見出し画像

クリスマスのお菓子・シュトレン

ヨーロッパでは大体十一月頃から町中にクリスマスの飾り付けが施され、店では家庭用の飾りやクリスマスカードが売られ始める。さらに例年通りであればヨーロッパ各地でクリスマスマーケットが開催され、寒い中外で飲むモルドワイン(ワインにフルーツとスパイスを加えた甘いホットワイン)は格別である。

ヨーロッパのクリスマスは日本のお正月のようなものなので、家によっては何日もかけて料理を用意したりするが、その重要なものの一つがクリスマスのお菓子である。日本でクリスマスのお菓子というと典型的なショートケーキやチョコレートケーキにサンタの飾り付けが乗ったようなものを連想するかもしれないが、ヨーロッパは各地それぞれ異なったクリスマスのお菓子がある。例えばイギリスのミンスパイ、フランスのブッシュドノエル、イタリアのパネトーネなど。

私の住んでいるオーストリアあたりではドイツの影響が大きいのもあって、クリスマスになるとシュトレンというお菓子が食べられる。家で作ったりあるいはお店で買う人も多い。見た目はパンのような形をしている。

画像1

ラム酒漬けにしたドライフルーツ、アーモンドやマジパンなどが入った生地にスパイスが加えられ、焼き上がりにはバターがたっぷり塗られ、その上から大量の粉砂糖がかけてある。これを一日で食べるのではなく、十二月の頭頃から少しずつ切り分けて食べるようだ。食べていくうちに粉砂糖やドライフルーツの風味がどんどん生地に染み込んで味も変わっていくのも含めての楽しみ方である。

画像2

元々私がシュトレンを知ったのは日本にいる時で、京都の大宮商店街にあったウィーン専門菓子(珍しい)のマウジーさんというお店で初めて教えてもらった(※最近は北海道に移転)。

その当時はオーストリアのウィーンに住むということなど全く考えていなかったが、シュトレンの味が美味しくて毎年定番で買いに行くようになった。今でこそもしかしたらそれなりに有名なお菓子なのかもしれないが、日本の典型的なホールケーキやフランスのブッシュドノエルとはまた異なった、生クリームがついていない焼き菓子はとても新鮮であった。

クリスマス当日を盛大に祝うのは日本でも同じだが、シュトレンのように少しずつ食べながらクリスマスを待ちわびるのはなんとも可愛らしいし味わいがある伝統だなと思う。日本でも正月までの過程を楽しむ行事や食べ物はあるのだろうか(あるような気もするが今一つ頭に浮かんでこない)。今年は全世界が混乱でなかなか落ち着く暇もなかったが、せめてクリスマスやお正月は世間を忘れてゆっくり過ごせる時間にしたい。