は何か?を説いた上で取り組む事が重要と肝に命じる事ができました。

今後はデータが生かされる時代になり、ますます数字とマーケッター視点の感性やセンスが要求されます。多様な能力を求められても、常に動けるように自己研鑽を怠ることなく、時には世界の情勢を見て適宜知識を蓄えていきます。

■具体的TO DO

・ウェビナーやオンライン上でのセールスフローの成功、失敗、ノウハウをまとめてみる。

→クライアントワークの際にアウトプット

・データを活用した事例を自分でもインプットしていく

→書籍などで対応

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