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「時代の大転換」について

大川原 栄
弁護士
士業適正広告推進協議会 顧問


1 「時代の大転換」は、その時には分からないもの

仮に「時代の大転換」があったとしても、その大転換があった時に生きていた者が、その時、その瞬間に「時代の大転換」があったことを自覚し認識するということはほぼ希であろうと思う。

例えば、昭和の末期(昭和60年ころ)から平成初期にあった「バブル経済」と「バブル経済の崩壊」の時代は、その時に生きていた者からすれば、戦後から続いてきた日本経済の高度成長期がピークを迎え、その異常なピークが数年で過ぎ去る過程において、一部行き過ぎた経済が是正された時代であるという程度の自覚と認識であったと推定される。

2 「時代の大転換」は、後から分かるものだが、いま分からないわけでもない

しかし、この時代から30年以上経過した現在の視点でこの1990年前後を見れば、このバブル時代は、その後の「失われた20年(あるいは30年)」と言われる日本経済低迷・停滞期に向かう「時代の大転換」があった時代であったということになる。

日本経済は、1990年代のバブル崩壊以降から2020年代の現在に至るまでのおよそ30年の間において、1960年ころから1990年ころまで数十年継続してきた高度経済成長を止め、結果的には賃金水準の実質的切り下げや企業競争力の低下等から、日本以外の世界経済から大きく取り残される時代を継続してきた、そして、その出発(転換)時期が、歴史的(あるいは客観的)には1990年前後のバブル時代に求められることになるという歴史的評価が可能であると思われる。

このような時代の視点を持って現在を眺めてみると、2023年(あるいはこれから数年)は、後に振り返ってみれば、「次の時代」に向かう「時代の大転換」があった時代になるのではないかと強く思う。

そして、ここにいう「次の時代」は、数十年規模に亘る
①労働力需給における「売り手市場」の常態化
②社会全体のダウンサイジング(縮小経済)の進行
という二つの特徴を持ち、それは日本の少子高齢化に伴う急激人口減少という極めて単純な要因を理由とするものだと考える。

3 「時代の大転換」に共通するものと士業のこれから

バブル崩壊後における「失われた20年(30年)」の根底には、企業価値を「利益」のみにおき続けたという国策としての経済政策(非正規労働者の拡大・新規投資の抑制等)があり、現在の急激人口減少という要因も同じ国策に基づくものであるということにおいて共通性がある。

これらの国策は、今いろいろ言ってももはや取り戻しができない性質のものであるから、その善し悪しを別として、現在の「時代の大転換」を受け入れるしかないということになる。

最近の日本株価は、バブル期につけた高値を数十年ぶりに更新したとされているとしても、この株価高騰で日本経済の将来が明るいと思っている方はほとんどいないと思われる。

そして、人手不足、円高、AI技術の急速進展といった社会現象がある中で、短期的な1年、3年スパンではそれらの現象の影響や社会経済の変化が見えないとしても、中長期的な5年、10年、20年スパンで見れば明らかに変化していくことになる。

これらの変化は、既に一部指摘されているように、士業の内容や有り様にも影響するものである。その変化がどのようなものなのかは、現在進行形の過程で漠然としてものであるとしても、その変化を自覚して自ら先取りしていくのか、あるいは漫然と見過ごしていくのかによって、それぞれの10年後、20年後の立ち位置は大きく異なると思われる。

士業広告も、またしかりといえよう。

以上


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