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炭鉱の町・スペニーモア

イギリスのダラムという町に滞在研究に来ている。本当はダラムの中心地に滞在する予定だったのだが、諸々の事情がありダラムから少し離れたスペニーモアという小さな町に二週間ほど滞在することになった。

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スペニーモアは19世紀頃に炭鉱で栄えた場所で、その後不景気や戦争を経験しながらも、着々と人口を増やしてきたようである。ものすごく小さな町なので、一時間もあれば十分観光することができる。観光といっても、教会と公園と町役場ぐらいしか見るところがないのだが。ノーマン・コーニッシュ(Norman Cornish)という炭鉱員でかつ画家であった地元のアーティストの作品を見ると、スペニーモアの日常がよく描かれている。

滞在先の大家さんがとても親切な人で、またこの町を愛していることもあって、町のイベントや地元のパブなどによく連れて行ってくれた。そこで地元の人と知り合い、一緒にお酒を飲んでゲームを教えてもらったりもした。コーニッシュの絵にもよく描かれているように、パブに行ってゲームをするのはスペニーモアの一つの大切な文化のようである。

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(引用:https://normancornish.com/exhibitions/price-lists

こちらが私がプレイしたドミノの様子。写真には写っていないがみんなもちろんビールを飲んでいる。

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他にもクリベッジというカードゲームも教わった。

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いつものパブにいつもの時間、そこに行けば必ず同じ人がいて他愛もない話をしながらビールを飲みゲームをする。たかがゲーム、されどゲーム。負けたらちょっとムキになってる大人の人たちを見るのもまた新鮮な気持ちになった。私はたった二週間しかいなかったけれど、なんだかそこには理想の日常が存在しているような気がした。

コーニッシュはスペニーモアに全てがあり、スペニーモアしかいらないというようなことを言ってたらしい。実際にスペニーモアのあるダラム地区を離れることなく生涯を過ごしたようだ。私はというと日本から飛び出し、ヨーロッパでも転々と移り住み未だにここという場所に巡り合えていない。私もいつか自分のスペニーモアを見つけることができるだろうか。