江戸時代の鍼灸術の書『療治之大概集』⑦
こんにちは、鍼灸やまと治療院です。『療治之大概集』の7回目です。
しばらくは病の説明と使用穴が続きます。
※『療治之大概集』の原文はこちら。
脚気
【原文】
【意訳】
脚気
脾腎の経脈が弱くなり、風寒暑湿の邪気が入ってしまうことでこの病になる。これが腹に入って心臓を攻めれば死亡する。
以下の様に分類できる。
・足の内果が赤く腫れて痛むものを「遶蹕風」
・外果が赤く腫れて痛むものを「穿踭風」
・両膝が赤く腫れて痛むものを「鶴膝風」
・両股が痛むものを「腿䟕風」
・腫れて痛むものを「湿脚気」
・腫れないものを「乾脚気」
使用経穴は、陰陵泉、陽陵泉、三里、公孫、懸鍾、風市、承山、三陰交、である。
【補足説明】
「脚気八処の穴」とは異なる穴も多くありますが、基本的に栄養の吸収を高めることを主眼にしたものだといえます。
なお、この時点(江戸初期)では、食事の問題点は書かれていません。
もう少し時代が進んで、江戸後期になると白米が問題だと考えられるようになります。平野重誠著の『病家須知』(1832年)が分かりやすく書いています。しかし、明治以降は西洋医学の脚気伝染病説が主流となってしまい、多くの被害を出したことは有名です。明治政府が東洋医学を破壊せずに知識を受け継げるようにしていれば被害は抑えられたはずです。
黄疸
【原文】
【意訳】
黄疸
脾胃の内に湿邪の熱が鬱滞して、長時間発散しない。このため、脾胃の色である「黄」が顔と肌肉にでてくるのである。
五疸といって、五種類ある。黄汗、黄疸、酒疸、穀疸、女労疸、である。
①黄汗は、手足が腫れ、汗がでて衣服が染まるものである。使用穴は、中脘、三里、大杼である。
②黄疸は、全身、顔、目、尿、が黄色くなるものである。使用穴は、脾兪、三里、隠白である。
③酒疸は身体・目・尿が黄色くなり、胸が痛み、顔に赤い斑がでるものである。使用穴は、胆兪、委中、至陽である。
④穀疸は食事を食べ終わると眩暈がし、全身が黄色いものである。使用穴は胃兪、腕骨、三里である。
⑤女労疸は身体・目が黄色くなり、発熱、悪寒、小便不通などの症状がある。使用穴は関元、腎兪、至陽である。
淋病
【原文】
【意訳】
淋病
淋病には五種類ある。
①気淋は、尿が出にくくなり滴のように出るものである。
②石淋は陰茎が痛み、石が出るものである。
③血淋は出血して、陰茎が痛むものである。
④膏淋は尿が白くにごった膏の様になるものである。
⑤労淋は心労により精がつきてしまい発症するものである。
五淋は皆、膀胱の熱により発症しているのである。
使用穴は、湧泉、三陰交、関元、石門、腎兪、である。
消渇
【原文】
【意訳】
消渇
上焦の肺火が過剰になることで発病する。この場合は、水を多く飲み、食事が少ない。
中焦の胃火が過剰になることで発病する。この場合は、食事をすぐに消化してしまい空腹になりやすい(いわゆる消穀善飢)。腎の病である。
使用穴は、人中、脾兪、中脘、三里、腎兪である。
赤白濁
【原文】
【意訳】
赤白濁 尿の濁る病
尿が赤濁するものや、白濁するものがある。
尿が「膏の様になるもの」「糊の様になるもの」「濃糊の様になるもの」「米の研ぎ汁の様になるもの」「赤い膿の様になるもの」などがある。
これらは皆、湿熱による内傷か腎虚により濁るものである。
赤濁は心虚の熱であり、白濁は腎虚の冷えである。
使用穴は、下脘(瀉法)、気海、章門、である。赤濁でも白濁でもどちらでも使用できる。
水腫
【原文】
【意訳】
水腫 むくみの事
全身が浮腫んでテカテカとひかり、指で押すと凹むが、指を上げれば穴は戻ってくるものである。脾が虚して、水穀を運化できずに、水が皮膚に流れ込み腫れているのである。
使用穴は、水分、気海、三陰交、足三里、百会、上脘である。
脹満
【原文】
【意訳】
脹満
脾胃の気が弱く、水穀を運化することができずに、溜まってしまい腹が脹るのである。鼓脹ともいう。治りにくい病である。
使用穴は、気海、三里、三陰交、上脘、中脘である。
今回はここまでです。
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